ここではセロニアス・モンクのコロンビア時代後半以降の作品を紹介しています。大手コロンビアとの契約は、リバーサイドのようなジャズ的な理解には乏しかったと想像され、セールス的な期待度に至らなかったと言われますが8作を残しています。この後半の時期は一般的には評価はあまり高くありませんが、愛聴に値する作品があります。特にライブ作品は、スタジオ盤のような過度な作り込みがなく、前期とは違う洗練されたモンクワールドが味わえます。
セロニアス・モンク CDレビュー目次
①リーダー作 その1 初リーダー作からリバーサイド時代前半1957年まで
②リーダー作 その2 リバーサイ時代続き 1957年~1958年
④リーダー作 その4 後期 コロンビア移籍後 1962年~63年
1964年1月29日, 30日 ,2月10日,3月9日
Columbia
おすすめ度
hand ★★★☆
しげどん ★★★☆
Charlie Rouse(ts),Thelonious Monk(p),Butch Warren(b),Ben Riley(ds)
スタジオ録音としてはコロンビア3作目。雑誌タイムの表紙をモンクが飾ったことを記念してのタイトルだ。内容自体は悪くないが、スタジオ録音なのに目新しさがなく、盤としての個性があまり感じられないのはさびしいと思う。スタッフィー・ターキーは新曲。(hand)
冒頭のルルズ・バックイン・タウンは、ファッツ・ワーラーも録音した古いスタンダード。そのユーモラスな明るさに驚いてしまう。少し調子外れのようなノーテンキな感じで、昔のストライド・ピアノを再現しているようでもある。全般的にリバーサイド時代のようなシリアスはないが、年季を重ねた故の洗練度や軽妙洒脱さ。それもこの時期のモンクの魅力だと思う。(しげどん)
1964年2月23日
Explore →Thelonious
hand ★★★★
Thelonious Monk(p),Charlie Rouse(ts),Butch Warren(b),Ben Riley(ds)
元々は2枚組で海賊レーベルEsoldunから出ていた。その後、エクスプローラーというレーベルから2枚バラバラに出ていたが、現在はセロニアスというモンク財団のレーベルからの2枚組となった。音も良く、モンクに関して今後期待できるレーベルだ。この時期のカルテットはとても充実していて、内容もいい。(hand)
1964年3月9日,10月6日,7日
Colimbia
おすすめ度
hand ★★★★
しげどん ★★★☆
Charlie Rouse(ts),Thelonious Monk(p),Larry Gales(b),Ben Riley(ds)
コロンビアのスタジオ録音4作目。ジャケが黒いと勢いのある盤なのか?「ミステリオーソ」も黒ジャケだが、この盤も黒ジャケで勢いがあってなかなかいい。新曲のテオはプロデューサー、テオ・マセロのための曲でカッコいい曲だ。イエスタディズに似たメロディのように感じるがトプシーを元にしたらしい。マイルスもテオという曲を書いていたので、巨匠2人から曲を捧げられたことになる。もう1曲の新曲はザット・オールド・マンという多分ここでしか聞かれない曲だ。(hand)
モンクのコロムビア盤はわりと似たようなイメージのアルバムが多いが、この盤はモンクのピアノがわりと前面にでてきていて、比較的変化と元気を感じる。冒頭の「ライザ」からかなりノリノリな感じだが、この曲後半のラウズのソロではなぜかモンクはバッキングをしていない。もしかしてピアノを離れて踊っているのかも?セロニアス・モンクの肖像というビデオで、ラウズのソロの途中で踊ってしまうモンクを見ていたのでそんな楽しい想像をしてしまった。選曲もモンクの定番オリジナルだけでなく新曲もあり、Children’s Song のようなジャズらしからぬ童謡?もモンクらしくていい。(しげどん)
1964年9月20日
Monterey Jazz Festival
hand ★★★☆
しげどん ★★★☆
Thelonious Monk(p),Charlie Rouse(ts),Steve Swallow(b),Ben Riley(ds),
⑤⑥:Bobby Bryant,Melvin Moore(tp),Lou Blackburn(tb),Buddy ColletteCollt(sax,fl),Jack Nimitz(bs)
64年9月20日のモンタレー・ジャズ・フェス。ベースのスティーブ・スワローが珍しい。3月まではブッチ・ウォーレンで、10月にはラリー・ゲイルズでの録音なので、ベースが決まらない時期が半年くらいあったのだろう。間もなく24歳になろうというスワローは、近年はエレベを弾くことが多いが、まだアコベだ。 ポール・ブレイ、アート・ファーマーとプレイした後で、なかなかいいバッキングやソロが聞かれる。全6曲中、最後の2曲はフェスティバルのワークショップとして、バディ・コレットらが加わり、9人編成でモンク曲を演奏する。スモール・ビッグバンドも楽しめるのでお得盤だ。(hand)
モンタレー・ジャズ・フェスティバルでのモンクだが、この時期のいつも通りのモンクのライブで、ブルー・モンク、エヴィデンスといった同じみのナンバーを演奏。最後の2曲はバディ・コレットなどが加わったノネット編成になるが、このあたりもジャズフェスらしい臨時編成のファンサービス的な企画で楽しい。(しげどん)
1964年10月31日,11月1日
Columbia
おすすめ度
hand ★★★★☆
しげどん ★★★★☆
Charlie Rouse(ts),Thelonious Monk(p),Larry Gales(b),Ben Riley(ds)
「ジャズ・ワークショップ」も含めると1日空けて4日間のライブが2CDずつ計4枚になる。モンク曲を中心に、好調なカルテットのロサンゼルス、イット・クラブでの録音だ。ラウズのサックスが太くいい音色で鳴っている。この人のサックスは時として軽くなり、オッペケペーみたいなフレーズになることが軽んじられる原因だと思うが、この時期、艶はあるが渋めの音色とフレージングで好感だ。モンクは元気がいい。こんなに元気なラウンド・ミッドナイトも珍しい。コロンビア時代はモンクの後期で年齢もかなりかと思うと、この時点でまだ47歳。元気で全くおかしくない。ベースはラリー・ゲイルズ、ドラムはベン・ライリー。 これまでの盤でのベースは、ソロスペースを与えられてもウォーキングしていることが多かったが、ゲイルズはここでは魅力的なソロをとる(速めの曲はウォーキングになる。)。82年に2枚組LP12曲で発売され、CDでは19曲になっている。(hand)
モンクらしさが強く発揮された素晴らしいライブで、自由に力強くモンクワールドを表現している。一曲の時間も十分とっているし、録音も良く、チャーリー・ラウズのサックスも迫力ある音で捉えられていて、モンク・カルテットの実力が充分捉えられている。CDでコンプリート化されて追加曲だけでなくさらに編集でカットされていた長い演奏もそのまま味わえる事になり、この作品の価値があがったのではと思う。エヴィデンスではドラムソロの後、一瞬ストレート・ノー・チェイサーを演じが、これも間違ったのか、わざとなのか、いずれにせよスタジオ盤では絶対に起こりえない楽しいハプニングだ。モンクのコロンビア時代に対しては、評価は一般的にはあまり高くないし、企画が雑だと評する人もいるが、逆に一連のスタジオ録音盤は作り込みすぎてモンクの自由な味わいを削いでいるのではと、このライブの自由な表現を聴くと、それを強く感じる。(しげどん)
①-⑥:1961年4月21日
⑦-⑪:1964,66,70年
Moon
hand ★★★
①-⑥:Bud Powell(p),Jacques Hess(b),Art Taylor(ds),Barney Wilen(ts)
⑦-⑪:Thelonious Monk(p),Charlie Rouse(ts),Larry Gales(b),Ben Riley(ds)
64、66、70年の海賊録音全5曲。海賊盤らしく、いきなり曲の途中から始まる。ラウズもモンクもノッている感じがする。音はまずまず。CDの前半分はバド・パウエルの61年の演奏でモンクとの共演ではない。(hand)
1964年
Bandstand
hand ★★★☆
Thelonious Monk(p),Charlie Rouse(ts),Larry Gales(b),Ben Riley(ds)
1964年フランス録音としかわからないバンドスタンドからの海賊盤。これが日本では徳間からデジパックで正規発売されているので、ジャケも可愛く初心者が買ってしまう可能性がある。演奏も音も悪くはないが、これからモンクを聞こうという人向けの盤ではないと思う。やはり海賊は海賊らしい風貌にしないと、その盤は売れても結果的に裾野が広がらない。モンク盤にしては珍しく、ベースとドラムのソロが長く収録されている。(hand)
1964年10月31日,11月2日
Columbia
おすすめ度
hand ★★★★
しげどん ★★★☆
Thelonious Monk(p)
コロンビアのスタジオ録音5作目。戦闘機のパイロットのモンクのアニメジャケで昔から人気のある盤。ヴォーグの「ソロ」、リバーサイドの「ヒムセルフ」、「アローン・イン・サンフランシスコ」以来のソロ録音。これまでソロ作に比べて明るい印象は、冒頭の①ダイナのせいか、また、ソロだから当然かもしれないが、全体にモンクのピアニスティックな側面が強調された盤だと思う。モンクのピアノは、パーカッシブな側面がかなりあるがここでは、大手レーベル故かマイルドな感じに仕上がっていると思う。選曲も良く、モンクのソロが生きる曲ばかりで、聞きやすいソロ盤だ。モンクス・ポイントとノース・オブ・ザ・サンセットが新曲。コンプリート化され、コロンビア時代のソロ録音を集大成した2枚組「モンク・アローン」も出ている。(hand)
今までのソロに比べ、明るく軽い感じがするので、親しみやすいアルバムだ。それは老成した軽妙洒脱さなのかもしれないが、モンクらしさは失っていないソロなので、あくまでも比較したうえでの感想。一曲の時間が短くて、CDではボーナス曲含めると21曲も入っていた!これはコロンビアの売りを意識した編集方針なのか、モンク自身の変化なのかはわからないが、リバーサイド盤などと比べると、独特の間の取り方が性急な感じはする。(しげどん)
1964年11月4日
Columbia
おすすめ度
hand ★★★★
しげどん ★★★★☆
Charlie Rouse(ts),Thelonious Monk(p),Larry Gales(b),Ben Riley(ds)
ロスの「イット・クラブ」に引き続き、サンフランシスコのジャズ・ワークショップでの演奏で、店は違うが内容は似ている。こちらも82年に2枚組LP13曲で発売され、CDでは26曲と倍増している。間に名盤「ソロ・モンク」も録音している。心身ともに充実していた時期なのだと思う。メンバー全員が好調時期の演奏というのは、勢いがある。(hand)
「イット・クラブ」のライブの続編のような二枚組。曲目もかなり重複していて、一連のライブシリーズととらえていいと思う。モンクも元気でいい意味で同レベルの作品だが、数日間でイット・クラブ~ソロモンク(スタジオ)~当作品と、続けて演奏したのだから、すごいパワーだ。リバーサイド時代に比べてスリルがないと評する向きもあろうが、洗練された余裕の感じで有名レパートリーを演奏していて、チャーリー・ラウズもモンクの化身のように彼の音楽に一体化しているので、その完成度がそのような印象にさせているのだと思う。でもこの時期のコロンビアのスタジオ盤に比べると格段にジャズ的なパワーを感じる演奏だ。(しげどん)
①-④:1964
⑤-⑧:1965.1
Polydor
hand ★★★☆
①-④:J.J. Johnson(tb),Howard McGhee(tp),Sonny Stitt(as),Walter Bishop, Jr.(p),Tommy Potter(b),Kenny Clarke(ds)
⑤-⑧:Thelonious Monk(p),Charlie Rouse(ts),Larry Gales(b),Ben Riley(ds)
J.J.とモンクの共演盤ではない。前半①〜④がJ.J.の64年のロンドンでの演奏で、後半⑤〜⑧がモンクの65年1月の同じくロンドンでの演奏。モンク4は好調で勢いがある。J.J.の演奏も、スティット、マギーの活躍もありなかなかいい。(hand)