ケニー・ドーハムの主要リーダー作の続きです。
このページでは60年代のドーハムを取り上げています。
60年から64年の録音までは、愛弟子ジョー・ヘンダーソン作品への客演なども含め充実した作品を残しています。
おそらく彼の生涯最大のヒット作になった「ウナ・マス」、北欧での一連のライブ記録、いずれもおすすめ盤に値する優れた作品です。
ヒット作 ウナ・マス 1963年
新宿JAZZ談義の会:Kenny Dorham ケニー・ドーハムCDレビュー 目次
Kenny Dorham(tp),Charlie Davis(bs),Steve Kuhn(tp),Butch Warren(b),Buddy Enlow(ds)
ジャロほどではないがやはりマイナーなタイム盤が2枚続く。①A Waltzは、少々ローチ=ブラウン風。②Monk's Moodは、バリサクがいい感じのバラード。その他は、あまり印象に残らない。 若きスティーブ・キューンも特段目立っていない。(hand)
Kenny Dorham(tp),Jimmy Heath(ts),Kenny Drew(p),Jimmy Garrison(b),Art Taylor(ds)
ジェローム・カーンの名曲集にしてスィングジャーナルのゴールド・ディスクにもなっていた名盤だ。ドーハムもジミー・ヒースも唄物はうまいので、演奏としてはハイレベルな名演だ。ドーハムの魅力はオリジナル曲を含めたバンドとしての音作りにもあるので、強い推薦盤にはしなかったが、聴き込む味わいがある作品だと思う。(しげどん)
バリサクに変わりテナーのジミー・ヒースが参加。この人、うまいし、音もきれいなのだが、魅力が少し欠けていると思う。ハメを外さない平均点プレーヤーなのだと思う。(hand)
Kenny Dorham(tp),Hank Mobley(ts),Kenny Drew(p),Paul Chambers(b),Philly Joe Jones(ds)
ホィスル・ストップとは通過列車が多い小駅の事。ほかの曲も彼の生まれたテキサスの思い出と重ねたストーリー性のある企画を狙った1枚で、こういう企画性がドーハムの単なるソロイストとは違う面白い点だ。曲はすべてドーハムのオリジナルで、特に情景描写的な意図は強くは感じないが、わりと地味な印象の曲が多いので、このあたりは好みが分かれるところかもしれない。しかしドーハム、モブレー、ドリューと、各メンバーのソロはなかなか味わい深く、特にモブレーの個性はドーハムの持つ詩情にマッチしていると思う。じっくり聴き込むと良さがわかるタイプの作品だ。最後の1分曲「ドーハムの墓碑銘」は意味深だが、これで終わる点もコンセプトアルバムっぽい。(しげどん)
25年くらい前にアナログで買ったこの盤。当時、特にいいとは思わなかった。今、聞いてどうか?やはり特にいいと思えない(笑)。ただ、モブレーが割といいプレーをしているのはわかった。ドーハムも、リバーサイドの後、弱小レーベル2社を経た後に久々のブルーノート復帰は嬉しそうに聞こえる。他のメンバーも悪くない。多分、イマイチなのは、曲ではないか?と思う。そこで改めて、“いいジャズ”とは何だろうと考えた。いい曲(心に残るメロディ。アレンジも含む。)=「名曲」と、いいミュージャン(演奏技術だけでなく、心に訴える演奏ができること。)によるいい演奏(その日の体調、精神状態で発現するもの。ミュージャン同士の相性も含め重要。)=「名演」、ではないだろうか?過去の評論家さんの中には、ジャズでは曲は素材に過ぎない。大事なのは演奏(アドリブ)だ、と言っていた人もいるが、やはり名曲・名演が大事だと思う。(hand)
Kenny Dorham(tp),Jackie McLean(as),Walter Bishop(p),Leroy Vinnegar(b),Art Taylor(ds)
マクリーンとの双頭バンド結成とされている。ドーハムには、ボヘミア、バルネに続くリーダー・ライブ盤。マクリーンはなんと初ライブ盤だ。メロディ・メイカーのマクリーンと組んだからか曲が急に良くなる。相性もかなりのものだ。①アスはその後、タイトルがウナマスと変わる曲。なかなかカッコいい。ドーハム抜きのマクリーンの⑤ラバー・マンも、デビュー盤以来だが泣かせる演奏。ライブのせいか、スタンダードの割合が高いのもうれしい。双頭と言いながらジャケ写がドーハムだけというのは、日本人的には??だ(笑)。(hand)
マクリーンとのコンビニよる激しくカッコイイライブアルバムだ。マクリーンの作品として評価してもかなり上位にランクされてもよい作品だと思う。冒頭の「US」は、ウナ・マスと同じ曲で、後年ブルーノート盤で再演されたが、この作品のほうがライブらしい激しさがあって好きだ。(しげどん)
ケニードーハムとジャッキーマクリーンの共演アルバム。息の合ったコンビで、出来栄えも素晴らしく、アップテンポのノリの良さを感じることができるライブだ。ウォルタービショップジュニアのピアノとルロイヴィネガーのベースの快活な導きも、良い添加剤となり、心地よい仕上がりとなった。あとは、ドーハムのno two peopleのミュートトランペットもなかなか魅力的だ。(ショーン)
Kenny Doham(tp),Jackie McLean(as),Bobby Timmons(p),Teddy Smith(b),J.C.Moses(ds)
メラニーは、マクリーンの代表作「レット・フリーダム・リング」(1962年3月19日)の組曲的な名曲メロディ・フォー・メロネーと同曲で、その1カ月後(1962年4月15日)再演であるなど、演奏内容はマクリーン性が濃くなった気がする。ただ、タイトルからはマクリーンが消えて、ドーハムの単独リーダー作の位置付けだ。というか、ジャケ表面から文字が消えた(笑)。マクリーンがブルーノート所属ということもあるのかもしれない。(hand)
題名曲は、闘牛士(マタドール)という名の通り、4分の5拍子という独特のリズムが荒々しさと永遠に続く緊張感を与えており、ユニークで大変面白い。次に続くメラニー3曲も創作性の高い意欲作で、特にジャッキーマクリーン、ボビーティモンズとケニーの3人の持ち味がそれぞれ発揮されたアドリヴプレイは聴き応え十分。一転してB面のポピュラー感もまた良い。JAZZは決して難しくなく、素直に音に身を任せて楽しめば良いのだという事が体感できる好アルバムだ。(ショーン)
このアルバムが昔から名盤扱いされていたが、私にはとっつきにくい作品。私はいまだにこの盤の良さが理解できないのです。(しげどん)
Kenny Dorham(tp),Joe Henderson(ts),Harbie Hancock(p),Butch Warren(b),Anthony Williams(ds)
タイトル曲①ウナマスは、ジャズロックにカテゴライズされるのかもしれないが、どちらかといえばラテン風の曲だ。ドーハムの早過ぎる晩年を盛り立てるテナー、ジョー・ヘンダーソンの初登場だ。ジョーヘン自身もドーハムに活用されて人気が出ていく。ジョーヘンのウネウネした蛇のようなテナーは以前は苦手であったが、今は苦手という程ではなくなった。ジャズロックを得意とする若手ハンコックにより、引き締まった盤に仕上がっている。17歳のトニー・ウィリアムスのドラムは天才は分かるが、好みではない。多分、モダンジャズから次の時代に変わる感じがするのだと思う。63年4月録音だが、その後の60年代を先取りしていて、サイドワインダー(63.12)とリカード・ボサノバ(65.6)の中間くらいの印象の曲だ。②以降の曲も全体が似たトーンで作られており、アルバムとしての統一感はある。(hand)
聴きやすいいい曲が揃っていてなじみやすい作品で、人気の名盤としておすすめできるアルバムだ。60年代的なロックテイストも入った作品のようでもあるがジャズらしい芯の太さがあり、ハービー・ハンコックのソロも、ジャズファンじゃない人も巻き込まれるような魅力がある。このすぐ後にジョー・ヘンダーソンの「ペーシ・ワン」が吹き込まれたが、姉妹盤のような作品で、どちらもポピュラーなヒット要素のある魅力的な作品だ。(しげどん)
ピアノにハービーハンコック、テナーサックスにジョーヘンダーソンを迎えて、ドーハムが小粋に吹きまくるアルバムタイトルのUNAMASは、スペイン語で「もう一回」という意味だが、その名の通りもう一回聴きたくなる麻薬的で癖になるリズムだ。straight aheadでは、各楽器がピタッと合って曲が盛り上がる感覚がとても気持ち良い。ハービーハンコックの「合いの手ピアノ」がポイントゲッターだ!(ショーン)
Kenny Doham(tp),Rolf Ericson(tp,flh),Tete Monteliu(p),Niels Pedersen(b),Alex Riel(ds)
ドーハムの死後発掘のスティープルチェイス盤2枚のうちの1枚で1980年発売。コペンハーゲンのカフェモンマルトルでの1963年12月5日のライブで、海賊ではなく音はいい。トランペットのベテラン、ロルフ・エリクソンとテテ・モントリューなどヨーロッパ選抜メンバーとの共演で、ドーハムは気持ち良さそうに吹いている。タイトル曲Scandia Skiesは、この日のために作ったのかもしれない。「黒いオルフェ」は、英文解説をなんとか読んだら、哀愁のあるソロはドーハムではなくエリクソンのようだ。(hand)
とても力強くいい感じのライブの好演だ。共演者は現地ミュージシャンだが、そうは言ってもデクスター・ゴードンの諸作でも有名な超一流どころ。力強い演奏でリズムセクション陣もソロをバッチリとっていてむしろドーハムが押され気味に感じる場面もある。(しげどん)
Kenny Doham(tp),Allan Botschinsky(flh),Tete Monteliu(p)Neils Pedersen(b),Alex Riel(ds)
コペンハーゲンのカフェモンマルトルでの1963年12月19日のライブで1979年発売。この日は、リズム隊は前作と同じで相方のトランペット(フリューゲルホルン)が現地若手のアラン・ボッチンスキーに変わっている。ウナマス後だが、ライブのせいか、2枚ともジャズロックはやっていなくて、4ビート派には好ましい内容だ。①ショートストーリーは、チューンアップに似た曲。演奏はなかなかいい感じ。メンバー全員がノっている。前作に続き再度の③黒いオルフェは、本盤ではドーハムのソロのようだ。甲乙つけがたいオルフェだ。(hand)
カフェモンマルトルでの力強さあふれる好ライブ盤。手慣れたオリジナルと有名スタンダードの選曲が魅力的だ。あまり企画性は意図せずに、とにかくソロイスト=ドーハムの味をだすべくリラックスしてのライブ演奏なので、文句なく元気に楽しめて、トランペッターとしてのドーハムを味わえる。リズム陣もヨーロッパ最強の名人級。相方にフリューゲルホーンを選ぶ意図は疑問だが。(しげどん)
Kenny Doham(tp),Sahib Shihab(fl,Bs),Lars Sjosten(p),Bjorn Alke(b),Bosse Skoglund(ds),Goran Lindberg(p),Goran Pettersson(b),Leif Wennerstrom(ds)
スウェーデンでの1964年1月の2セッションで、ドラゴンからの2019年発掘盤だ。正規盤に分類してもおかしくないくらい音も内容もいい。①~③にサヒブ・シハブが入っている以外は地元ミュージシャンだ。①ショート・ストーリーのアレンジがとてつもなくかっこよくてハードボイルドだ。特に現地ベースの活躍とシハブのバリサクもいい。シハブのアレンジではないかと推測する。①〜④と⑤〜⑩の3日違いの2ライブを放送局が収録したものなので音がいい。④ショート・ストーリーはワン・ホーンで①と比べるとさびしい。後半は、全てワン・ホーンで、まずまずの出来だ。(hand)
発掘音源だが、演奏はハリのある優れた作品。特に優れているのは前半の3曲で、サヒブ・シハブのバリトンが活躍するのだが、これが力強く演奏を魅力的なものにしている。地元ミュージシャンのリズムセクションもまずまずの好演だ。(しげどん)
1964年スウェーデン、ストックホルムでの2回に渡るセッション。前半3曲は伸び伸びとしたKenny dorhamのトランペットと重戦車級のSahib shihabのバリトンサックスが、荒々しく絡み、ハードバップを全身で感じることができる。Bjorn alkeのベースラインが、なかなか攻撃的でgood!後半5曲は、ドーハムのメロディアスでシリアスな部分が際立つ。剛柔しっかり押さえられたメリハリのあるアルバムに仕上がっている。両日ともに演奏されたshort storyを聴き比べると面白い。(ショーン)
Kenny Dorham(tp),Joe Henderson(ts),Tommy Flanagan(p),Richard Davis(b),Albert Heath(ds)
ドーハムのラスト・リーダー盤。①の最初のハイノートが少しふらつくのがやや残念だが、盤全体としては悪くはない。この時期のテナーはジョーヘンで、リーダー盤3枚にドーハムは客演している。リチャード・デイビスのベースが作品に深みを出しており、曲も悪くない。エキゾチックな感じのある、正統派ジャズだ。8年後にドーハムは48歳で病没するが、この間はサイドとしての録音が数枚あるだけだ。体調があまり良くなかったのだと思う。最後までアンダーレイテッドだったドーハム。本国アメリカではミュージシャンには聞き継がれているようだが、人気はあまりなさそうだ。せめて日本では聞き続けていきたい。(hand)
全4曲と1曲が長めだがそれぞれ変化に富んだ面白い曲調の作品が続く。タイトル曲はノン・ビートで始まりクラシック的な演奏を想像すると途中からノリのいい演奏になるがリズムは複雑だ。ほか二曲も変わった雰囲気ながらよくスイングする曲。ケニー・ドーハムは単なるソロイストではなく音楽に造詣が深いクリエイターだったのだ。ボサノバ・ロック調のジョー・ヘンダーソンの曲もヒット要因がある作品。4曲ともに単純なセッションではなく工夫が散りばめられた内容の濃い作品と言える。(しげどん)
ケニードーハムのラストアルバム。高らかに吹き誇るトランペットの響きにジョーヘンダーソンのテナーが渋く呼応する。ピアノはトミーフラナガンで、情感という名のスパイスを加えて、アルバムに気品を与えている。1964年9月に40歳の時にこの最期のアルバムのレコーディングをし、8年後の1972年12月に48歳という若さでドーハムは亡くなった。そういう思いで聴き込むと、なんともリリカルで哀愁に溢れる演奏ばかりだ。(ショーン)
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