バークリーを卒業し、ニューヨークに移り、チャーリー・マリアーノとトシコ=マリアーノ・カルテットを結成し、結婚もします。同カルテットで来日し、渡辺貞夫など日本の後輩の育成にも努めた時期です。
・新宿ジャズ談義の会 :穐吉敏子 CDレビュー 目次
・Toshiko Akiyoshi CDリーダー作①1953-1958
・Toshiko Akiyoshi CDリーダー作②1960-1968・・・このページ
・Toshiko Akiyoshi CDリーダー作③1970-1976
・Toshiko Akiyoshi CDリーダー作④1976-1979
・Toshiko Akiyoshi CDリーダー作⑤1980-1987
・Toshiko Akiyoshi CDリーダー作⑥1990-1996
・Toshiko Akiyoshi CDリーダー作⑦1997-2005
・Toshiko Akiyoshi CDリーダー作⑥2006-2018
秋吉敏子(p), Charlie Mariano(as), Gene Cherico(b), Eddie Marshall(ds)
トシコ=マリアーノ・カルテットとトシコ・マリアーノ・カルテットと2種類の盤がある。秋吉敏子がチャーリー・マリアーノと結婚し、トシコ・マリアーノと名乗ったので、メンバーにチャーリーはいるものの、秋吉のリーダーバンドとしてのトシコ・マリアーノ・カルテット、そして秋吉とチャーリーの双頭のトシコ=マリアーノ・カルテットだ。秋吉やチャーリーがどう考えていたかわからないが、制作側の思いでどちらかで発売されているように思う。この盤では前半60年録音のMCはトシコ、チャーリー・マリアーノ・カルテット、後半61年はトシコ・マリアーノ・カルテットと言っている。いずれにしても秋吉がアメリカで初めて持ったバンドであり、音楽的なリーダーシップは秋吉が持っているように感じる。海賊ライブ録音なので多少音は悪いが問題とするほどではない。古い録音の前半のほうがやや音がいいが、後半のほうがカルテットの演奏がこなれていると思う。秋吉のトリオ演奏⑦テンパス・フュジット、は神がかった速さで演奏される。この盤は、フレッシュサウンドからの1991年の発掘盤で、カルテットの最初の録音に当たる。「ハー・カルテット」のブーツ・ムッスリと比べるとマリアーノのアルトは勢いや圧があり、秋吉のこの時代のバップ的な音楽によく合っている。この盤は、現在は、秋吉自身の許諾・監修のもと、リマスタリングされスタジオ・ソングスから正式リリースされている。スタジオ・ソングスは、秋吉の旧作、新作を発売している日本のレーベル。佐藤允彦、富樫雅彦、川崎燎などの作品も出している。私の所有するフレッシュサウンド盤より音がいいと想像する。(hand)
秋吉敏子(p), Charlie Mariano(as), Gene Cherico(b), Eddie Marshall(ds)
トシコ・マリアーノ・カルテットのスタジオでの正式デビュー録音。時期としては後発のバードランドの前半のほうが8カ月早い。秋吉の代表曲⑤ロング・イエロー・ロード、の初演は貴重だが、②リトルT、がマイルスの「カインド・オブ・ブルー」のソー・ホワットに影響を受けたモーダルな演奏なのが特筆される。バッパー秋吉なのでエバンスほどモーダル感は出てはいないがそれでもこの時期にマイルス以外では最もモーダルな演奏だと思う。③トシコズ・エレジー、は過去のエレジー、マイ・エレジー、と同じ曲。マリアーノのアルトがよく鳴っていてマリアーノの代表作の一枚になると思う。白人マクリーン的な素晴らしいアルトだが、秋吉のリーダーシップのもとで、単なるソロイストとして活躍するのみなのが多少残念だ。(hand)
秋吉敏子(p), Gene Cherico(b), Eddie Marshall(ds)
5年ぶりの帰国時の日本録音。黄色いLPジャケにはRecital 秋吉敏子リサイタルと書かれているが、帯には黄色い長い道、と書かれている。タイトルはリサイタルだがスタジオ録音。元はソノシート片面1曲の4枚組で朝日ソノラマの別冊として日本向けに発売されたもの。長らく「幻の録音」となっていたが、1977年にタムというレーベルから1988年にキングからLPとCD化され、2010年にスタジオ・ソングスからCDが再発された。秋吉得意の和のテイストとモーダルな雰囲気も取り入れられた素晴らしいトリオ盤だ。①黄色い長い道、はその後、ロング・イエロー・ロード、として秋吉のシンボルのような曲となっていく。「トシコ・マリアーノ・カルテット」で発表されたのが最初だ。②箱根のたそがれ、は秋吉のピアノだけでなく、ベースとドラムがとてもカッコいい。③木更津甚句、は後に左手のアレンジが強調されて、ザ・ヴィレッジ、となるが初演のこの盤は左手のベースフレーズは聞かれるが、木更津性がまだかなり残っている。①黄色い長い道②箱根のたそがれ③木更津甚句⑤ディープ・リヴァーが元の別冊ソノシート(260円)で、④ソルページ・ソング(ソルヴェーグの歌)は、朝日ソノラマの別冊ではなく、昭和36年4月号(360円)で発表されている。元盤がソノシート5 枚ということでトータル時間が短いのが残念なところだが、音はいい。和のテイストが後年のビッグバンド期の強烈さがなく、程よく味わえるのがいい。(hand)
オリジナルは朝日ソノラマのソノシート。前年のトシコ・マリアーノ・カルテットで演じた代表曲ロング・イエロー・ロードをピアノトリオで再演。Villageのタイトルでその後しばしば再演される木更津甚句など日本的な要素をジャズ的に表現しているが、純粋なピアノトリオ作品として楽しめる。(しげどん)
3人の息はよく合っており、ブレイクするところ等の技はなかなかだ。秋吉のピアノメロディは、時に軽やかでポップ。ジャズというより、イージーリスニング的な感覚もあり、自由な音楽を感じる。ドラミングも意識してしているのか、和心というか東洋的なエスニカルな感じが表現されていて面白い。(ショーン)
秋吉敏子(p),
渡辺貞夫(as), 宮沢昭(ts), 原田政長(b:1,2,5,6), 栗田八郎(b:3,4), 富樫雅彦(ds:1,2), 白木秀雄(ds:3,4), 猪俣猛(ds:5,6)
5年ぶりの来日時に渡米前に共演していた仲間たちとのスタジオ録音。「トシコ旧友に会う」との日本タイトルだが、旧友というほど昔の感じはなく、その当時の日本の精鋭との録音だ。マイルスの①ソー・ホワット、はモードの代表曲として取り入れているのだろう。バッパーで右手はシングルトーンが多いのが秋吉のスタイルなので、いい悪いではなくスタイル的に多少無理しているように感じてしまう。ベースはチェンバースに匹敵するものを感じる。ビバップ曲③ドナ・リー、はソー・ホワットと同じ盤に入れて欲しくなかったが、マイルス自身もモードとバップを「マイルストーンズ」やライブでは混ぜこぜにしていたので時代的に仕方ないのだろう。(hand)
秋吉敏子(p), Charlie Mariano(as), Gene Cherico(b), Albert Heath(ds)
この時期、イーストとかウエスト、ウエスタンなどのタイトルの盤が3枚出ていてややこしい。しかも、再発時にタイトルもジャケも変わったりしている。この盤は、当初はトシコ・マリアーノ・カルテットの「マリアーノ・イン・ウエスト・サイド」として東京で録音されニッポン・レコードから出されている。後にタクトに移り「トシコ=マリアーノ・カルテット」となりジャケも変わり、タイトルはキャンディド盤と同じになってしまい、また別のややこしい盤になってしまった。内容は、マリアーノのワンホーンだが、秋吉のピアノも十分にフィーチャーされ、まずまずの盤に仕上がっている。秋吉は、ミンガスを経たせいか、単なるバッパーではなくなっていわゆる芸の幅なようなものが広がったように感じる。(hand)
秋吉敏子(p), Charlie Mariano(as), Gene Cherico(b), Albert Heath(ds),
渡辺貞夫(as,fl), 菊地雅章(p), 原田政長(b), 富樫雅彦(ds)
トシコ=マリアーノ・カルテットで東西(日米)の曲を演奏した「イースト&ウエスト」がタイトルで、日本のお正月を思い出す①春の海、のモーダルな演奏からスタートする。録音のお化粧度合いによっては「カインド・オブ・ブルー」に近いものになったかもしれないと思う。②竜安寺の石庭、では初めてフルートが聞かれ、ルー・タバキンへと続く、秋吉の和のテイストをフルートで演じる始まりとなっている。フルートはマリアーノではなく、マリアーノの盟友、渡辺貞夫が吹いているだけでなく、ピアノもこの曲だけ実は秋吉ではなく菊地雅章で、他のメンバーもマリアーノ以外全て日本人だ。記載はないが、別の日の録音かもしれない。演奏は悪くないが。盤の統一性を阻害している気がする。レーベルはRCAだが東京録音だ。(hand)
秋吉敏子(p),
Charlie Mariano(as), 宮沢昭(ts), 福原彰(tp), 原田政長, 荒川康男(b), 猪俣猛(ds)
秋吉は、この時期、アメリカで学んだことを日本の後輩たちに伝えたかったようだ。そんな気持ちの現れたセッションなのかもしれない。特にこの盤でフィーチャーされているのはテナーとフルートの宮沢昭、トランペットの福原彰。ベースは原田政長と荒川康男で2分し、ドラムは猪俣猛だ。実際には、バークリーの講師もしていたマリアーノが活躍し、マリアーノの名演盤の一つではないだろうかと思えるくらいいいプレイをしている。(hand)
秋吉敏子(p,celeste), Steve Kuhn(p,harpsichord),
David Izenzon, John Neves(b), Barry Galbraith(gr), Pete LaRoca(ds)
秋吉と新鋭スティーブ・キューンの2ピアノがギター、ベース、ドラムをバックにカントリー&ウエスタンをジャジーに演奏するという怪しい企画。持ってはいたが聞いたことはなかった。今回、初めて聞いて全体にポップな印象をもった。現代人気のノラ・ジョーンズがジャズではなくカントリーに聞こえてしまう偏狭なジャズファンの私が聞いてもそれほどカントリー臭は強くなく、悪くはない。ただ、ピアノが左右に分かれるのはわかるが、右にギターは不用だったのではと思う。そのギターのバリー・ガルブレイスが普段はあまりソロをとらないのに、この盤ではやたらソロをとる(笑)。(hand)
秋吉敏子(p), Paul Chambers(b), Jimmy Cobb(ds),
岡崎広志, 鈴木重男(as), 宮沢昭, 松本英彦(b), 原田忠幸(bs),
竹村茂, 伏見哲夫, 日野皓正(tp),
鈴木弘, 松本文彦, 片岡輝彦, 青木武 (tb)
レナード・フェザーの監修で東京で開催された世界ジャズ祭の記録。ポール・チェンバース、ジミー・コブというマイルスのリズムと秋吉の組合せをベースに、曲により日野皓正など日本のホーン陣が加わる。①木更津甚句、は魅力的な和ジャズだ。ホーン入りだが、管楽器単体でのソロは少なめで、ホーン陣的な扱いなので、秋吉のピアノの主役度が高く好感だ。この曲は後に、ザ・ヴィレッジ、へと変貌していくが、既に木更津はかなり溶解し、ヴィレッジに生まれ変わっていて、タイトル変更を待つばかりの状態になっている。②ラメント、は唯一のトリオ演奏だが、秋吉には珍しくエバンスを感じる。秋吉初のビッグバンド盤でもあり、後のバンドリーダーとしての秋吉につながる大事な盤だと思う。ただ、この盤は、日米で別のレーベル、タイトル、ジャケで発売され、曲順も違っている。内容が素晴らしいのに、評価が定まりにくい不幸な面があると思う。1964年米ヴィージェイのLPは「ジャズ・イン・ジャパン レコーデッド・イン・トーキョー」というタイトルの金閣寺ジャケで、そのままCD化されている。 同じ64年日本コロンビアLPジャケは「フロム・ジャパン・ウィズ・ジャズ/ジャパン・ジャズ・オールスターズ」と英文字が大きく書かれ日本語帯は「日本のモダン・ジャズ」となっている。その後、ジャケもタイトルも変わり「トシコ・アンド・モダン・ジャズ」としてCD化されている。私の所有盤は米盤由来のスペイン盤CDだ。(hand)
秋吉敏子(p), 荒川康男(b), 原田寛治(ds)
日本をはじめ世界の童謡をピアノトリオでモダンジャズ演奏した秋吉らしい日本企画盤。ベースとドラムは荒川康男と原田寛治。①まりと殿様、⑩ロンドン橋、がとてもいいジャズに消化、昇華されていると思う。(hand)
秋吉敏子(p),
Kenny Dorham(tp), Lew Tabackin(ts,fl), Ron Carter(b), Mickey Roker(ds)
秋吉がリーダーで、トランペットにケニー・ドーハムが参加、テナーに後に夫となるルー・タバキンも初参加したハードバップセッション。ドーハムが63年の「ショート・ストーリー」に名演を残している⑦カーニバルの朝(ブラック・オルフェ)がワンホーンで再演されているのが興味深い。(hand)
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・Toshiko Akiyoshi CDリーダー作①1953-1958
・Toshiko Akiyoshi CDリーダー作②1960-1968・・・このページ
・Toshiko Akiyoshi CDリーダー作③1970-1976
・Toshiko Akiyoshi CDリーダー作④1976-1979
・Toshiko Akiyoshi CDリーダー作⑤1980-1987
・Toshiko Akiyoshi CDリーダー作⑥1990-1996
・Toshiko Akiyoshi CDリーダー作⑦1997-2005
・Toshiko Akiyoshi CDリーダー作⑥2006-2018