ケニー・ドーハムのサイド参加作の紹介です。ここでは1959年から1961年までの作品を取り上げました。ドーハムのリーダー作はさほど多くありませんが、特にこの時期、サイドマンとしてはかなり多くの作品に参加しています。
John Mehegan(p),Kenny Dorham(tp),Chuck Wayne(g),Ernie Hurtado(b)
ワンホーンで事実上ドーハムのリーダー盤かと思って聞くとさにあらず、ミーガンがかなり頑張って中心にいる。ドーハムはサイド感たっぷりに(笑)、軽い感じで吹いている。ドラムレスなので、ギターのチャック・ウェインが張り切っている。ラスト曲⑦ブルース・デサッドは、ドーハムがブルーにテーマを吹く。(hand)
Barney Wilen(ts,ss),Kenny Dorham(tp),Duke Jordan(p),Paul Rovère(b),Kenny Clarke(ds)
名ライブ盤「バルネ」と同時期、ほぼ同メンバーで録音された「彼奴を殺せ」のサントラ。「バルネ」が私の愛聴盤なので期待するが、サントラなので、曲が短く、いいメロディやプレイはあっても、1曲ごとの完成度は低くなってしまっている。バルネやジョーダンに比べてドーハムの活躍度は低い。スタジオ盤で「バルネ」のような盤を残してほしかった。
Randy Weston(p),Kenny Dorham(tp:1-4),Coleman Hawkins(ts),Wilbur Little(b),Clifford Jarvis(ds:6),Roy Haynes(ds:1-5),Brock Peters(vo:③)
ドーハム以上にアンダーレイテッドなランディ・ウェストンだが、いい作品も多い人。暗い作品が多い中で、この盤は明るめで、有名曲①ハイ・フライは明るいピアノだ。フロントはドーハムとテナーの父コールマン・ホーキンスだ。モダン期に入ってからのホークは、音色が粗くあまり好感が持てない場合が多いが、この日は音色もきれいでモダン期に適合している。④スタークロスドラバーズは、エリントンの名バラードでホークのソロが、いい。⑤スポット・ファイブ・ブルースは、ピアノトリオが活躍し、後半入るホークもいい。不気味なボーカル曲③ホエアだけは好きになれない。(hand)
Oliver Nelson(ts),Kenny DorhamTtp),Ray Bryant(p),Wendell Marshall(b),Art Taylor(ds)
「ブルースの真実」はネルソンの最高盤というだけでなく、ジャズの最高名盤の1枚だと思うが、それ以外のネルソン盤のクオリティはあまり高くないと思う。この盤も何かを特段感じるということがなかった。(hand)
Abbey Lincoln(vo),Kenny Dorham(tp:2,4,7-9),Tommy Turrentine(tp:1,3,6,10),Julian Priester(tb:1,3,6,10),Stanley Turrentine(ts:1,3,6,10),Les Spann(gr:2,4,7-9,fl:5),Wynton Kelly(p:2,4,5),Cedar Walton(p:3,6),Phil Wright(p:7-9),Bobby Boswell(b:1,3,6,10),Sam Jones(b:2,4,5,7-9),Philly Joe Jones(ds:2,4,5,7-9),Max Roach(ds:1,3,6,10)
ラブソング中心の前2作から、選曲が多少、アビーの個性に合った感じになってきたリバーサイド最終盤。ローチとフィリーが入っている。ただ、バンドの使い方のもったいなさは残念ながらそのままだ。⑧ソフトリーにはドーハムの半コーラスの短いソロがある。(hand)
Helen Merrill(vo),Kenny Dorham(tp),Jerome Richardson(fl,ts),Frank Wess(fl,ts),Jimmy Jones(p,arr),Barry Galbraith(gr),Milt Hinton(b)
ヘレン・メリルのメトロジャズ盤にドーハムが①③の2曲に参加。①はテナー、③はフルートでジェローム・リチャードソンが活躍し、ドーハムはオブリガードで音が聞こえる程度。超名盤「ウィズ・クリフォード・ブラウン」以来の楽器のソロを大事にするメリル盤の姿勢は買いだが、ドーハムを活用しないのはもったいなかった。(hand)
Kenny Dorham(tp),Harold Land(ts),Amos Tries(p),Clarence Jones(b),Joe Peters(ds)
ローチ=ブラウン盤での活躍で少しだけ有名なランド。私自身は割と好きなテナーだが、リーダー作に決定盤のない残念な状況だ。70年代にヴァイブのボビー・ハッチャーソンとの双頭バンドは割と人気があるがあまり私好みではない。ただ、ビル・エバンス「クインテセンス」(1976)は私の愛聴盤で、そこでのランドの鉄錆の浮いているようなテナーのサウンドが特に気に入っている。この盤も改めて聞いてみると悪くない。ドーハムは、やや淡々としたプレイだが、これも悪くない。ランドは、新ジ談で再発見したい人だ。(hand)
⑥:Benny Bailey, Kenny Dorham(tp),Julian Priester(tb),Walter Benton(ts),Cecil Payne(bs),Peck Morrison(b),Max Roach(ds)
キャンディドのオムニバス盤。プロデューサー、ナット・ヘントフの著書『ザ・ジャズ・ライフ』との連動企画らしい。ドーハムは全6曲のラスト曲、自作⑥オー・イェー、オー・イェーにのみに参加。61.11.1スタジオ録音。ドーハムがリーダーと思われる。2トランペットでベニー・ベイリー、トロンボーンのジュリアン・プリースター、テナーのウォルター・ベントン、バリにセシル・ペインと5管だ。ピアノレスで、ベースがペック・モリソン、ドラムがローチが参加している。この日の録音以外に見たことのない組合せだ。プリーチャー的な明るい曲。盤全体の印象は、ミンガス=ドルフィー的な感じだ。(hand)
④:Abbey Lincoln(vo),Benny Bailey(tp),Eric Dolphy(as),Kenny Dorham(p),Peck Morrison(b),Jo Jones(ds)
ミンガス、ローチらのニューポート・ジャズフェスの商業主義とギャラの低さへの抗議として同時に行われたワークショップを“ジャズ・アーティスト・ギルド”の名で行った。盤自体はライブではなくスタジオ録音のオムニバスで、「ジャズ・ライフ」と同日61.11.1の録音だ。ドーハムは全5曲中1曲④エイント・ノーバディズ・ビジネスにのみ参加。「ジャズ・ライフ」とはメンバーがほとんど変わり、アビー・リンカーンのボーカル曲になっている。管では、エリック・ドルフィーが入り、なんとトランペットがベイリーだけで、ドーハムはピアノを担当している。ベイリーとドルフィーの長いソロはあるが、ピアノはソロがなく可もなく不可もなくというところ。盤全体の雰囲気は、「ジャズ・ライフ」同様にミンガス=ドルフィー的な感じだ。(hand)
Kenny Dorham(tp),Rocky Boyd(ts),Walter Bishop Jr.(p),Ron Carter(b),Pete La Roca(ds)
あまりに売れなかったのか、ドーハム名義で「ウエスト・42nd・ストリート」として再発されたこともある。ロッキー・ボイドは、この盤以外で名前を見たことがない人だ。コルトレーン系なのだと思うが個性があまりないのが弱点だ。ただ、この盤は、曲がいいのが救いになっている。ボイドの曲①アバーズは、ブルー・ミッチェルも代表作「ブルー・ムーズ」で取り上げている名曲。リズム隊も、最強だ。(hand)
Kenny Dorham(tp),Clifford Jordan(ts),Cedar Walton(p),Wilbur Ware(b),Al Heath(ds)
①サンライズ・イン・メキシコ、はドーハム作。ドーハムは以前にもメキシコ・シティという曲も作っているが、この曲もなかなかいい。ドーハムは、8曲中2曲を作曲し演奏だけでなく作曲でも貢献している。普段おとなしめのジョーダンがこの盤では珍しくアグレッシブだ。この後のアグレッシブなジョーダンへの芽吹きを感じる盤だ。シダー・ウォルトンの初期の演奏も聞かれ、ハードバップのいい感じの演奏をしていて、ブレイキー盤で有名なシダー作の⑧モザイクも入っている。(hand)
Kenny Dorham(tp),Curtis Fuller(tb),Frank Haynes(ts),Tommy Flanagan(p),Ben Tucker(b),Dave Bailey(ds)
ドラマー、デイブ・ベイリーの良質なハードバップ盤。ドーハム、カーティス・フラー、フランク・ヘインズの3管だ。ベイリーの自己主張をあまりしないプレイのためか、ドーハム名義の「オシモシス」やトミー・フラナガン名義の「セクステット」として発売されたこともある。確かに、聞いてみてリーダーが誰かを当てるのは難しいとは思うが、ドーハムやトミフラがリーダーには聞こえない。ベイリーが、バックでうまくまとめている証拠だろう。ドーハム作アン・オスカー・フォー・オスカーが聞かれるほか、この時期には珍しいトミフラのトリオ演奏2曲(ライク・サムワン・イン・ラブ、ジャスト・フレンズ)も聞かれる。(hand)