ズート・シムズ(1925年~1985年)は、生涯自分のスタイルを維持し高水準の作品を発表し続けた偉大なテナー・マスターで、スタン・ゲッツと並び白人モダンテナーの双璧です。ウディ・ハーマンのセカンド・ハードでの歴史的な名演を皮切りに、その楽歴は40年近くにおよびますが、多くのジャズミュージシャンが時代の空気を反映し、ジャズロックやフュージョンなどを取り入れて作風を変化させたのに対し、59歳で亡くなるまでかたくなに自分のスタイルを貫いた作品を世に送り続けました。
革新性や変化などとは無縁に、無骨に自分のスタイルを貫いたズート・シムズは、いまだに日本にも多くのファンがおり、彼の作品は中古レコード市場でも常に人気で、まさにジャズファン好みのミュージシャンと言えます。
また、ズートの私生活ですが、並外れた酒豪という以外は良き家庭人であったそうです。ジャズミュージシャンの中には、ドラッグや女性遍歴など、常識から逸脱した破滅的な人生を送った人も多いですが、ズートに関しては常識的な人生だったようです。
ズートの作品は、サイド参加も含めると500枚近いのでは?という説もあり、すべてを網羅的に把握することは難しいですが、当ホームページでは極力全リーダー作と、主なサイド参加作を取り上げてみたいと思います。
・新宿ジャズ談義の会 :ズート・シムズ CDレビュー 目次
・Zoot Sims ズート・シムズ おすすめBest5・・・このページ
ズート・シムズは、私(しげどん)にとって、モダンジャズのなかでも最も好きなミュージシャンの一人です。というわけで、今回はhandさんに代わり、ズートのページは私がとりまとめる事になりました。
Best 5選定は、いつものどおり3人の協議で決めていますが、私としては贔屓の引き倒しにならぬように、できるだけ個人的なこだわりは忘れて、お二人の意見を尊重して決めた次第です。でも愛聴盤が思いのほか低い評価になったりすると、やはりジャズの評価はお好み次第だと強く感じました。
鉄板の名盤 ダウンホーム
でもBest5は世間一般の評価と同じような結果になっています。実は一人一人の評価はかなりバラバラだったのですが、三人の平均点をとるとこのような結果になってしまいました。これも必然でしょうか?
一位のダウンホームは、保守派の私としては好きな盤ですが、モダン派二人も高い評価をしてくれた点がある意外でした。
ユタ・ヒップのブルーノート盤は、厳密に言うと、ユタ・ヒップがリーダーなのでサイド参加作になりますが、多くのファンはズートの作品として捉えていると思います。デイブ・マッケンナ盤なども同様ですが、あえてリーダー作として取り扱いました。
70年代のおすすめ3選
後期の作品が一つもBest5に入りませんでしたが、If I’m Lucky, Zoot at Ease, Zoot Sims Party などは票が割れて次点どまり。Best10まで選んだら確実に選定された作品ですので、これらも必聴盤と言えます。(しげどん)
1960年7月
Bethlehem
おすすめ度
hand ★★★★★
しげどん ★★★★★
ショーン ★★★★★
Zoot Sims(ts), Dave McKenna(p), George Tucker(b), Danny Richmond(ds)
経験的にベースから始まる盤は良盤であることが多く、この盤にも当てはまる。中間派が得意でない私にも好感の持てる盤だ。理由を考えてみると、ズートとピアノのマッケンナが中間派的なのだが、ベースのジョージ・タッカーとドラムのダニー・リッチモンドがモダン派で、タイトにリズムを送り出し、ズートもマッケンナそれにノッていること。選曲は古い曲が多いのだが、スローな曲がなく、モダンに演奏され、かえって新しい感じがすること。などかと思う。余談だが、マッケンナのエピック盤「ピアノ・シーン」の②シルクストッキングは私のお気に入りだ。コール・ポーター作の知られざる名曲だと思う。(hand)
ワンホーンでスイングするズートの傑作。若いファンにはリズムが古臭く感じるかも知れないので、意外と好き嫌いがある作品かもしれないが、ズートはもともとモダンというより中間派に近いテイストを持っている。このリズムでスイングするところが何度聴いても飽きないポイントだ。(しげどん)
ズートの軽快な演奏を堪能できるアルバム。どの曲も完成度が高く、素晴らしい。特にデイヴマッケンナのピアノとズートのソロはそれぞれ変化と創造性に富んで、引き込まれること請け合い!このアルバムで演奏している曲は比較的古いトラディショナルな曲が多いが、いずれも新鮮なアレンジとノリで気持ちよく聴ける。ストレスゼロの名アルバムだ。(ショーン)
1956年10月12日
Argo
おすすめ度
hand ★★★★
しげどん ★★★★★
ショーン ★★★★★
Zoot Sims(ts,as), John Williams(p), Nabil Totah(b), Gus Johnson(ds)
ダウン・ホームと並ぶワンホーンの傑作。我が道を行くズートのこれもスィング・セッション!ガス・ジョンソンはベイシーバンドのジョー・ジョーンズの後任なので、ズートのコンセプトにピッタリだ!ジョン・ウィリアムスも最高にズートを引き立てている。(しげどん)
メロディアスなズートのテナーは、情感豊かで聴く者を惹きつける。ジョンウィリアムスのピアノがまた良くて、雰囲気もサイコーで、全く無駄のない素晴らしい演奏だ。どの曲も演奏時間が4〜5分くらいで、飽きることなく集中して聴くことができるところも良いが、フェードアウトはいかがなものか?(アナログ盤)ズートが30歳の時の演奏だが、もう完成されており、大人の正統派jazzを十二分に感じることのできる名盤だ。(ショーン)
アナログ時代に唯一買ったズート盤。評論家のススメに従って買ったが特にピンときた記憶はない。ゲッツに比べて中間派的なテイストが濃いのがズートの特徴。それが好き嫌いの分かれ目になっていると思う。私はスイングジャズは嫌いではないが、中間派はあまり好みではない。なので、ズートがメンバーも含めてモダン寄りに振れた演奏が好みだ。この盤はメンバーはモダン寄りではあるが、全体としてのテイストは微妙だ。ボヘミアなどハードバップ系の選曲がかえって裏目に出たかもしれない。録音のせいかテナーの音色が細い気もする。(hand)
1956年3月16日
Ducretet-Thomson
おすすめ度
hand ★★★★
しげどん ★★★★★
ショーン ★★★★
Zoot Sims(ts), Jon Eardley(tp), Henri Renaud(p), Benoit Quersin(b), Charles Saudrais(ds)
作品として優れているにもかかわらず、一時は超がつく入手困難盤だったため、さらにその価値が吊り上がった感のある名盤。復刻された国内盤ですらほとんど見たことがなかったが澤野が10インチで復刻。またCDではオリジナルの7曲に加え、今では前日録音のさらなる幻の4曲まで含めて手軽に手に入るのはうれしいことだ。ズートのソロももちろん最高に充実していて、とにかくソロの濃度が濃くて完成度が高い。(しげどん)
私は、中間派というスイングとモダンの中間的な感じの演奏があまり得意ではない。スイングジャズ自体は嫌いではなく、モダンは大好きだ。この盤のようにズートがモダンなメンバーと演奏した作品、モダンで寛ぎのある作品は好みだ。この盤は、フランスのモダンなピアニスト、アンリ・ルノーのトリオとの共演で中間派的な側面があまりなくていいと思う。特にクインシー作の④イブニングインパリは、名曲の名演で特に気に入っている。ジェリー・マリガンのバンドで渡仏中のアルバイト録音で、トランペットのジョン・オードレイとの参加だが、オードレイはあまり必要だったとは思えない。CDには前日の録音4曲も追加され全11曲となっている。(hand)
楽しい雰囲気の漂う演奏だが、強さが無く、特徴に乏しいアルバム。zoot simsのテナーとhenri renandのピアノは一貫して心地良く耳に届くが、Jon eardleyのトランペットがやや雑で伸びがない様に感じる。そのため2管のハーモニーもいまいち合っていない。(ショーン)
1956年7月28日
Blue Note
おすすめ度
hand ★★★★☆
しげどん ★★★★☆
ショーン ★★★★☆
Jutta Hipp(p), Jerry Lloyd(tp), Zoot Sims(ts), Ahmed Abdul-Malik(b), Ed Thigpen(ds)
ドイツ出身の女性ピアニスト、ユタ・ヒップのリーダー盤にズートとトランペットのジェリー・ロイドがゲスト参加した、ズート唯一のブルーノート盤。ユタは、ビバップとトリスターノのどちらにも通じた私好みのピアニストで、特に「ヒッコリーハウスVol.1」は愛聴盤だ。渡米前にもリーダーとして、管をフロントに何枚か吹き込んでいる。ただ、ここでのプレイは多少控えめで遠慮気味に感じる。ズートのリーダー盤として聞いても全く不自然ではないと思う。ロイドは、オブリガードは多いがソロはズートに比べ圧倒的に少ない。盤としてはモダンなピアノトリオをバックにズートがスイングしまくる好ましい盤に仕上がっている。バラードの②コートにすみれを、はコルトレーン(57年)、J.R.モンテローズ(59年)と並ぶ3大スミレの1つだと思う。ビバップ曲⑤ウィードットも好ましい。CD追加の2曲もいい。面白いことに、ロイドの曲③ダウン・ホームは、ズートの人気盤「ダウン・ホーム」には入っていない。(hand)
ズート・シムスはかなり好調に密度の濃いソロを聴かせている。そればかりが目立つアルバムで、一応リーダーになっているユタ・ヒップのピアノは乾燥気味な感じで印象が薄い。あくまでもズートの作品というべきだろう。旧友ジェリー・ロイドの助演もなかなかだ。(しげどん)
肩の力が抜けたズートの演奏は終始心地良く、若干物足りなさの漂うトランペットのジェリーロイドに対する補佐も適切だ。また2曲目のviolets for your fursでの感傷的で咽び泣く様なプレイは聴き応え十分で、ユタヒップのピアノとの相性も良い。wee-dotの勢いのある演奏、最後のtoo close for comfortの明るい雰囲気を醸す演奏と、バラエティに富んだ好アルバムといえよう。(ショーン)
1959年2月6日,7日
United Artists
おすすめ度
hand ★★★★
しげどん ★★★★★
ショーン ★★★★
Zoot Sims,Al Cohn(ts),Phill Woods(as),Mose Allison(p),Knobby Totah(b),Paul Motian(ds)
アル&ズートのコンビでもっとも熱い一枚で、ライブならではの盛り上がり方が素晴らしく聴きごたえがある。Lover Come Back To Meの盛り上がり方は素晴らしい。アル&ズートの作品で、まずは最初に聞いてほしい作品だ。B面にはフィル・ウッズも参加している。(しげどん)
アル・コーンのバンドのベースとドラムがテディ・コティックとニック・スタビュラスという縁でフィル・ウッズが参加したのかと思うと、ピアノはモーズ・アリソンだが、ベースは知らないノビル・トターで、ドラムはこの後エバンス・トリオに入るポール・モチアンだ。エバンスの初リーダー盤がコティック&モチアンなのはこの辺の人脈なのだろうか。ライブのせいか、モチアンが意外とハードなドラムを叩き、全体に勢いのある演奏となっていて好ましい。ウッズの参加は後半2曲だけだが、雰囲気がさらにバピッシュになり私好みになる。(hand)
ハーフノートでのライブ盤。アルコーンとズートのツインテナーにフィルウッズのアルトを加えた3管の演奏は期待通りの音幅と深みで、聴く者を魅了する。ノビルトターのベースがしっかりリズムをキープしており、とても安定感のある演奏に仕上がっている。欲を言えばな生演奏らしい荒っぽいスピード感がもう少し欲しい。綺麗に完成してしまっている様に思える。(ショーン)
・新宿ジャズ談義の会 :ズート・シムズ CDレビュー 目次
・Zoot Sims ズート・シムズ おすすめBest5・・・このページ