・新宿ジャズ談義の会 :ジョン ルイス CDレビュー 目次
ルイスの晩年の時期にあたります。完全にクラシックに接近した「ゴールドベルグ・ヴァリエーション」からビッグバンド、アメリカン・ジャズ・オーケストラなど、最後まで精力的に活動し、最後は初期と似た編成のジャズに戻ったのもうれしく感じます。
1986.11.11
Philips
おすすめ度
hand 評価不能
John Lewis(p), Mirjana Lewis(harpsichord)
「プレリュードとフーガ」でぎりぎりまでクラシックに接近したルイスが遂に完全クラシックの領域に踏み込んだ盤。奥さんのクラシックピアニスト、ミリヤナ・ルイスとの共同リーダー盤だ。ミリヤナはここではハープシコードを弾いている。パート2も出たということは売れたのだろう。これも日本の児山紀芳プロデューサーにより実現した盤だ。ハープシコードではなく2人ともピアノだったら大丈夫だったかもしれないが、ルイス好きの私もハープシコードは耐えられなかった。(hand)
1987.3
EmArcy
おすすめ度
hand ★★★★
Benny Carter(cond,arr,as), John Lewis(p:2,4,11,16, cond)
John Eckert, Marvin Stamm, Bob Millikan, Virgil Jones(tp),
Britt Woodman, Eddie Bert, Jack Jeffers, Jimmy Knepper(tb),
Bill Easley, John Purcell(as,fl), Loren Schoenberg(ts), Lew Tabackin(ts,fl),
Danny Bank(bs,b-cl)
Dick Katz(p:1,3,5-10,12-15), Remo Palmier(gr),Ron Carter(b), Mel Lewis(ds)
ベニー・カーター(1907-2003)の晩年の人気盤。ジョン・ルイスのアメリカン・ジャズ・オーケストラの初作でもあることは、あまり知られていないと思う。ベニー・カーターはジャズ草創期からチョコレート・ダンディーズを率いて活躍するなど非常に寿命の長いミュージシャン。スイング期には、ジョニー・ホッジス、ウィリー・スミスとともに三大アルトと呼ばれたが、カーターはアルトだけでなくトランペットも吹いていた。作曲も得意で、ホエン・ライツ・アー・ロウ、が有名だ。モダン期にもインパルスやパブロに多数の盤があり、この盤は95歳で亡くなったカーターの80歳の盤だ。内容は、典型的なモダンビッグバンドで、コルトレーンスタイルのルー・タバキンのテナーソロも聞かれる。カーター自身はアルト、トランペットと指揮をしている。モダンなスタイルではないが違和感もない。ルイスは、ピアノ3曲(残り12曲はディック・カッツ)と音楽監督として参加している。(hand)
1987.10.2
EmArcy
おすすめ度
hand ★★★☆
John Lewis(p), Marc Johnson(b), Howard Collins(gr)
クラシック系の録音が続いた後の東京録音のジャズ盤。副題がプレイズMJQだが、ジャケも含めてクラシック系盤の余韻が残っている気がする。売れた路線で児山プロデューサーによる日本制作が続いたのだと思う。マーク・ジョンソンのベース、ハワード・コリンズのギターというクラシックを一緒にやったメンバーで、しかもドラムレスなのもその理由だと思う。(hand)
1988.8.22
Philips
おすすめ度
hand ★★★☆
John Lewis(p), Marc Johnson(b), Howard Collins(gr), Joel Lester(vln), Lois Martin(viola:4), Scott Nickrenz (viola:8)
ジャズファンにも受け入れやすいクラシックも、何枚も聞いているとさすがにつらくなってくる。ただ、Vol.3は楽曲の番号が若い3番が入っているせいか、Vol.1 に近いさわやかな聞きやすさがあると思った。(hand)
John Lewis(cond,p:6,15),
John Eckert, Marvin Stamm, Robert Millikan, Virgil Jones(tp),
Benny Powell, Eddie Bert, Jimmy Knepper(tb),
Norris Turney(ss), John Purcell, Norris Turney(as), Bill Easley, Loren Schoenberg(ts), Danny Bank(bs),
Bill Easley, Danny Bank, John Purcell, Norris Turney(cl),
Howard Collins(gr), Dick Katz(p:1-5,7-14), John Goldsby(b), Mel Lewis(ds)
アメリカン・ジャズ・オーケストラという名でオーケストラU.S.A.と名前は似ているが、全くタイプの違うオーケストラだ。U.S.A.はサードストリームの演奏を主眼としていたが、アメリカンの方は逆にあまりルイスの個性を感じない。聞いていると、復活したエリントンバンドかと思ってしまう。ルイスはピアノは2曲のみで、13曲はディック・カッツが弾いている。ルイスは指揮に徹しているようだ。アメリカン名義の盤は3枚で、他に初盤ベニー・カーター「セントラル・スケッチ」と第3作「プレイズ・ジミー・ランスフォード」があり、ルイスの個性を生かしてというより、オリジナルの個性を現代に蘇らせるバンドなのかもしれない。(hand)
ジョン・ルイス指揮によるオーケストラでのエリントン集だが、オリジナリティはなく、ほぼエリントンの演奏そのままのコピーという感じである。企画の意図がよくわからない。アレンジもそのままで、ソロのフレーズまであまり変化がないようだ。別に演奏は悪くはないが、これを聴くならエリントンのオリジナルを聴くべきであろう。(しげどん)
John Lewis(p.arr), Christian Escoudé(gr), Michel Gaudry(b:3-5), Pierre Michelot(b:1,2,6,7), Daniel Humair(ds), Sasha Lewis(as:1,4,7)
児山プロデューサーとのコラボでジャズ濃度が最も高まった盤。サッシャ・ディステルとの名盤「アフタヌーン・イン・パリ」の続編を意識したようなタイトルと内容。ギターはディステルではなくクリスチャン・エスクーデだ。サックスはバルネ・ウィランのテナーではなく、ルイスの子息サッシャ・ルイスのアルト。サッシャのアルトは悪くはないがジャズのアクのような部分は弱い。(hand)
1989.12.4
Philips
おすすめ度
hand ★★★☆
John Lewis(p), Marc Johnson(b), Howard Collins(gr), Anahid Ajemian(vln), Robert Dan(viola)
ルイスの主導したサード・ストリーム・ミュージックは、評判にはなったし、評価もされたと思うが、実際に愛聴したファンは少なかったと思う。ジャズにはビッグバンドという大編成のフォームがあるのにあえてクラシックのオーケストラを使ったり、スイングしなかったりするのは、ジャズファンにはストレスになる場合が多いと思う。このバッハの「プレリュードとフーガ」プロジェクトは、発想を変え、クラシックの楽曲そのものに飛び込み、曲そのものを4ビートにしてスイングさせるのではなく、元曲にジャズのアドリブを追加して展開していく、しかもソロと小編成に限るという方法が功を奏したと思う。Vol.4は、楽曲の番号が後半のものが多く、物悲しい雰囲気のものが多いと感じた。(hand)
1990.9.10
EmArcy
おすすめ度
hand ★★★☆
John Lewis(p)
児山プロデューサーとの最終作。ルイスのヒット曲を中心としたソロピアノ集。録音の響きも教会風、ピアノ演奏もあまりスイングせずにクラシック風でバッハ盤の流れを感じる。イン・パリ曲で、アフタヌーン・イン・パリ、ミッドナイト・イン・パリに続き、モーニング・イン・パリも入っている。(hand)
1991.2.18
Musicmasters
おすすめ度
hand ★★★☆
John Lewis(p:11,12, cond)
Byron Stripling, John Eckert, Marvin Stamm, Bob Millikan, Virgil Jones(tp),
Benny Powell, Dennis Wilson, Eddie Bert, Jimmy Knepper(tb),
Bill Easley(1,2,4-6,10-12), Danny Bank, Jerome Richardson(3,7-9), Jerry Dodgion, John Purcell, Loren Schoenberg(reeds),
Dick Katz(p,celesta), Howard Collins(gr), John Goldsby(b), Dennis Mackrel(ds), Doc Cheatham(vo:10)
アメリカン・ジャズ・オーケストラの第3作で最終盤。第2作のエリントンに続き、今回はジミー・ランスフォード集。エリントン集をやるバンドは多いがランスフォードは珍しい。埋もれてしまいそうなスイングジャズの遺産を甦らせるプロジェクトなのかもしれない。今回もルイスはピアノは2曲だけでディック・カッツに任せ、指揮に専念している。クラシック好きのルイスだが、幼い頃はスイングビッグバンドが好きだったのだろうと思わせる内容だ。(hand)
Disc 1 & 2①-⑥ 1994.11.13
Disc 2⑧-⑩
1984.10.22.
Disc 2⑪
1985.12.25
Jazzette
おすすめ度
hand ★★★☆
Disc 1①-⑤:Zagrev Jazz Quartet(ZJQ)+Zagrev Solisti(Strings Orchestra)
⑥:ZJQ+Jouh Lewis
Disc 2①-⑥:Duo(John Lewis+Davor Kajfeš)
⑦:Willis Conover(MC)
⑧-⑩:ZJQ
⑪:Duo(Boško Petrović+Neven Frangeš)
John Lewis(p,cond), Neven Frangeš(vib),
ZJQ:Boško Petrović(vib), Davor Kajfeš(p), Miljenko Prohaska(b), Ratko Divjak(ds),
Zagrev Solisti:Anđelko Krpan, Augustin Detić, Ivan Kuzmić, Ivan Martinec, Jože Haluza, Tonko Ninić, Vladimir First, Vladimir Sverak(vln),
Ivan Mimohodek, Marin Dujmić, Marko Pilepić(viola),
Ernest Zornjak, Zlatko Rucner(cello), Mario Ivelja(b)
かつてアルバート・マンゲルスドルフとの「アニマル・ダンス」にザグレブ・ジャズ・カルテット(ZJQ)の演奏が1曲入っていた。1991年にユーゴスラビアから分離独立したクロアチア。その首都となっているザグレブとルイスの関係は、ミリヤナ夫人の故郷がクロアチアというのが理由だと思われる。この2枚組は、ザグレブ・ジャズ・ガーラというライブイベントの記録だ。Disc1は、久しぶりに私の苦手なストリングススの入ったクラシックのオーケストラによるサードストリームだ。ただ、ルイスのピアノ演奏自体は珍しくとてもブルージーかつジャジーでスインギーだ。バイブのボスコ・ペトロビックも、多少、ミルトを思い出させるプレイをしている。Disc2は、ソロピアノとやはりまたZJQが入っている。MJQがモダンになった感じがする。(hand)
1996.6
Music Bazar
おすすめ度
hand ★★★★
しげどん ★★★★
John Lewis(p), Marc Johnson(b), Abert "Tootie" Heath(ds)
1996年のマサチューセッツ州レノックスのタングルウッド・フェスでのトリオ・ライブ。マーク・ジョンソンとアルバート・トゥーティ・ヒースがサポートしている。ヒースはどちらかというとドタバタした感じのドラマーと思っていたが、ここではルイスに合わせシンバル中心の落ち着いたドラムを聞かせている。ルイスはルイス的ではあるが精一杯元気に弾いているような印象を持った。悪い印象ではない。
※この盤は、もしかしたらネットでのMP3での公表のみで、ブツとしてのCDはない作品かもしれない(現在、ネットから消滅。海賊音源で消された可能性あり。)。(hand)
ピアノトリオによるライブ盤。意外とピアノトリオの演奏が少ないので貴重だ。海賊盤的な音源で、詳細がわからず入手も困難な感じだが、内容はなかなか良い。録音はエコーがかかったようなホールに聴こえる。リラックスして自由に弾いている雰囲気がなかなか味わい深い。(しげどん)
1999.1.12-15
Atlantic
おすすめ度
hand ★★★★☆
しげどん ★★★☆
John Lewis(p)
純度100%のルイスのソロピアノという印象の盤。遺作と言っても良い「エボリューション」二部作の第一集。この盤でルイスのソロピアノの良さがやっと理解できたかもしれない。若い頃の「ジョン・ルイス・ピアノ」はとても枯れたピアノに感じた。79歳のこの盤はスタイルは変わらずともとても生き生きとしたものを感じる。それにしても最終作のタイトルが「エヴォリューション(進化)」とは、本人が付けたのかどうかはわからないが、意欲的なタイトルだ。(hand)
ピアノソロアルバム。素描に比べてやや落ち着いた雰囲気で、より内省的な静寂のソロ。よりジョン・ルイスの個性に合った感じのソロ作品。(しげどん)
2000
Atlantic
おすすめ度
hand ★★★★☆
しげどん ★★★★☆
ショーン ★★★★
John Lewis(p), Lewis Nash(ds),
①④⑤⑦-⑨:Howard Collins(gr), Marc Johnson(b),
②③⑥⑩:Howard Alden(gr), George Mraz(b)
遺作とも言える「エボリューション」の第二集。現時点での最終作。こちらはギター、ベース、ドラムの入ったカルテットのライブらしくないライブ盤。他の楽器が入るのでソロの「I」ほど純度は高くないが、3人とも控え目なプレイでルイスの主役度はとても高く、ルイスのエッセンスを集めた盤という印象だ。やはり楽しそうにピアノを弾くルイスを感じる。(hand)
ギターは入っているが、あくまでもリズムセクションとしての役割で、ジョン・ルイスのピアノを味わうアルバム。EvolutionⅡというタイトルだが、続編のイメージはなくて、親しみやすい聴きやすい作品だった。(しげどん)
静かな曲は、ルイスの独壇場。澱みなくメロディアスなルイスのピアノを、ベースとドラムスが支え、シンプルに出来上がっている。大人しい印象なので、もう少し盛り上がる展開が欲しい。(ショーン)
・新宿ジャズ談義の会 :ジョン ルイス CDレビュー 目次