Toshiko Akiyoshi リーダー作①1953~1958年

1954年、JATPで来日したオスカー・ピーターソンに見い出されての初録音から、渡米し、ボストンのバークリー音楽院に入学、しかも同時にプロ活動を開始し、ニューポートにまで出演した秋吉の最初期の記録をまとめています。


TOSHIKO'S PIANO アメイジング・トシコ・アキヨシ / 秋吉敏子

1953.11.13 &14

Norgran

おすすめ度

hand        ★★★★☆

しげどん   ★★★☆

秋吉敏子(p), Herb Ellis(gr), Ray Brown(b), J. C. Heard(ds)

ピーターソンが見い出した秋吉の初リーダー盤

1954年、JATPで来日したオスカー・ピーターソンが見い出しノーマン・グランツに紹介され、名門ヴァーブ(この時期はノーグラン)に録音(東京での録音)した秋吉のデビュー盤。ブルーノートのバド・パウエルを思い起こす日本タイトルだが、まさに極東のアメイジングだったのだろう。ハーブ・エリス、レイ・ブラウン、J.C.ハードがサポートし、内容もバドを思い起こすビバップピアノ盤になっている。特にブラウンは、バドの大名盤「ジャズ・ジャイアント」と「ジニアス」にも参加しているので最適・最強だ。その後、バークリーに留学した秋吉を直接聞いたバドが大笑いしたそうだが、そこまで自分のビバップスタイルをコピーした日本人ピアニストが現れて、笑うしかなかったのだと思う。この流れがこの後のジャズピアノの主流スタイルとなっていくのだが、その時点でバド自身は意識していなかった可能性がある。秋吉のスタイルの基本はもちろんバドだが、それだけでなく当時駐留していたハンプトン・ホーズの西海岸的な前のめり感も多少感じる。よく言えばバドよりもスピード感があり、悪く言えば私の苦手な西海岸な慌たゞしさも多少だが感じる。この違いが個性となり、どうせならバドを聞くとはならず、秋吉自身も聞き継がれることとなったのだとと思う。⑨~⑫は1957年7月5日の秋吉&レオン・サッシュのニューポート盤と同内容。(hand)

バド・パウエルの影響が強い、というよりそのままそっくりな印象を受ける第一作。(しげどん)



THE HISTORIC MOCAMBO SESSION(TOSHIKO AT MOCAMBO VOL.3) 幻のモカンボセッション / 守安祥太郎、秋吉敏子ほか

1954.7.27 & 28

Rockwell

おすすめ度

hand        ★★★★★

しげどん   ★★★★★

ショーン   ★★★★☆

守安祥太郎, Hampton Hawes(p),秋吉敏子(p,b),

宮沢昭, 与田輝雄(ts),

渡辺明, 山屋清, 渡辺貞夫, 五十嵐明要, 海老原啓一郎(as),

鈴木寿夫,  滝本達郎, 上田剛, 栗田八郎(b) 

清水閏, 五十嵐武要, 原田寛治, 川口潤(ds) 

モカンボでの日本のモダンジャズの夜明けの記録

1954年7月27日火曜日の深夜から28日にかけて、横浜・伊勢佐木町にあったクラブ、モカンボで、日本のモダンジャズの夜明けを記録したこの歴史的な大名盤が録音された。アナログ時代は、守安祥太郎の2枚組で、秋吉はラスト曲ペイパームーン、のベースを弾いていたのみ。アナログの秋吉盤は「トシコ・アット・モカンボVol.3」として4曲のみが出ていた。CD化で上記のアナログ3枚分が2枚に収まり3枚目は秋吉の未発曲が1枚分追加となり、秋吉ファンには嬉しい内容の完全盤となった。32歳で自殺した狂気の天才・守安と、90歳代となった今も毎日何時間も練習する努力型の秀才(私は天才だと思っている)のニ大巨人が一作品に収められ理想的な盤になったと思う。評論家の油井正一とエンジニアの岩味潔が立ち上げ2人の苗字を組み合わせたレーベル、ロックウェルが紙テープで録音したもの。そのおかげでこの時代の日本にこんなにすごいビバップがあったことが記録されていて本当に良かったと思う。秋吉の内容は「スティット・パウエル&J.J.」に雰囲気が近いように感じる。多分、ファイン・アンド・ダンディ、が共通だからだと思うが、それくらい守安、秋吉だけでなく、サックス陣も素晴らしい。秋吉はファイン・アンド・ダンディで約4分間の高速ソロを披露する。発掘された3枚目も、従来盤と変わらぬ素晴らしさだ。セッションなので、必ずしも守安と秋吉のリーダー盤と言えるかは微妙だが、ここまで凄みのあるピアノ(2人とも)はなかなか聞かれない。(hand)

日本のジャズ史に残る名盤だが、秋吉さんの作品として評価すると、これを彼女の代表作に入れるわけにはいかないと思う。彼女の初期のピアノを聴くというマニアックなスタンスがあれば別だが・・・・でも記録としては超一級品だ。(しげどん)

スピードとパッションに溢れたセッションだ。この時代の最高峰の日本JAZZプレーヤーの競演。アルト、ベース、ドラムスが脅威的な速さで、曲をぐわっと一体化表現させている。秋吉も参加、やや大人しいが、素晴らしく正確な速弾きタッチで演奏のクオリティを上げている。面白いのは、It's Only A Paper Moonでは、秋吉がベースを弾いており、これがなんとも辿々しい。(ショーン)



THE TOSIKO TRIO / 秋吉敏子

1956 春~初夏

Storyville

おすすめ度

hand        ★★★☆

しげどん   ★★★★

秋吉敏子(p), Paul Chambers(b), Ed Thigpen(ds)

渡米後初のリーダー録音

ポール・チェンバースとエド・シグペンが入ったトリオのニューヨークでのスタジオ録音。後年、特にビッグバンド時代に入った頃、秋吉の音楽に和のテイストが重視されるようになる。本人の著書にも、日本人がアメリカ人のモノマネしてるだけのジャズではダメで、日本人のアイデンティティを踏まえたジャズを作る?というようなことを書いていたと思う。本人はどこまで意識していたかわからないが、和楽器を導入する前のこの初期録音の盤でも十分に和のテイストは感じる。チェンバースの強力さがあまり感じられないのはストリーヴィルというレーベルの録音のせいだと思う。(hand)

日本的なイメージも感じる米国録音の第一作。オリジナル曲のウエイトが高く、トシコの個性が強く発揮された作品でスタンダードも味わい深い。(しげどん)



HER TRIO HER QUARTET / 秋吉敏子

1956.7

Storyville

おすすめ度

hand        ★★★★

秋吉敏子(p),

1, 2, 4, 5, 7:Boots Mussulli(as), Wyatt Ruther(b), Ed Thigpen(ds)

3, 6, 8:Oscar Pettiford(b), Roy Haynes(ds)

ブーツ・ムッスリの入ったビバップ録音

カルテットの5曲①②④⑤⑦にブーツ・ムッスリのアルトが入っている。サックスの参加で、ビバップ度は高まっている。ブーツの演奏は悪くはないが秋吉に比べるとやや気迫、魂の圧ようなものが不足していると思う。ベースはワイアット・ルーサーがいいプレイをしていて好感だ。この人は、あまり知られぬが、レッド・ガーランドの「プレリュード」にも名演を残している。エド・シグペンも悪くない。そして、オスカー・ペティフォード、ロイ・ヘインズとのトリオの演奏が3曲③⑥⑧入っている。このトリオの3曲が素晴らしく、このメンバーだけで1枚にして欲しかった。ペティフォードはソロ楽器になりやすいセロ演奏が好きなようだが、やはりベースが素晴らしい。同日録音のはずが、この3曲のほうが音がいいのが不思議だ。(hand)



TOSHIKO & LEON SASH AT NEWPORT / 秋吉敏子、レオン・サッシュ

1957.7.5

Verve

おすすめ度

hand        ★★★

秋吉敏子(p), Gene Cherico(b), Jake Hanna(ds)

ニューポート・ジャズ・フェスの出演記録

アコーディオンのレオン・サッシュの録音とカプリングで発売されたニューポート・フェスに出演した記録(4曲)。速い曲は盛り上がっているが、バラードはあまりウケていない感じがする。4曲は「アメイジング・トシコ・アキヨシ」のオマケにも収録され、単独盤の価値は下がってしまっている。(hand)



THE MANY SIDES OF TOSHIKO AKIYOSHI / 秋吉敏子

1957.9.28

Verve

おすすめ度

hand        ★★★★☆

しげどん   ★★★★☆

ショーン   ★★★★

秋吉敏子(p), Gene Cherico(b), Jake Hanna(ds)

初期の秋吉トリオを聞くのに最適な名盤

初期の秋吉をトリオで楽しむには最適の盤ではないかと思う。前作「ニューポート」と同じジーン・チェリコ、ジェイク・ハナというメンバーでのスタジオ録音。トリオとしてのまとまりはとても良く、リバーサイド、ブルーノートなど他レーベルのトリオ名盤と並び立つほどのバランスのいい盤だ。チェリコは、ポール・デスモンド「テイク・テン」やスタン・ゲッツ「ゲッツ・オー・ゴー・ゴー」などにも参加しているが、秋吉とのプレイが一番ハードボイルドでカッコいい。この盤は、秋吉がこだわりを持つ和のテイストがあまり入らず、ジャズピアノのトリオ演奏を無国籍的に楽しめるのがいいと思う。ボストンのストーリーヴィルの録音に比べ、ニューヨークでのヴァーブの録音はパンチ力があると思う。(hand)

スタンダードもテクニックだけでなく味わいが付加された軽快なタッチのピアノ名盤。オリジナル曲も彼女の日本的な個性が発揮されていて、スタンダードとのバランスが良く配置されていて聴き飽きない構成になっている。(しげどん)

落ち着いたベーシックな演奏。普通といえば普通で緊張感に乏しい。特にドラムスのパワーが不足しており、重みがない。もう少し迫力あるパフォーマンが欲しいところだ。(ショーン)



TOSHIKO'S BLUES:QUARTET & TRIOS 1953 - 1958 / 秋吉敏子

Disc2⑬⑭:1958.5.25

Fresh Sound

おすすめ度

hand        ★★★★

Disc2⑬⑭:秋吉敏子(p), Eddie Safranski(b), Ed Thigpen(ds)

初期盤5枚にテレビ放送用音源の2曲を追加した盤

初期のリーダー盤「アメイジング」、「トシコ・トリオ」、「トリオ・アンド・カルテット」、「ニューポート」、「メニー・サイズ」の5枚に、1958年5月25日のテレビ放送用音源の2曲を追加した2枚組CD。この2曲のためにこのCDを購入した。2曲は、Disc2⑬ザ・サード・ムーブメント、⑭ドント・ゲット・アラウンド・マッチ・エニモア。⑬は素晴らしいが1分46秒しかないのが残念。⑭は3分あるので多少楽しめる。いずれにしても時間的な不満が残るものの、秋吉の演奏は素晴らしい。YouTubeでも着物姿でピアノを弾く秋吉のこの演奏を聞ける。(hand)



UNITED NOTIONS / 秋吉敏子& HER INTERNATIONAL SEXTET

1958.6.13

Fresh Sound(Metro Jazz)

おすすめ度

hand        ★★★★

秋吉敏子(p), 

Nat Adderley(cor:6,8,9), Doc Severinsen(tp:3-5,7),

Bobby Jaspar(ts,bs,fl), Rolf Kühn(as,cl),

René Thomas(gr), John Drew(b), Bert Dahlander(ds)

秋吉をリーダーにしたバークリー・バンドの録音

秋吉敏子&ハー・インターナショナル・セクステットというすごい名前のバンドでの録音。バークリーの在校生の録音らしいが、ボビー・ジャスパー、ロルフ・キューン、ルネ・トーマなど未来のスターが含まれている。やはり、後年活躍するメンバーはこの時点でも素晴らしい。半分の3曲にナット・アダレイがゲスト参加している。私の好きなボビー・ジャスパー盤「メモリー・オブ・ディック」のタイトル曲が④スキヤキ、として別タイトルで収録されている。②イントロダクション、はメンバーの名前の自己紹介で鑑賞には妨げなので、入れるならラストが良かった。(hand)