ケニー・ドーハムのCD主要リーダー作を紹介していきます。
ドーハムは1940年代からビリー・エクスタイン,ライオネル・ハンプトン,そしてチャーリー・パーカーといった様々な一流どころとセッションに参加しておりかなりの録音を残しています。
しかし後年に彼の名を冠して編集された企画盤を除くと、正式なリーダー作はそれほど多くありません。
このページでは、1953年の初リーダー作から1960年途中までのリーダー作を取り上げました。
新宿JAZZ談義の会:Kenny Dorham ケニー・ドーハムCDレビュー 目次
Kenny Dorham(tp),Jimmy Heath(ts),Walter Bishop Jr.(p),Percy Heath(b),Kenny Clarke(ds)
ミンガスが作ったデビュー・レーベルからのデビュー盤。元が10インチなので曲が全体に短く、1953年録音なので音質もややクリアさに欠けるのが残念なところ。ビバップからハードバップへの過渡期の感じだ。マイルスだけでなく、ドーハムもモダン・ジャズの夜明けの時期に頑張っていたことがわかる。速い曲での突撃ラッパのような吹き方と、バラードでのブルーな感じは、最初から持ち合わせていたことがわかる。(hand)
Kenny Dorham(tp),Hank Mobley(ts),Cecil Payne(bs),Horace Silver(p), Percy Heath(b),Art Blakey(ds)
⑤-⑧:Oscar Pettiford(b) replaces Heath
add①-④,⑨:J.J.Johnson(tb),Carlos Valdes(conga),Richie Goldberg(cowbell)
コンガのラテンな感じで、熱く、しかし、クールに始まる①アフロディジア。ドーハムもモブレーもJ.J.も超カッコいい。録音から25年後の1980年代にこの曲で踊り始めたロンドンの若者たち。クラブ・ジャズの始まりだと思う。ドーハムとブルーノートとロンドンのDJはすごい。③マイナーズ・ホリデー、ドーハム作のカフェ・ボヘミアのJMでも演奏された曲。1曲目と同じアフロ・キューバンな感じで演奏される。②ロータス・フラワーだけがバラードで、この盤のハードボイルドでダンサブルな雰囲気に合っていないと思う。(hand)
炎のようにほとばしる若々しい爆発力にいまさらながら感動できる決定的な名演集。 A面はBN5065で発売された10インチ盤のオクテット演奏でブルーノート5000番台のなかでも突出した傑作だと思う。B面は12インチ化の際に加えられたセクステットによる演奏。どちらも素晴らしいAランクの名演。この高揚感は尋常ではない。(しげどん)
最初はレコードで聴いたが、A面はコンガ が加わることで、全く新しいジャンルのラテン系ジャズの世界が創り出され、そのオリジナリティに驚き、その創作力に感 動した。B面も、ケニードーハムの明るく 伸びやかなトランペットが存分に味わえ、 ハンクモブレーらとの競演も楽しめ、終 始勢いが感じられる素晴らしいアルバム となっている。アートブレイキー御大のド ラムが牽引してくれているのだろう。この ような独自性の強いアルバムは、ジャズ の奥行きと底辺拡大に大きく寄与している。ショーンとしても大好きな1枚だ。 (ショーン)
Kenny Dorham(tp),J.R.Monterose(ts),Dick Katz(p),Sam Jones(b),Arthur Edgehill(ds)
Vol.2のない、Vol.1だけの謎のジャズ・プロフェッツだ。ただ、ボヘミアのライブもこのバンドのライブと言えると思う。マイルス、ブレイキーなどコンボ編成のバンドが活躍した時代に、ドーハムが結成したこのバンドのこの盤は、割といいのだが、抜群にいいという訳ではなく、きっと売れなかったに違いない。ジャズのグルーヴ、カッコ良さが足りないのだと思う。ラスト曲⑤タヒチ組曲は、「カフェ・ボヘミア」のライブでタイトルが変わり①モナコとして演奏される名曲。(hand)
「ジャズ・プロフェッツ」という独自のバンド名をわざわざつけているが、もともと企画性を強く持ったドーハムの割には際立ったグループの特徴を出しているわけではない。むしろ彼の作品の中では普通のハードバップ作品に聴こえてしまう作品だ。もちろん作品の水準としては平均以上の佳作と言えると思うが。J.R.モンテローズも好演。(しげどん)
Kenny Dorham(tp),J.R.Monterose(ts),Bobby Timmons(p),Kenny Burrell(g),Sam Jones(b),Arthur Edghill(ds)
ピアノがディック・カッツからボビー・ティモンズに変わってのライブ。正式か臨時か分からないが、とにかくティモンズ参加でグルーヴ感のあるバンドになっている。なんとティモンズは19歳でニューヨーク・デビュー録音だ。⑥エッジ・ヒルズは、ドーハムがドラムのアーサー・エッジヒルズにちなんで作った曲らしいが、どう聞いても、マイルスのチューン・アップだ。いい演奏なので、こだわる点ではないのだが念のため。この日の残りの演奏は、③メキシコ・シティの別テイクが「ケニー・バレルVol.2」として当初から出ていた。その他曲は、80年代に、Vol.2、Vol.3 として発掘され、現在は2枚組CDにまとめたものや、オリジナル+4曲CDも出ているが、当初発表の形で聞くのがやはりオススメだ。(hand)
ジェントルな雰囲気の漂う大人の演奏 だ。枯れた音色のドーハムのトランペット が、哀愁を感じさせる「モナコ」と「ラウン ドアバウトミッドナイト」。続く「メキシコシ ティ」にテンポ良く繋ぎ、どんどんアップテ ンポになって行く。そして「チュニジアの 夜」。ドーハムの速吹きペットの聞き応え は十分で、JRモントローズのテナーも、 独特のアレンジで素晴らしい。更に追い 討ちをかけるかのように、「ニューヨーク の秋」からの最後は「ヒルズエッジ」名曲 を名人達が磨き上げたら、こうなるという 見本だ。CDでコンプリート盤もあるので、 その日の雰囲気をしっかり味わうのも素敵だが、当時発売されたレコードはの6 曲。このスキが一切ない濃厚でアダルト な1枚の完成度は凄すぎる! (ショーン)
ケニー・バレルが加わったセクステットのライブで、ジャズファンならよく知っている名演。各人のソロは素晴らしいのでライブとしてはいい作品だと思うが劇的な臨場感は残念ながらなく、ケニー・バレルの参加の効果も一時的な感じである。
アナログA面最後のメキシコ・シティは名曲で、ケニー・バレルvol2では、ギターソロからはじまる別バージョンが収録されている。(しげどん)
Kenny Dorham(tp) , Sonny Rollins(ts),Hank Jones(p),Oscar Pettiford(b), Max Roach(ds), Betty Glamman(harp)
リーダーバンドのジャズ・プロフェッツも解散し、レーベルもリバーサイドに移った最初の盤。ロリンズ、ローチとジャズでは珍しいハープのベティ・グラマンを迎えた盤。曲もスタンダードが多く、ドーハムのオリジナルは⑥ラヴィラのみ。②エイプリルは、速い曲なので、ローチ=ブラウン風になる。ドーハムは、ブラウン亡き後、ローチ5に加入しているので、当然の雰囲気ともいえる。ローチがもう少しおとなしくして、ドーハムとロリンズが前面に出る感じに録音されていれば、と思う。ハープの参加は全曲ではなく、ピアノ的な使い方で特段目立たない。(hand)
Kenny Dorham(tp),Ernie Henry(as),Eddie Mathias(b),G.T.Hogan(ds)
ピアノレスのベースとドラムだけのリズム隊にドーハムとアーニー・ヘンリーという面白い組合せ。大音量で聞くとなかなか楽しい盤。①蓮の花は、有名な「静かなるケニー」(1959年11月13日)よりちょうど2年早く録音(1957年11月13日)されており、こちらのほうがアグレッシブだ(さらに2か月早く、ロリンズの盤「ニュークス・タイム」(1957年9月22日)でエイジアティック・レエズというタイトルで、ドーハム不参加で録音されている。)。②以降もハーモニーの妙、リズム隊とソロの掛け合いの妙と、楽しめる要素が多い。ヘンリーは、さすがにモンクの「ブリリアント・コーナーズ」に参加するだけのことはある。寡作だがドルフィー的な要素も持つ才人だ。ドーハムのソロも刺激を受けている。ベースがとても良く、④⑧参加のウィルバー・ウェアは有名だが、その他は名も知らぬベースのエディ・マシアスが活躍する。調べてみると、ローランド・カークと共演するなど先進的な人のようだ。(hand)
ピアノレスカルテットながら実験的なアレンジではなく味のある親しみやすい作品だと思う。もちろんドーハムのソロは素晴らしい。一方の共演者のアーニー・ヘンリーは、ブリリアント・コーナーズで有名だが、ドルフィのような前衛的な人ではなくパーカー派のマクリーンとかポーターみたいな音色に特徴のある印象がある。しかし彼は録音後一カ月も立たないうちにヘロイン中毒で死んでしまうので、これが最終録音になり、作品が少ないので貴重だ。(しげどん)
ドーハムが1 曲だけピアノを弾いているが、基本編成にピアノがいないため、やや全体を通してあっさりした印象を受ける。ドーハムのトランペットとアーニーヘンリーのアルトサックスとの掛け合いが聴きどころだ。(ショーン)
Kenny Dorham (tp、vo),Curtis Fuller(tb),Ceder Walton(p),Sam Jones(b),Charlie Pership(ds)
いきなりドーハムのボーカルの枯葉から始まる盤。知らないで買った人はビックリ(ガッカリ?!)。歌は、思ったほど悪くはないが、また聞きたいとは思えない。録音が1年以上かけて2回に分けて行われているのが理解できない。余興で1曲やるくらいにして欲しかった。(hand)
Kenny Doham(tp),Dave Amram (frh),Cannonball Adderley(as),Cecil Payne(bs),Ceder Walton(p),Paul Chambers(b),Philly Joe Jones(ds)
4枚録音したリバーサイドの最終作。キャノンボール、チェンバース、フィリー&コブと、マイルス系ミュージシャンが多数参加した盤。そのせいか、超名盤「カインド・オブ・ブルー」の雰囲気を感じる場面がある。特にキャノンボールは、時期的にかメンバー的にかわからないがとにかく絶好調で、カインド的なプレイを聞かせる。チェンバースもノっている。フレンチホルンやバリサクが入っているが残念ながら活かしきれていない。選曲、アレンジも含めて(金をかけて)もっと作り込めばドーハムのカインド的な名盤になったと思える盤だ。タイトルの通りブルーで厳かな雰囲気がもっと作れた可能性は感じる。とはいえ、悪い盤ではない。(hand)
キャノンボールのアルトの存在感が突出している。ドーハムの情感のあるトランペットも味わえるなかなかの作品だと思うが、共演者の中ではキャノンボールのつややかなアルトが突出的に素晴らしく、まさに名人芸だ。一方でフレンチホルンとバリトンサックスが入ったセプテット編成なのだが、編曲的にはその編成を生かしていないので、最初から二人の双頭クインテット盤にした方がよかったのではないかと思う。(しげどん)
キャノンボールとの競演、紳士的な展開で安心して聴けるJAZZ。逆に言うと驚きはそう無い。一日中流していても疲れないアルバムだ。blue springのキャノンボールは、春先の気怠い雰囲気をうまく表現していて、面白い。このように曲名に全てspringという記載があり、春を色々な気分で演奏した試みが、ユニーク。目をつぶって曲名を意識しながら聴くとこのアルバムの良さが倍化するので、お試しあれ。(ショーン)
Kenny Dorham(tp),Tommy Flanagan(p),Paul Chambers(b)、Art Tylor(ds)
すばらしい一枚だが、この作品が代表作とされてしまった事がドーハムの不幸の始まり。蓮の花+マイ・アイデアルと続くA面の二曲が素晴らしいので、多様な才能を持つドーハムを「いぶし銀の職人」的な地味なイメージにしてしまったのは残念だ。でもこの作品ではA面3曲めのオリジナル「Blue Friday」をまずは全面的に押したい。ブルースながら前衛的で知的な構成を感じる面白さがあり、この曲だけを何度も繰り返して聴きたくなる。評論家の久保田高司氏はサキコロのブルーセブンとの対比を説明されておられ、なるほどと感心した。次に素晴らしいのはB面一曲目の「Blue Spring」で、この曲をタイトルにしたアルバムもある。もちろんそのほかのスタンダードも味わいが深く、人気盤であるのは必然なのだ。(しげどん)
(傍系のニュー・ジャズだが、)プレスティッジへの唯一の録音。過去の評論家さん達がドーハムといえばこの盤、という感じでNo.1オススメ盤として誉めたたえてきた盤。サキコロを先頭に、トミフラは名盤請負人、的な流れでそうなっている場合が多い。確かにいい盤ではあるが、ほのぼのとした曲が多く、ドーハムのこの盤でのほのぼのとした音色と相まって、ドーハムをほのぼのオジサン的に印象づけてしまった。ドーハムは、フロンティア精神も持つミュージシャンなので、2枚目以降に聞く盤としてはいいが最高盤とするのはミスリードだ。①蓮の花は、2年前の「2ホーンズ、2リズム」(1957年11月13日)の再演。⑤ブルー・スプリング・シャッフルも、10カ月前の「ブルー・スプリング」(1959年1月20日)の①タイトル曲に、シャッフルを付けて改題しているが、同曲の再演だ。この曲は、初演と同じ59年4月に仏映画「彼奴を殺せ」のバルネ・ウィランのリーダー盤サントラにドーハムも参加してにバルネ作?のタイトル曲として吹き込まれている(笑)。ジャズにはそういう謎が多い。ただ、いずれも名演だ。(hand)
軽やかに歌うケニーのトランペットが、美 しいメロディを紡ぎ、情感溢れる素敵なア ルバムに仕上がっている。1 曲目lotus blossomの輝き感からの2曲目my idealの 落ち着きが堪らない。ケニードーハムの 演出のうまさが滲む。quietでありnobleな 落ち着いた大人のJAZZを楽しめる。元気な時に聴くと物足りなさを感じる人がいるかも知れないが、ゆったりとした時間を楽しみたいときに向くアルバムなのだ。(ショーン)
Kenny Doham(tp),Charlie Davis(bs),Tommy Flanagan(p),Butch Warren(b),Buddy Enlow(ds)
ザナドゥ得意の海賊盤ではなく、超マイナーレーベルのジャロ原盤「アライバル」をザナドゥが買い取り「メモリアル」として発売したもの。ジャロのマスター・テープが見つからないのか、J.R.モントローズ盤のジャロ盤もこの盤もアナログをCD化した模様だ。アナログ起こしは、音は悪くはないがプチプチが悲しい。バリサクのチャールズ・デイビスとの共演が2枚続くが、1か月しか違わないので、バンド結成かどうかは微妙だと思う。バリサクのソロは元気がいい。トミフラのピアノは、前作「クワイエット・ケニー」もいいが、こちらの方が音が立っている。ドーハム自身のプレイは、ふっ切れたようなキレのいい音色だ。(hand)
ウナ・マスやページワンのようなポピュラーな人気がでるような作品ではないかもしれないが上質なハードバップ作品で、バリトンのチャールス・デイビスも好演している。Jaroレーベルと言えば、本作「Arraival of」とJ.R.モンテローズ「The Message」が有名で、いずれも1970年代後半にザナドゥがゴールド・シリーズで再発していたので、金色ながら地味なジャケットが見なれた感じだった。あの当時はJaro盤がどんなものかもわからずメモリアルアルバムという再タイトルが地味な発掘盤みたいなイメージだったが、実は完成度の高いスタジオ盤なのであった。(しげどん)
ドーハムの多彩な一面を味わえる作品。Charles Davisのバリトンサックスとの相性も良く、緩急つけた低音は痺れる。アルバム全体のレベルは、トミーフラナガンのピアノがしっかり上げてくれており、ドーハムも自由に演じられている安心感がある。(ショーン)
新宿JAZZ談義の会:Kenny Dorham ケニー・ドーハムCDレビュー 目次