セロニアス・モンクの作品ガイドです。このページでは初リーダー作であるブルーノート盤から、プレスティジ時代の諸作品、リバーサイド時代の前半である1957年頃まで紹介いたします。早い時期から主要レパートリーを持ち、独特のスタイルも形成されていたことがわかります。
セロニアス・モンク CDレビュー目次
①リーダー作 その1 初リーダー作からリバーサイド時代前半1957年まで ・・・このページ
②リーダー作 その2 リバーサイ時代続き 1957年~1958年
④リーダー作 その4 後期 コロンビア移籍後 1962年~63年
1-①1947年10月15日:Idresse Suliman(tp),Danny Quebec West(as),Billy Smith(ts),Thelonious Monk(p),Gene Ramey(b),Art Blakey(ds) :Thelonious,Humph
1-②1947年10月24日:Monk(p),Ramey(b),Blakey(ds) :Off Minor ,Ruby My Dear ,April in Paris,Well You Needn't, Introspection
1-③1947年11月21日:Geroge Taitt(tp),Sahib Shihab(as),Monk(p),Robert Paige(b),Blakey(ds) :'Round Midnight,In Walked Bud
1-④1948年7月2日:Milt Jackson(vib),Monk(p),John Simmons(b),Shadow Wilson(ds) :I Mean You , Epistrophy ,Misterioso
彼ほどの長いキャリアを持つ大物で、このような形で初リーダー盤に、その後の主要曲が集約されている人は例がない。モンクというユニークな音楽家は、オリジナル曲の重要度が高いので、彼を知る意味では絶対に外せない名盤。Vol.2も重要。(しげどん)
有名オリジナルのほとんどが、初録音前の10代にできていたのは、すごいこと。結果的に、デビュー盤がヒット曲集になっている。初演でも譜面どおりには全く弾かないのはさすがモンク。装飾とシンコペーションは、モンクの個性が光る。(hand)
自作曲の他スタンダード曲も多いこの初リーダー盤だが、何れも独特の間合いと音程で完全にモンクカラーに仕上がっている。1947〜48年の当時としては最も前衛的で質の高い演奏だった筈だ。(ショーン)
※この盤に収録された1948年7月2日のセットと下記1511に収録された51年7月23日のセットの一部は、BLP1509 Milt Jackson に収録されている。
1-①と同じ: Suburban Eyes,Evonce
1-②と同じ : Nice Work
1-③と同じ : Monks Mood,Who Knows
2-①1951年7月23日:Shihab(as),Jackson(vib),Monk(p),Al Mckibbon(b),Blakey(ds) :Straight No Chaser,Four in One
2-②1952年3月30日:Kenny Dorham(tp),Lou Donaldson(as),Lucky Thompson(ts),Monk(p),Nelson Boyd(b),Max Roach(ds) :Carolina Moon, Hornin' in, Skippy , Let's Cool One ,
Vol.2のハイライトは51年と52年のセッション。ミルト・ジャクソン、ルウ・ドナルドソン、ケニー・ドーハムといった面々に対し、モンクも後年のような強烈な支配力を発揮せずにそれぞれのソロイストと協調している。演奏面ではVol1より上だと思う。(しげどん)
1に比べて有名オリジナルは少ないが、勢いのある演奏が多い。VOL.2のようなタイトルでなく、プレステッジのマイルスのように、それぞれ別タイトルのほうが売れたのではと思う。(hand)
10インチ盤のデザインはコレ!
ブルーノートの1500番台の始めのほうは、10インチ盤5000番台と共通の音源も多く、CD化の際に10インチ盤のデザインが採用されることもあるので、参考までに掲げます。
40年代まではSPフォーマットも多く残っており、モンクのセッションも47年のものはSPでも発売されています。12インチLPが主流になるのは50年代半ばからだと思います。
1952年10月15日 Thelonious Monk(p) Gary Mapp(b),Art Blakey(ds):Little Rootie Tootie,Sweet and Lovely,Bye-ya,Monk's Dream
1952年12月18日 Monk(p) Mapp(b),Max Roach(ds):Trinkle Tinkle,These Foolish Things,Bemsha Swing,Reflections
1954年9月22日 Monk(p),Percy Heath(b),Blakey(ds):Blue Monk
Monk Piano solo:Just A Gigolo
モンクの作品の中で、当然、個性的だが、やはりピアノトリオなので聴きやすく、一番取っ付きやすい盤かもしれない。(hand)
1曲目が大作。ブレイキーのドラミングが素晴らしく迫力満点。元々モンクの鍵盤タッチは、打楽器のような響きを持つため、ブレイキーとのリズム合戦が展開されると息が抜けず、緊張感を感じる。お互いに刺激し合って高まっていく様子が目に浮かぶ。(ショーン)
トリオは、ソロでの自由度や、カルテット、クインテットでの全体を支配する緊張感から解き放たれて、ある意味オーソドックスな面がリラックスして味わえる。しかしモンクらしい異様な個性というか臭いが強く充満している。オリジナル曲も多く、それの対処方法もモンクらしく、モンクという独特なピアニストへの入門盤としておすすめ。(しげどん)
1953年11月13日 Thelonious Monk(p),Sonny Rollins(ts),Julius Watkins(frh),Percy Heath(b),Willie Jones(ds) Let's Call This,Think Of One
1954年5月11日 Thelonious Monk(p),Ray Copeland(tp),Frank Foster(ts),Curley Russell(b),Art Blakey(ds) We See,Smoke Gets In Your Eyes,Locomotive,Hackensack
おすすめ度
hand ★★★
しげどん ★★★★
MONK with ROLLINSの姉妹作といえる。モンクのオリジナル曲中心に構成されていて、今後重要なレパートリーになる。最初はスタンダードの「煙が目にしみる」が印象的だったが、オリジナル曲は後年のコロンビア時代にも演奏をしているので、それらを聴いてあらためて聴きなおすと、コロンビア盤と違った粗削りなところにスリリングな聴きごたえを感じ、あらためて良さを感じた。ジュリアス・ワトキンスのフレンチホーンが印象的。(しげどん)
リード・マイルスのジャケが印象的。トランペット、テナーにフレンチホルンという異色の編成で、サウンドとしては傑作「ブリリアント・コーナーズ」や「モンクス・ミュージック」につながるサウンドだと思うが、全体にゆるい感じで、緊張感はあまりない。ホーンをバックにした②煙が目にしみるはモンク流に美しい。(hand)
1953年10月13日:Thelonious Monk(p),Sonny Rollins(ts),Julius Watkins(frh),Percy Heath(b),Willie Jones(ds) Friday The 13
1954年9月22日:Monk,Heath,Art Blakey Work,Nutty
1954年10月25日:Monk,Tommy Potter(b),Art Taylor(ds) I Want Be Happy,The Way You Look Tonight
おすすめ度
hand ★★★☆
しげどん★★★★
ショーン★★★☆
ロリンズは3曲に参加。さすがロリンズ、2曲はリーダーの位置付けなので、新人ながら物怖じせず、曲者モンクを意に介せず、堂々と自分らしいプレイ内容。モンクは、トリオ2曲の方が勢いがある気がする。ラストのフレンチホルン入りは、雰囲気が変わってしまう。(hand)
ソニーロリンズの勢いのあるテナーが着火剤となり、冒頭の2曲の仕上がりは上々!けれどもセロニアスモンクがやや大人しく感じられる。(ショーン)
たいへん面白い作品。ロリンズ参加は三曲だが冒頭の二曲のスタンダードがよくて、この二曲もピアノはモンクだが、主導権はロリンズが握っている。この二曲に関しては四つ星以上だと思う。モンクのオリジナル二曲はロリンズ不参加だが、強烈なモンク臭がただようこれも傑作。(しげどん)
1954年6月7日
Vogue
Thelonious Monk(p)
最初のソロ作品。ほとんどがモンクオリジナルでいかにも彼らしい個性が出ている。次作に比べるとソロとしての自由闊達さはやや控えめなので、バランスのとれた作品。(しげどん)
完全なピアノソロで、ここまで惹き込まれるのは何だろうと自問したが、やはりモンクの予期できないフレーズというか、音程・音階なのだろうと思う。一見外れたように聞こえる一音が、一曲聴き終えると必然に思え、またその音階を期待してしまう。ここがモンクの魅力なのかも知れない。(ショーン)
パリで、現地レーベルのヴォーグ(録音時はスイング)にソロで録音したモンク。地元のリズム隊がモンクに適合せずソロ録音になった。近年、このソロ盤に、不適合といわれたトリオのライブ録音がおまけでついた盤が出ている。「ザ・センテニアル・エディション パリ 1954」というタイトルの盤。私には初期のモンクの貴重な録音で、不適合な悪い内容とは思えなかった。(hand)
Thelonious Monk(p),Oscar Pettiford(b),Kenny Clarke(ds)
リバーサイド第一弾として、まずはモンクをわかりやすく紹介するために、キープニューズ氏はエリントン集を企画した。ジャズファンならおなじみのエリントンナンバーをモンクがどう解釈するか?と考えただけでも、たしかに興味はそそられ聴きたくなる。ルソーを使ったデザインが有名だがオリジナルデザインは全く別のかっこいいデザイン。どっちもいいけどなぜ変えたのか不思議だ。(しげどん)
エリントンの曲を知っている人には親しみやすい。(hand)
↑オリジナルデザインを採用したCDもありました。
1956年3月3日,17日
Riverside
おすすめ度
hand ★★★★
しげどん★★★☆
ショーン★★★☆
Thelonious Monk(p),Oscar Pettiford(b),Art Blakey(ds)
モンク自身は、十分にユニークだが、この作品がモンクの中でユニークかどうかは微妙だ。ブリリアントコーナーズ的な不気味さはない。ただ、スタンダードによるトリオ盤なので、入門者向きかもしれない。(hand)
キープニューズ氏は、モンク第二弾もスタンダード集にしてモンクをわかりやすく紹介することに腐心している。二作続けてモンクオリジナル曲はおあずけ。でも彼のソロの個性は随所で味わえる。耳になじみやすいスタンダード中心なので、親しみやすい盤だ。(しげどん)
モンクにしては、大人しい印象の方アルバム。まぁ聴きやすいと言えば聴きやすいが、モンクには常に前衛感を期待してしまう輩には物足りないかも知れない。私は5曲目の tea for two の軽やかな雰囲気が好きだ。(ショーン)
※このアルバムも、オリジナルは写真が使われている渋いデザインだった。切手のデザインは再発時のものだが、いまではこれの方が有名。リバーサイドはなぜか途中でデザインを変えることが多く、またプレスティジなどに比べても凝ったデザインが多い。
Ernie Henry(as),Sonny Rollins(ts),Thelonious Monk(p),Oscar Pettiford(b),Max Roach(ds)
1曲目から「斬新」の一言に尽きる。何か大きな天変地異が起きる前触れのようなテーマに続き、ロリンズとアーニー・ヘンリーのソロも個性豊かで素晴らしく、モンクワールド全開。3曲目Panonica、捉えどころのない変化に富んだ有機体で、ショーン的にはとても興味深く聴いた。最後のBemsha Swingは、迫力あるローチのドラミングとロリンズのティンパニーがどことなく異国の雰囲気を奏でる。個性的な名盤だ。(ショーン)
モンクの名盤とされるが、最初、難解でなじめなかった。今は、完成度が高い上に勢いもある傑作と思う。(hand)
リバーサイド第3弾にして初めてオリジナル作品を披露する自由が与えられたモンク。でもタイトル曲は難しすぎて再演されていない。一説によると25テイクでもうまくいかず、最後はテープ編集に頼ったらしい。ジャズ聴き始めの頃、この曲の良さが理解できず面食らった。完成度と緊張感がピカ一だが、2曲目のほうがジャズらしいリラックス感があって好きだ。歴史的な名盤だが、個人的な好みで最高点としなかった。(しげどん)
※25テイクを重ねたというのは、オリン・キープニューズ氏の記憶によると本当らしいです。そしてオスカー・ペティフォードはさじを投げ、モンクと喧嘩し、怒って帰ってしまったとか・・・
Thelonious Monk(p)
Monk's Mood only: add John Coltrane(ts),Wibur Ware(b)
ヴォーグ盤に比べてソロとしての自由度が増し、よりモンク独自の個性的なアプローチの深みに達している。聴けば聴くほど惹かれる不思議な魅力があり、ソロアルバムとしての到達点となる作品。(しげどん)
3曲目のFunctionaは自由な曲の展開が素晴らしく、新しい扉が次々と現れて、開けるたびに世界が広がっていく。これぞモンク!Round Midnightも真夜中のドラマが感じられて、一緒に夜の帳に入り込める。Monk's Moodでは、コルトレーンのテナーとウィルバーの地鳴りのようなベースがアルバム全体のアクセント効果を高めている。(ショーン)
ヴォーグ盤に比べると個性はより際立ってきている。最後のコルトレーン入りの1曲も良い。(hand)
クリント・イーストウッドが監督したドキュメンタリー。
ステージ上以外のモンクの映像が多く収録されていて、今となっては貴重な映像です。謎の多い人物として語られる事の多いモンクの一面に触れられる作品です。
セロニアス・モンク CDレビュー目次
①リーダー作 その1 初リーダー作からリバーサイド時代前半1957年まで ・・・このページ
②リーダー作 その2 リバーサイ時代続き 1957年~1958年
④リーダー作 その4 後期 コロンビア移籍後 1962年~63年