1971~72年のモンクの最後期を飾るのは、『ジャイアンツ・オブ・ジャズ』というオールスターバンドでの録音です。ディジー・ガレスピーやソニー・スティット、アート・ブレイキーなど40年代後半頃に一緒に演奏したメンバーとの世界ツアーでの録音が何枚も残されています。ベテランたちの元気な演奏が素晴らしいです。
セロニアス・モンク CDレビュー目次
①リーダー作 その1 初リーダー作からリバーサイド時代前半1957年まで
②リーダー作 その2 リバーサイ時代続き 1957年~1958年
④リーダー作 その4 後期 コロンビア移籍後 1962年~63年
1①-④: 1971.10.29
1⑤-⑧: 1971.11.7
2:1971.10.20
DOMINO
hand ★★★☆
Dizzy Gillespie(tp),Kai Winding(tb),Sonny Stitt(as,ts),Thelonious Monk(p),Al McKibbon(b),Art Blakey(ds)
1971年、ロックが大流行し、エレクトリックジャズがジャズの本流となり始めたこの時期、ビバップのリバイバル・ブームを仕掛ける動きがあった。プロデューサーのジョージ・ウェインにより往時のビッグネームを中心に臨時編成されたのがジャイアンツ・オブ・ジャズ。世界各地にツアーを行い好評だったため、翌72年も編成された。当初メンバーは、リーダー格のディジー・ガレスピー、カイ・ウィンディング、パーカーはいないのでソニー・スティット、モンク、アル・マッキボンにアート・ブレイキー。この盤は、最も録音時期の早い71年10月20日ミラノ、29日ワルシャワと11月7日ドイツ・ボブリンゲンの3カ所分の記録2枚組。1枚目はタイトルどおり初登場だが2枚目は過去に「コンプリート・バップ・ファーザーズ」として出ていたもの。毎日ほぼ同じような曲目だが、各ビッグネームは、やはりさすがのソロをとるので、特に飽きることはない。コロンビアを離れて経済的な理由かもしれないが、このオールスターに参加してくれてモンクの違う側面が見られたのはよかったと思う。1枚目は、モンクのソロは少な目で自作ラウンドミッドナイト2回とトゥデフォース2回、ウッディンユーに限られる。特に1①トゥデフォースでのソロはテンポが速く少しつらそうに聞こえる。2枚目は、①アイミーンユー、②ラウンドミッドナイトとモンク曲から始まり、この日はモンクデーなのかと思わせるスタート。大ベテランの各フロントも張り切っているが、モンクもバッキングにソロに活躍する④ティンティンデオは、ディジー作のラテン曲。モンクのラテン曲は珍しいと思って聞くとラテン色のないハードなジャズで、前半はディジーとマッキボンのデュオ、後半はモンクとマッキボンのデュオという緊張感のある演奏だ。(hand)
1971.11.5
EmArcy
hand ★★★☆
Dizzy Gillespie(tp),Kai Winding(tb),Sonny Stitt(as,ts),Thelonious Monk(p),Al McKibbon(b),Art Blakey(ds)
ジャイアンツ・オブ・ジャズのベルリンでのライブ。この頃はまだ西ベルリン。カイ・ウィンディングの⑤ラバーマンがいい感じだ。この人はメンバーの中では地味なほうで、もしかしたらJ.J.ジョンソンの代役なのかもしれないが、いい仕事をしていると思う。この年、ジャイアンツ・オブ・ジャズは日本にも来ている。スティットは麻薬歴で入国できず、松本英彦が代役。松本さんには申し訳ないが、ジャズファン的にはスティットの不許可はもったいなかったと思う。スティット自身もパーカー代役的な位置付けであり、基本的にアルトを吹いている。こんなオールスターズを見てみたかったが、私がジャズを聞き始めたのは78年頃。ちょい間に合わなかった。(hand)
1971.11.14
Atlantic
hand ★★★★
Dizzy Gillespie(tp),Kai Winding(tb),Sonny Stitt(as,ts),Thelonious Monk(p),Al McKibbon(b),Art Blakey(ds)
ロンドンでのライブ2枚組。この年のジャイアンツ・オブ・ジャズの総仕上げなのかまとまりもよい。モンクの目立ち度はやや低めかもしれない。 ジャケもドラムでクレジットもブレイキーからになっていて、ブレイキーが他盤よりも活躍している気がする。71年の記録を、3種で5日分の録音を今回聞いた。曲はほとんどがかぶっていて、ディジーの曲が多い(トゥ・デ・フォース、チュニジア、ブルーン・ブギー、ウッディン・ユー、ティン・ティン・デオ)が、モンクのラウンドミッドナイトは毎回演奏されている。(hand)
1972.9.16
Monterey Jazz Festival
hand ★★★
Roy Eldridge,Clark Terry(tp),Kai Winding(tb),Sonny Stitt(as,ts),Thelonious Monk(p),Al McKibbon(b),Art Blakey(ds)
72年の再編成ジャイアンツ・オブ・ジャズのアメリカでのライブ。ディジーがなぜか参加せずクラーク・テリーとロイ・エルドリッジの2トランペットが参加し、ブレイキーがリーダー扱いになっている。パーディドの選曲や、エルドリッジとテリーが加わるとややモダンな感じが弱まる気がする。ジャイアンツの録音はいずれも正規録音なのか、音がいい。ただ、この盤はややドラムが大きめに入っている。モンク色は薄めだ。(hand)
1972.11.12
EmArcy
hand ★★★☆
Dizzy Gillespie(tp),Kai Winding(tb),Sonny Stitt(as,ts),Thelonious Monk(p),Al McKibbon(b),Art Blakey(ds)
再編成72年ジャイアンツ・オブ・ジャズの現時点のラスト盤。フルメンバーによるスイスでのライブ後にスタジオ録音した記録。①ストレートノーチェイサーのモンクのイントロ、ソロから始まるので、モンク色を強く感じる。②③も含めモンク曲で、残り3曲のスタンダードもモンクの得意曲で、発売されたジャイアンツ5種の中で一番モンク色が強く、リーダー盤としてもおかしくない内容だと思う。後半は④ドントブレイムミーのスティットのアルト、⑤アイルウェイトフォーユーのディジー、⑥スイート&ラブリーのカイ、とワンホーンが楽しめる。(hand)