ここではフィニアス・ニューボーンの後半時期の作品を紹介します。体調の不安定もあり、61年からの空白期間を経ての再起以降の作品です。70年代中期には連続的に作品を発表した時期もありますが、体調不良のせいもあり、断続的な空白期間も多く、80年代にも数作の作品を発表しますが、1989年に57歳で亡くなってしまいます。
Phineas Newborn Jr. フィニアス・ニューボーン・ジュニア CDレビュー 目次
・フィニアス・ニューボーンJr.リーダー作レビュー②・・・このページ
Phineas Newborn Jr.(p),Leroy Vinnegar(b),Frank Butler(ds)
前作から1年半あいて64年4月のコンテンポラリーのリーダー第3作。ベースは引き続きリロイ・ヴィネガーで、ドラムはフランク・バトラー。発表は更に2年後の66年だ。間隔が空いたのはフィニアスの体調と関係あるのだろうか?フィニアスは60年代中頃から精神に不調をきたしたとされている。演奏を聞いた限りでは、特段、不調とは思われず、むしろ好盤だと思う。誰の選曲かはわからないが、選曲が良く、これまでフィニアスにあまり感じなかった憂いのようなものが出ている。(hand)
好調な作品が続いたが、1963年~68年の6年間で吹き込まれた作品はこの一枚だけなので、精神・体調に問題を抱えていた時期かもしれない。選曲がややマニアックに感じるが素材としては悪くない。それらはすべてコンテンポラリーで吹き込んだミュージシャンのオリジナル曲で、ケーニッヒはライナーでそれらの曲を収録したアルバムをちゃっかり宣伝している。フィニアスは充分好調で、いつも通りの左手の技巧も披歴しており、素晴らしい作品ではあるが、前2作では一聴しての強いインパクトを感じたが、それを超えるまでには至ってないと思う。聴き込むほどに評価が変わる作品かもしれない。(しげどん)
規律正しい行進曲からスタートする小気味良いアルバム。短くてテンポが良い快活な曲の中にバラードも織り交ぜて、フィニアスを感じる事ができるアルバムだけど、いまいち特徴に乏しい。(ショーン)
Phineas Newborn Jr.(p),Ray Brown(b),Elvin Jones(ds)
5年のブランク後のコンテンポラリーからのリーダー盤。レイ・ブラウン、エルビン・ジョーンズという豪華リズム隊だ。この盤の8年後に吹き込まれた、ブラウン&エルビンがシダー・ウォルトンと組んだブラウンの名盤「サムシング・フォー・レスター」(1977)を思い出す。名盤請負人コンビのサポート開始だ。(hand)
レイ・ブラウン,エルビン・ジョーンズという最高のリズム・セクションの存在感がすごい。あくまでもサポートで前面に出しゃばり過ぎず、トリオとしての躍動感を生み出している。選曲は40年代のR&Bのヒット曲などバラエティに富んでいて、メンフィス生まれの彼の思い出の曲かも知れない。凄腕リズムサポートを受け、フィニアス自身もいつものテクニックに加えさらに情感もたっぷり感じる名盤だ。(しげどん)
ジャズにポップスの様な感覚が盛り込まれ、聴きやすい展開となっているアルバムで、どの曲も嫌味のない出来栄えに仕上がっている。ただフィニアスというジャズピアニストの個性があまり前面に押し出されていない様に思えるのは私だけだろうか?(ショーン)
Phineas Newborn Jr.(p),Ray Brown(b),Elvin Jones(ds)
前作「プリーズ・センド・ミー」と同日録音。残り物かと思って聞くと、私はこちらのほうが出来がいいような気がする。フィニアスらしい南部テネシーの香りがしてくるのだ。前作が69年に録音即発表だったのに対して、こちらは75年の発表とかなり後になる。調子のいいときに録りだめしたのかもしれないが、フィニアスはあまり売れないからなかなか出さなかったのだろうか?(hand)
前作と同一日のセッションである。お蔵入りされていたが6年後に日本からの要望で発売され、当時スィング・ジャーナルのゴールド・ディスクになった名盤。前作同様にフィニアスは快調で、レイ・ブラウンをフィチュアーした曲などもあり聴きごたえ十分。(しげどん)
1974年1月
Atlantic
おすすめ度
hand ★★★☆
しげどん ★★★
Phineas Newborn Jr. (P)
74年のアトランティックからのソロ作品。本拠地メンフィスでの録音だ。ジャケのフィニアスがなぜスフィンクス形のピアノの蓋になっているのか理解不能だ(笑)。これまでも、ソロ演奏は盤に何度も入っていたが、盤全体がソロは初めて。フィニアス自身、他人と協調する必要のないソロは好きなのだと思う。全11トラック中5つがメドレーというのも特徴的だ。②など、これまでのソロと違い、キースなどが持つ叙情的な雰囲気の演奏もある。69年はキースが同じアトランティックから「サムホェア・ビフォー」を発表しており、関係がないとは言い切れない。(hand)
注目すべき初ソロ作品であり、フィニアスの強力な左手のテクニックが発露されている。しかし一曲が短くしかも11曲中5曲がメドレーなので、せせこましくメロディーが入れ替わり、まるで凄腕テクニックを披歴する練習を聞いているようだ。逆にゆったりとしたペースで長めの9.Midnight Sun では、味わいを感じる事ができた。(しげどん)
1975年
Bellaphon Interpress
おすすめ度
hand ★★★☆
しげどん ★★★★
ショーン ★★★★
Phineas Newborn Jr. (P)
本拠地メンフィスで友人のプロデュースで録音された盤。前年の前作に続くソロ作品だ。発売はドイツのマイナーレーベル・ベラフォンからだ(CDは、L+R)。精神的な不調期にあるのだと思うが内容は充実している。(hand)
前作に引き続きのソロ作品だが、内容はこちらのほうが格段に素晴らしい。メドレーも一曲あたりの演奏時間をたっぷりとってスタンダードの解釈も情感あふれる味わい深いソロピアノを感じ取れる。マイナーレーベルのためか、前作に比べるとほとんど知られておらずCDの入手も困難な状態にあるのが残念だ。(しげどん)
フィニアスのピアノのソロアルバム。「トゥルルルトゥルルル」と転がる鍵盤のメロディはフィニアスらしいフレーズで、メインメロディの合間合間にオカズの様に登場するが、やや多すぎて食傷気味である。とは言え、ソロプレイでここまで幅と厚みがある演奏ができるのは素晴らしく、聴き込むと良い雰囲気が伝わって来る。(ショーン)
Phineas Newborn Jr. (p),Ray Brown(b),Elvin Jones(ds)
10年ぶりにコンテンポラリーに戻ってブラウン&エルビンとの録音。精神的不調後だと思うが、演奏からは感じない。むしろ深みのようなものを感じる。ただ、①シュガー・レイのまたかよ?感はある。「ウィ・スリー」など4度目(ファビュラス、ストックホルム)で、しかも、冒頭曲はないと思う。②イル・ウィンドは、フィニアスがひとりよがりにならず、2人と息の合った共演を聞かせるバラードの名演だ。③④などのロマンチックな選曲は新境地を感じる。76年の録音だが発表は85年と遅い。(hand)
再びレイ・ブラウン、エルビン・ジョーンズのサポートを得たトリオ盤。親しみやすさや落ち着きを魅力ととらえるならば、充分魅力的な作品だと言える。しかし残念ながらかってのような緊張感のある凄みはもはや感じられず、リズムセクションも優しくサポートしているように感じてしまう。(しげどん)
Phineas Newborn Jr. (p),Ray Brown(b),Jimmy Smith(ds)
レイ・ブラウンのプロデュースでパブロからの1枚。ドラムはジミー・スミス。オルガン奏者とは別人。フィニアスの運指は相変わらず速いが、以前よりは遅くなったかもしれない。③のスティービー・ワンダーの曲は目新しい。(hand)
70年代は体調のせいで録音が断続的だが、この作品は前作の3ケ月後の録音で、この76年はかなり調子がよかった時期なのだと思う。冒頭のSalt Peanutsが意表をついた選曲だ。全体的に勢いがあり、レイ・ブラウンも自分のプロデュースだからか、前作「Back Home」より張り切っているように聴こえる。(しげどん)
1977年9月7日
Philips
未CD化
hand ★★★
しげどん ★★★
Phineas Newborn Jr.(p),Allen Jackson(b),Clarence Johnston(ds)
フィニアス唯一の未CD化盤。初来日ライブで1977年9月7日の大阪サンケイホール。第1部がアーネスティン・アンダーソン、第2部がフィニアスのトリオだったとのこと。フィニアス自身はまずまずの出来だと思うが、録音のせいか、とにかくドラムのクラレンス・ジョンストン(知らない人だ)の音が元気よくてうるさいのが難点だ。ただ、A面1曲目のアワ・デライトは特にうるさいがだんだん落ち着いていくので、ライブ中に音量レベルの調整をしていた可能性はある。ベースのアレン・ジャクソン(こちらも知らない)は落ち着いたプレイをしている。選曲はライブならではのヒットパレード(5回目のシュガー・レイも致し方ない。)とこの盤のみの曲もある。もしCD化されるのであれば、最新技術でバランス調整をしてほしい。(hand)
来日時のライブという事だが、あまり盛り上がった感じはしない。シュガー・レイみたいなレパートリーはファンサービス曲なので、フィニアス・ファンならテーマ弾いた段階でもっと拍手喝采のはずなのに・・・ もちろんフィニアスのピアノに往時の輝きがないとも言えるが、ファンならそんな事は関係ないはず。録音バランスも悪い。でも日本でこのような演奏の記録があったということ自体貴重な録音と言える。決して無駄にしてはいけない音源だ。(しげどん)
Phineas Newborn Jr.(p),Jesper Lundgaard(b),Bjarne Rostvold(ds)
フィニアスはライブが苦手でジャズクラブから干されたという文章を読んだ記憶がある。少なくともこの日のライブは好調で素晴らしい。MCはもしかしたら苦手なのかもしれないが、この熱演があればMCは問題ではない。コペンハーゲンといえばカフェモンマルトルだが、その録音はないのだろうか?ぜひあってほしい!(hand)
断続的な体調不良の中のローカルミュージシャンとのライブ演奏なので、実はあまり期待していなかったのである。しかしこの時期の録音とは思えない、10年間若返ったような熱気のあるライブ作品であることに驚いた。1979年という事は彼はまだ40代だったのだから、体の不調がなければもっと素晴らしい作品を記録し続けたと思わざるを得ない素晴らしい作品だ。(しげどん)
勢いのある曲 Oh, lady be good で始まるフィニアス後期のライヴアルバム。緩急織り交ぜた演奏、名曲を取り入れた曲選、病と戦いながらカムバックし、演奏を続けたフィニアスの感動的な集大成っぽく感じるところがあり、フィニアス初心者の方にもオススメできる秀逸なアルバムだ。(ショーン)
Phineas Newborn Jr.(p),Ray Brown(b),Marvin "Smitty" Smith(ds)
評判はあまり良くないが、聞いてみて、それほど悪くない。日本人関与なのにヒットパレードではないのもいい。(hand)
晩年の作品だが、勢いのある演奏で安心する。有名曲のオンパレードでファンサービス的だが、とてもなじみやすく聞きやすい作品だ。レイ・ブラウンのベースも圧力を感じる。(しげどん)
Phineas Newborn Jr. (p),Jamil Nasser (b),Tony Reedus (ds)
悪評高い最終作。これも日本制作だ。私の耳が悪いのか、それほど悪い内容とは思えない。ただ、リズムとのコンビネーションがあまり良くないとは思う。(hand)
フィニアスはテクニックはずば抜けていたが、安易に情感に訴えるタイプではない職人肌の人だったので、ある意味彼らしい最終作と思える。淡々とした印象の最終作品だ。(しげどん)
Phineas Newborn Jr. フィニアス・ニューボーン・ジュニア CDレビュー 目次
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