ケニー・ドーハムのサイド参加作の紹介です。ここでは1963年から最晩年までの作品を取り上げました。この最後の時期の特徴は、愛弟子ともいえるジョー・ヘンダーソンらの新主流派的な盤への参加と、バリー・ハリスらとのビバップ・リバイバル的な盤への参加があります。
60年代後半からはグッと収録作が少なくなっているのは、体調がすぐれなかったせいもあるのでしょうか。しかし一説によると経済的に苦しくて音楽シーンから遠ざかり郵便局などで働いていたという話もあり、ドーハムのような偉大なトランペッターがそのような状況に陥ることにやるせないものを感じます。
70年代には腎臓病が悪化し透析をする状態になっていたとの事で、1972年12月5日に48歳という若さで腎不全のためこの世を去りました。
Kenny Dorham(tp),Joe Henderson(ts),McCoy Tyner(p),Butch Warren(b),Pete LaRoca(ds)
ドーハムの愛弟子とも言うべきジョーヘンのデビューリーダー盤。ドーハム作の最大名曲とも言える①ブルーボサから始まる。ドーハム、ジョーヘンともに好調だ。マッコイが控えめなエレガントな弾き方をしているのもいいと思う。ジョーヘンの一風変わったメロの名曲④リコーダミーも、ドーハムは難なくこなしている。6曲中2曲がドーハム作だ。(hand)
リズム・セクションのせいもあり、新主流派的なテイストがあるいい感じのハードバップ作品である。アルバムとして「ウナ・マス」の姉妹盤みたいな作品で、一曲目はドーハムのメロディアスなセンスが生かされたボサノバ調の名曲「ブルー・ボッサ」。ヘンダーソンも同様な曲調のオリジナルを用意してたり曲も演奏の味も変化に富んだ聴かせる作品だ。(しげどん)
Joe Hendersonの秀作アルバム。冒頭の2曲はドーハムの作品だ。blue bossa ではかすれたドーハムのトランペットがボサノヴァの軽やかさにピリッとしたスパイスを効かせていて素晴らしい!ヘンダーソンとの息もぴったりだ。続くla meshaでは、落ち着いたトーンのドーハムを聴け、マッコイタイナーのピアノとのマッチングがこれまた良い。その後の4曲はヘンダーソンの作品。アルバム全体を流れる癒し感は快適そのもの。疲れた日に軽やかな風の通る部屋で、寛いで聴きたいアルバムだ。(ショーン)
Kenny Dorham(tp),Joe Henderson(ts),Andrew Hill(p),Eddie Khan(b),Pete La Roca(ds)
愛弟子ジョー・ヘンダーソンのデビュー盤「ページ・ワン」に続き、第2作にも参加。ジョーヘンにアンドリュー・ヒルは分かるが、ドーハムにヒル?と思って聞くと、ヒルのバッキングが意外に普通なので驚くが、やはりソロになると個性的だ。5曲中3曲がドーハム作なのだが、ブルーボサやウナマスのようなキラーチューンと思われる曲がないのが残念なところ。演奏はとてもいい。(hand)
Kenny Dorham(tp),Eric Dolphy(as,fl,bcl),Joe Henderson(ts),Andrew Hill(p),Richard Davis(b),Tony Williams(ds)
ジョーヘンのリーダー盤「アワ・シング」ではおとなしめだったヒルだが、自己リーダー盤では本領発揮だ。ドルフィも加わりはっちゃけた盤だ。ドルフィーの「アウト・トゥ・ランチ」の冷たい感じは苦手だが、この盤は熱く燃えていて好感が持てる。ドーハムは、セシル・テイラーとの共演経験もあり、フリー寄りの要素も持つ新主流派メンバーとの共演もあまり苦とせずこなしていると思う。さすが単なるバッパーではない。(hand)
Kenny Dorham(tp),Joe Henderson(ts),McCoy Tyner(p),Richard Davis(b),Elvin Jones(ds)
愛弟子ジョーヘンの第3作に共演。マッコイ・タイナー、エルビン・ジョーンズなどコルトレーンのリズム隊が参加。色合いとしては、いわゆる新主流派的な私の苦手な冷たいメタリックな感じの盤になってくる。こうなるとドーハムもほのぼの感が消えフレディ化するしかなくなる。この路線を突っ走るジョーヘンとはこの盤でお別れすることとなる。アナログA面に当たる①②は特にその傾向が強く、B面に当たる③④⑤は比較的親しみやすい。①②③はジョーヘンの曲、④⑤はドーハムの曲ということもあると思う。④ショート・ストーリーは、4か月前のコペンハーゲンのライブ盤でもタイトル曲として演奏している(発表は本盤がずっと早い。)。(hand)
ジャズ的な魅力にあふれた作品で、作品の質ではPage Oneをはるかに上回る秀作だと思う。コルトレーンのリズム隊であったMcCoy、Richard、Elvinのトリオはこの当時の最強の布陣だが、この盤では先進性よりもジョー・ヘンダーソンの情感のある魅力に合致している感がある。そこによりそうドーハムの違和感なく融合しているので、無機質な前衛性はなく味わいのある一枚になっている。私のような保守的な耳にも馴染みやすい味わいのある演奏だ。(しげどん)
1. In 'N Out
2. Punjab
3. Serenity
4. Short Story
5. Brown's Town
⑨:Dizzy Gillespie,Kenny Dorham(tp),Lee Konitz(as),C.C. Siegel(b-tb),Billy Taylor(p),Tommy Potter(b),Rudy Collins(ds)
パーカーの死後10周年ライブ。ドーハムの参加はラスト1曲⑨メドレーのみ。ただ、12分近い長尺なので、聞き応えのあるドーハムのいいプレイが聞かれる。音もいい。(hand)
Barry Harris(p),Paul Chambers(b),Billy Higgins(ds)
①③④⑥:Kenny Dorham(tp),Charles McPherson(ts),Pepper Adams(bs)
バド・パウエルが開拓し、作り上げたバップ・ピアノの正統的な後継者といえばこの人、バリー・ハリスだ。この盤は特に、バドの「アメイジングVol.1」の雰囲気を感じる盤だ。ドーハムは晩期ながら、ファッツ・ナヴァロ的なバッパーになっている。チャールズ・マクファーソンが珍しくテナーを吹いている。(hand)
秋吉敏子(p),Kenny Dorham(tp),Lew Tabackin(fl,ts),Ron Carter(b),Mickey Roker(ds)
和のテイストのあるハードバップだ。個人的に好きかどうかは分かれると思う。秋吉のピアノがすごいのはわかる。渡米数年で頭角を現わし、一流メンバーをサイドに迎えてリーダーライブをしているだけでもすごいことだ。ドーハムはやはり⑦黒いオルフェでいい味を出している。後に秋吉の夫となるタバキンが参加していて、フルートは和のテイストがあるが、テナーは白人ジョーヘンという感じで、秋吉サウンドに合っているかは微妙だ。(hand)
先輩格のドーハムを従えての秋吉敏子の堂々のライブ。和田誠のジャケデザインもいい感じだ。ただしライブの割に3分前後の短い曲が多くソロを味わうにはやや不満か。ドーハムに焦点を当てた「黒いオルフェ」では、枯れた味わいのドーハムのソロが堪能できる。(しげどん)
Cecil Payne(bs,as),Kenny Dorham(tp),Wynton Kelly(p),Wilbur Ware(b),Albert Heath(ds)
晩年のドーハムが、セシル・ペインのリーダー盤に10年数ぶりに客演。タイトルから精神性の高い、スピリチュアルな盤だと思って聞くと、1曲目は当たっているが、ジャズロックの時代のポップさもある不思議な盤。不器用そうに見えて意外と器用なのがドーハム。うまく適合している。(hand)
①②:Don Cherry(tp),Julian Priester(tb),Clifford Jordan(ts),Wynton Kelly(p),Wilbur Ware①左,Richard Davis(b),Al Heath(ds)
③④:Kenny Dorham(tp),Julian Priester(tb),Clifford Jordan(ts),Wynton Kelly(p),Wilbur Ware③左,Richard Davis(b),Ed Blackwell左,Roy haynes右(ds)
どちらかといえば、サラリとした口当たりの盤を作ってきたクリフ・ジョーダンが急に濃厚な盤を作った感じだ。ジョーダンの名曲①ヴィエナは、オーストリアではなく、雰囲気としては南米、アルゼンチンを感じる。時代のせいか、本人に何かがあったのかわからないが、これ以降、レコード業界とは別に、ファンの間ではビッグ・ネームの仲間入りした感があるジョーダンだ。ドーハムは後半2曲のみの参加で、あまり体調が良くなくなっていた時期の演奏だが、前半のドン・チェリーとともに後半の重要なトランペットのソロイストとして活躍する。この後、亡くなるまでの録音は、翌70年のパーカーのメモリアル・コンサートでの録音だけになる。(hand)
②④:Kenny Dorham(tp),Ray Nance(tp,vln),Joe Daley(tb),Richard Abrams(p),Rufus Reid(b),Wilbur Campbell(ds)
パーカーの生きていれば50歳の記念ライブ。ドーハムの参加は、②ジャスト・フレンズ、④サマータイムの2曲のみ。その他は、デクスター・ゴードン、リー・コニッツ、エディ・ジェファーソンがリーダー。ドーハムはリーダーとして登録されてはいるものの、トランペットの先輩、エリントン楽団の名手、レイ・ナンスとの共演で、ナンスのトランペットとバイオリンに花を持たせている。音はアナログ起こしのようだ。(hand)