マイルストーン・レーベルから精力的にアルバムを出し続けてきたロリンズも、2001年の「ウィズアウト・ア・ソング」を最後にマイルストーンを離れます。マイルストーンでは30年間に24枚ものアルバムを出しました。その後、自己のレーベル・ドキシ―から2005年に「ソニー、プリーズ」を出したのみで、2017年に引退宣言し、現在はドキシーから過去のライブ録音を「ロード・ショーズ」シリーズとして4枚出しています。後期後半は、フュージョン熱から覚め、ストレート・アヘッドなジャズに回帰し始めますが、hand氏によれば、エレベの多用からは戻らなかったようです。
ソニー・ロリンズ CD主要作 レビュー 目次
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・ソニー・ロリンズ リーダー作 ③ 中期(1) 1962年~1964年
・ソニー・ロリンズ リーダー作 ④ 中期(2) 1965年~1968年
・ソニー・ロリンズ リーダー作 ⑤ 後期(1) 1972年~1981年
・ソニー・ロリンズ リーダー作 ⑥ 後期(2) 1982年~1998年・・・このページ
1982.8.17-22
Milestone
おすすめ度
hand ★★★☆
Sonny Rollins(ts), Bobby Broom, Yoshiaki Masuo(gr), Bob Cranshaw(el-b), Jack DeJohnette(ds,perc), Lucille Rollins(perc)
増尾が久々に参加し、似たようなボビー・ブルームとの2ギター。ディジョネットも戻ってきたが、やはり雰囲気はフュージョン。増尾という人はナベサダのジャズ時代に「アット・ジャンク」などいい仕事をしているが、やはり「セイリング・ワンダー」のようなフュージョンが好きなのだろう。ロリンズに50年代的なジャズをやってほしいという訳ではないが、ウィントン・マルサリスのような日本で当時、新伝承派と呼ばれた若手も台頭したのが80年代なので、この辺のメンバーを活用してみて欲しかった。ディジョネットはもちろん対応可能だ。新伝承派のカリプソというのも想像しにくいが、やってみる価値はあったと思う。ブレイキーやハンコックはその辺の感性が鋭いのだろう。ラストのソロ録音⑦は短いが魅力的だ。(hand)
Sonny Rollins(ts), Pat Metheny(gr), Alphonso Johnson(el-b), Jack DeJohnette(ds)
海賊レーベルEquinoxから「ライブ・アンダー・ザ・スカイ, 1983/ソニー・ロリンズ・カルテット・フィーチャリング・パット・メセニー」という盤が2021年秋に出る。私自身は既に出ている「ドリーム・チーム/パット・メセニー・ウィズ・ソニー・ロリンズ」(Bugsy)という2枚組の海賊盤でこの同じライブを聞いた。メセニーがリーダーのようなタイトルだがDisc1は完全にロリンズ・プラス・メセニーだ(Disc2はメセニーの86年のトリオ演奏)。今は閉鎖された、よみうりランド内のオープン・シアター・イーストでのライブ・アンダー・ザ・スカイでの録音だ。日本の大観衆に迎えられ、ロリンズのサックスが鳴り響いている。メセニーも比較的ジャジーなプレイに終始しているのは好感だ。アルフォンソ・ジョンソンとディジョネットも元気だ。Equinox盤とBugsy盤とは1曲目が違うので、全て揃えるには完全海賊盤のサウンドボード盤2枚組が必要なようだ。(hand)
1984.1.23-27
Milestone
おすすめ度
hand ★★★
Sonny Rollins(ts), Clifton Anderson(tb), Mark Soskin(p,el-p,syn), Russell Blake(el-b), Tommy Campbell(ds), Lucille Rollins(cowbell)
定番となっているオリジナルのカリプソから入る盤構成。甥のトロンボーン、クリフトン・アンダーソンがこの盤から参加する。マーク・ソスキンが戻り、ベース&ドラムは初めてのラッセル・ブレイクと、その後、日本で活動するトミー・キャンベルだ。パーカッションも一部入る。②オールドファッションはジャズ曲なので期待するが崩し過ぎて騒がしい感じがする。③ウィントンはケリーなのかマルサリスかわからないがロリンズの曲。④⑥もカリプソ。エレピとエレベがアコースティックになれば、かなりジャジーな盤だったと思えるし、4ビートも増え、近いうちにいい盤が生まれるかもしれないとも思わせる。(hand)
1985.7.19
Milestone
おすすめ度
hand ★★★★
Sonny Rollins(ts)
過去にも録音がある近代美術館でのテナー1本でのライブ録音。過去盤にソロ曲はあるが、1枚丸々ソロ盤はこの盤だけ。 82年の「リール・ライフ」のラストに短いソロ曲が入っていて、とても好印象だったので、期待する。要はフュージョンのバックなしに、ロリンズの魅力だけを堪能できるのだ。発売から既に35年以上経っているが、これまで全く聞く気になれず、今回、初めて聞いた。結果は、大正解盤だった。純粋にサックスだけを楽しむということは、ある意味、スタイルを超えている。モダンもフュージョンもフリーもない。いや、私にはモダンに近く感じる。ソロ盤ばかりでも悲しいが、昔から曲のカデンツァで長いソロを吹いていたロリンズなので、この盤はそれが長〜くなったと思えば違和感もない。1枚この盤を作ってくれて良かったと思う。(hand)
1985
Jazz Door
おすすめ度
hand ★★★★
Sonny Rollins(ts), Clifton Anderson(tb), Mark Soskin(p,el-p), Jerome Harris(el-b), Tommy Campbell(ds)
海賊盤で、盤自体には1993年アメリカ録音と書いてあるが、私が割と信頼しているホームページの''ジャズ・ディスコグラフィ・プロジェクト"では1985年頃と整理されている。メンバー的にはその頃だと思うが、ジャスト・ワンス、アリソンなどの選曲も考えると1987年の「ダンシング・イン・ザ・ダーク」のレコ発ライブではないかとも思える。「ダンシング」はポップな内容で落胆したが、この盤はエレベながらもストレートアヘッドなジャズでなかなかというより、かなりいい。冒頭のタイトル曲①ジャスト・ワンスは、「ダンシング」ではあまりいいと思わなかったのだが、この盤で聞くととてもいい曲だ。調べてみると、バリー・マン&シンシア・ワイルという夫妻の作った曲で、クインシー・ジョーンズが「ザ・デュード(愛のコリーダ)」(1981年)でヒットさせていた。 ③アイム・オールド・ファッションは17分超の長尺で、ロリンズのソロが止まらない歓迎すべき状況になっている。⑤セント・トーマスもいい。ドラムのトミー・キャンベルに関するホームページにディスコグラフィが載っていて、この盤の次に「テナー・マッドネス」という何ともややこしいタイトルの海賊盤があった。ジャズ・ファイルというレーベルで、1985年10月5日のスイス、ベルン録音となっている。メンバーは、ロリンズ 、ソスキン、ビクター・ベイリーにトミーのカルテットだ。いつか聞いてみたい。ただ、そのディスコに「ダンシング」がないので信憑性はちょい気になる。トミーは日本に13年間も住んでいたので、その間に色々調べられたらよかったと思う。(hand)
1986.8.16
Milestone
おすすめ度
hand ★★★★
Sonny Rollins(ts), Clifton Anderson(tb), Mark Soskin(p), Bob Cranshaw(el-b), Marvin "Smitty" Smith(ds)
冒頭のタイトル曲①G-マンが素晴らしい。前作の「ソロ・アルバム」で勘を取り戻したかのように感じる。元々はロリンズのドキュメンタリー映像「サキソフォン・コロッサス」(DVDあり、未見)用の音源らしい。ニューヨークの屋外ライブだ。メンバーは、クリフトン・アンダーソンにソスキン、クランショウ、新ドラムにマービン“スミッティ“スミスが入っている。新しいタイプのドラマーだが、ここではライブのせいかバタつき感が強い。悪い意味ではない。これでクランショウがアコベならかなりのジャズ度の高い盤になっていたと思う。ともあれ④テナーマッドネスなど4ビートがメインになったことを歓迎したい。(hand)
1987.9.15-25
Milestone
おすすめ度
hand ★★
Sonny Rollins(ts), Clifton Anderson(tb), Mark Soskin(p,el-p), Jerome Harris(el-b), Marvin "Smitty" Smith(ds)
正直、ガッカリした。前作「G-マン」で4ビートジャズが戻ってきたので、冒頭のフュージョンサウンドに落胆だ。レーベルもメンバーもほとんど変わらないのに、なぜなのだろう。「G-マン」が映像用のライブなので、回顧的な内容だっただけなのだろうか。世間ではウィントンなどがストレートアヘッドなジャズを演奏し、フュージョンは飽きられ始めた時期なのに残念だ。スタンダードのタイトル曲⑤に期待したが、これも落ち着いたジャズではなかった。前作でエレベのクランショウを嫌った私だが、クランショウがいなくなりよりポップになってしまった…。(hand)
①⑤1989.6.3
②-④⑥⑦:1989.8.5 & 9.9
Milestone
おすすめ度
hand ★★★★
Sonny Rollins(ts),
①⑤:Branford Marsalis(ts), Tommy Flanagan(p), Jerome Harris(el-b), Jeff Watts(ds)
②-④⑥⑦:Clifton Anderson(tb), Mark Soskin(p,el-p), Jerome Harris(gr), Bob Cranshaw(el-b), Jack DeJohnette(ds)
ブランフォード・マルサリス、ジェフ・ワッツ、そして「サキコロ」以来のトミフラとの共演曲が2曲①⑤入った。ベースがエレベでなく、ボブ・ハーストのアコベを入れて欲しかった。そして、なぜこのメンバーだけで1枚録音しなかったのだろう。残念としか言いようがない。ただ、このセッション、雰囲気はいいが、2人のテナーのコラボ感は弱い。もっと曲数を増やして、熱く語り合って欲しかった。他はいつものメンバーだが、ジャズ度が高く好感だ。クリフトン・アンダーソンも自信が出てきたのか、ソロが良くなってきている。(hand)
1991.8.10,17,24 & 27
Milestone
おすすめ度
hand ★★★★
Sonny Rollins(ts), Clifton Anderson(tb:3,4 & 7), Roy Hargrove(tp:2 & 6),Mark Soskin(p), Jerome Harris(gr:1,3-5,7 & 8), Bob Cranshaw(el-b), Jack DeJohnette(ds:1,4,5 & 8), Steve Jordan(ds:3 & 7), Al Foster(ds:2 & 6)
かなりジャジーな盤で喜ばしい。4種のメンバーによる録音だが、特徴的なのは、ロイ・ハーグローヴのトランペットが2曲②⑥に入っていることだ。他の3組は基本的にいつものメンバーだ。唯一の不満は、全てがボブ・クランショウのエレベということだ。これさえアコベなら私の満足度はかなり高まった盤だ。誰かロリンズに、日本ではストレートアヘッドなジャズではアコベが人気なんですよ、と言えなかったのだろうか、残念なことだ。(hand)
1993.7-8
Milestone
おすすめ度
hand ★★★★
Sonny Rollins(ts), Clifton Anderson(tb), Tommy Flanagan(p), Bob Cranshaw(el-b), Jack DeJohnette(ds),
①⑦:Jon Faddis, Byron Stripling(flh), Alex Brofsky(French horn),Bob Stewart(tuba), Jimmy Heath(arr,cond)
日本語タイトルがなぜか「薔薇の肖像」、意味がわからない。多分、ロリンズ本人もこんなタイトルがついているとは知らないのだろう。「フォーリン・ラブ」に続きトミフラとの共演のジャズ盤。最初①と最後⑦の2曲にジミー・ヒースがアレンジしたというホーン陣がついている。やや甘口だが、2曲のみクランショウがアコベなのは嬉しい。他曲はやはりエレベで②ではソロまである。ともあれ、ロリンズのストレートアヘッド盤を喜びたい。(hand)
1995.8.30 & 10.7
Milestone
おすすめ度
hand ★★★★
Sonny Rollins(ts), Bob Cranshaw(el-b),
①②④⑥⑦:Tommy Flanagan(p), Al Foster(ds),
③⑤:Stephen Scott(p), Jack DeJohnette(ds)
ローチ=ブラウン時代の「プラス4」にちなんだのかもしれないこの盤。久々のピアノトリオだけのワンホーンのジャズ盤だ。ピアノがトミフラと若手ステファン・スコット③⑤、ドラムもフォスターとディジョネット③⑤の2組になっている。理由は特段感じないので、単なるスケジュールが理由かもしれない。いつもの残念なエレベは変わらない。ジャコのような音楽にはエレベが不可欠だが、この内容はどう考えてもアコベ向きだ。せめてベースも2組にして、1組でもアコベを入れて欲しかった。(hand)
1998.1.7 & 2.28
Milestone
おすすめ度
hand ★★★☆
Sonny Rollins(ts), Stephen Scott(p,kalimba), Bob Cranshaw(el-b), Idris Muhammad(ds:②④⑤),
①③⑥:Clifton Anderson(tb), Perry Wilson(ds), Victor See Yuen(perc)
全体として盤自体の内容はジャジーでいいのだが、冒頭に久々の旧曲①アイランド・レディをなぜ置くのかは理解不能だ。ポップなカリプソを冒頭に置く主義なのだろうか。他は新曲ばかりなのでもったいないと思う。唯一のスタンダード⑤チェンジ・パートナーズはジャジーでとてもいい感じだ。ただ、このまま最終作までクランショウのエレベで行くのかと思うと、暗い気持ちになる。ペリー・ウィルソンというドラマーは初めて聞いたが、やや単調だ。この後、レギュラーになったようだ。(hand)
ソニー・ロリンズ CD主要作 レビュー 目次
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・ソニー・ロリンズ リーダー作 ③ 中期(1) 1962年~1964年
・ソニー・ロリンズ リーダー作 ④ 中期(2) 1965年~1968年
・ソニー・ロリンズ リーダー作 ⑤ 後期(1) 1972年~1981年
・ソニー・ロリンズ リーダー作 ⑥ 後期(2) 1982年~1998年・・・このページ