精力的にリーダー録音を進めた時期ですが、その中で児山紀芳プロデューサーとの出会いはルイスに大きな変化をもたらしたと思います。特にバッハの「プレリュードとフーガ」に独自のアドリブを追加したというのは、画期的な取組だったと思います。
・新宿ジャズ談義の会 :ジョン ルイス CDレビュー 目次
・John Lewis CDリーダー作④・・・このページ
1981.4.12
Finesse
おすすめ度
hand ★★★
Nancy Harrow(vo), John Lewis(p,arr), Marc Johnson(b), Connie Kay(ds),
Howard Collins(gr), Frank Wess(fl), Joe Kennedy(vln)
日本での人気はヘレン・メリルと比べるとかなり見劣りするが、ボーカルの実力という意味では見劣りしないナンシー・ハーロウを迎えたボーカル盤。もちろん歌と伴奏の盤ではあるのだが、ボーカルのバックでルイスのピアノトリオだけでなくフルートとバイオリンがずっと演奏するアレンジが多いのはあまり気持ち良くない。(hand)
John Lewis(p), Putte Wickman(cl), Red Mitchell(b)
スウェーデンのクラリネット奏者プッテ・ウィックマン、スウェーデンに定住してしまったベースのレッド・ミッチェルとのルイスのトリオ録音。当初、米フィネスから「ザ・ジョン・ルイス・アルバム」として発売され、日本では元タイトルとジャケはそのままに「ラウンド・ミッドナイト」の日本タイトルが帯につけられて発売された。その後、2002年の欧ガゼルからの再発時にはルイスよりもプット・ウィックマンの名が前に出され「ストックホルム’81」にタイトルもジャケも変更されている(ただし、写真はルイスのみ。)。内容はベテラン3人が楽しみながらセッションしている感じで、渋い内容の大人向けジャズに仕上がっている。特に日本語タイトルにもなった⑤ラウンド・ミッドナイト、のクラ演奏は珍しいだけでなく名演だと思う。似たメンバーでの第2作「コペンハーゲン’84」(ガゼル)も出されている。(hand)
プッテ・ウィックマンという人を知らなかったが、1924年生まれのベテランのクラリネット奏者で作品数も多いスウェーデンの重鎮とのことだ。ドラムのいないトリオで演奏されているが、曲は良く知られたスタンダードばかりで、テンポもよくスィングしている。やや保守的な印象の演奏だが、私のような好みには合う安心して聴いていられる肩のこらない作品だ。(しげどん)
クラリネットとベースが語り合うかのように曲は進んでゆく。特にRed Mitchellのベースは素晴らしい。スラー奏法で、感情の昂まりを表現していて、引き込まれる。対してルイスは脇役に徹しており、存在感が無い。(ショーン)
1981.8.26
East World
おすすめ度
hand ★★★☆
秋吉敏子プロデュースによりルイスとルー・タバキンのデュオ。日本の東芝EMIのジャズレーベル、イースト・ワールドからの盤。タバキンは秋吉ビッグバンドのソロイストとして知られる。コンボ盤は多数あるようだがあまり知られていない。テナーとフルートの持ち替えも多いので、焦点が定まりにくい気がする。どちらの楽器もとても上手いと思うが、テナーのアクのようなものが弱いと思う。私個人は1枚の盤の中での持ち替えはあまりない方が好みだ。ルイスのピアノは、比較的ジャズ度が高く、好感が持てる。(hand)
1982.5.25
Finesse
おすすめ度
hand ★★★
John Lewis(p,arr), Marc Johnson(b), Shelly Manne(ds),
Howard Collins(gr), Frank Wess(fl), Joe Kennedy(vln)
「アルバム・フォー・ナンシー・ハーロウ」と似た印象の盤。メンバーもハーロウが抜け、コニー・ケイがシェリー・マンに変わっただけ。ボーカルはないが、フルートとバイオリンが絡み合って活躍する。楽器同士のオブリガートはボーカルの時ほどは気にならないが、私好みではない。ジャズでのフルートやバイオリンは、ソロイストとして活用しないと、室内楽的になってしまう。(hand)
1982.6.11
Palo Alto
元となったアナログ盤
おすすめ度
hand ★★★★
John Lewis(p) 他
エバンス没後のトリビュート盤にピアニストの1人として参加。全員がソロピアノで各1曲を演奏。アナログは2枚組で14人14曲だったが、日本盤CD化で12人12曲になっている(現在、日本盤は廃盤で、米盤・スペイン盤が出ているが11人11曲になってメンバーも多少入れ替わっているがルイスは残っている。)。ルイスは、エバンスとあまり関係なさそうなアイル・リメンバー・エイプリルをルイスらしく演奏しているが、ビッグネームなので?カットされなかったのだろうか。(hand)
1982.11.4
Baystate
おすすめ度
hand ★★★☆
John Lewis(p), Bobby Hutcherson(vib), Marc Johnson(b), Connie Kay(ds)
日本のベイステイト(RVC)からの盤。商業主義の色合いの強いレーベルだ。絵ジャケも、ケニー・ドリュー的で私好みではない。ボビー・ハッチャーソンのバイブを加えてMJQの再演を狙ったと思われるニュー・ジャズ・カルテット名義だ。デビューアルバムと帯にあるが、セカンドは出ていない。多分、ルイスの意思ではなく、日本側の意向で始めたので続かなかたったのだと思う。内容は悪くはないが、ミルトのグルーヴがやはり懐かしくなる。再発ジャケはルイスの写真に変わり、絵ジャケよりは多少好ましい。(hand)
1984.1.16
Philips
おすすめ度
hand ★★★★☆
しげどん 評価不能
John Lewis(p), Howard Collins(gr), Marc Johnson(b), Joel Lester(violin), Lois Martin(viola)
遂にクラシック録音かと思ったが、かろうじてジャズ度は残っていた。バッハのプレリュードとフーガが交互に収録されていて、プレリュードはルイスのソロピアノで、フーガはマーク・ジョンソンのベースとハワード・コリンズのギター、そしてバイオリンやビオラなどが少数加わるという内容。日本の児山紀芳プロデューサーにより実現したプロジェクトのようだ。ソロピアノはジャック・ルーシェのバッハとは違いスイングはしないが、なぜかジャズの香りがする。フーガも当然スイングはしないし、バイオリンやチェロは完全クラシックだし、元曲を知らないので、ピアノもベースとギターも譜面どおりに弾いていると思っていたが、児山紀芳著「ジャズのことばかり考えてきた」によればバッハに溶け込むアドリブらしい。素晴らしい溶け込みようだ。スイングしなくともジャズの香りが漂うのは、失礼とは思うが、ルイスのピアノが上手過ぎないのも良かったのだろう。Vol.1が発売された当初、クラシックが苦手の私がよく聞いた記憶がある。多分、私と同じようなジャズファンがたくさんいたのだろう。かなりヒットしたと思う。Vol.1と2が先に録音され、3と4は少し遅れて録音された。プレリュードとフーガの番号順には収録されていなかった。どういう理由かはわからない。コンプリート盤4枚組は、通し番号順にして発売されている。Vol.1はよく聞いた私だが、2以降に聞き進むことはなく、2〜4は今回、初めて聞いた。続編もいい内容とは思うが、それを聞く前に普通のジャズ盤を聞いてしまい、2以降を聞くことは今後もあまりなさそうだ。(hand)
音楽としてはさわやかで心地よい、良質の価値ある音楽で、このような音楽を好む人も多いと思う。でもこのホームページでは、私自身のジャズファン的な(偏狭な)好みの視点で評価しているので、良し悪しは評価できないのだ。少なくとも一般的なジャズファンがジャズを期待して聴く音楽ではないようだ。(しげどん)
1984.1.16
Philips
おすすめ度
hand ★★★☆
John Lewis(p), Howard Collins(gr), Marc Johnson(b), Joel Lester(violin), Lois Martin, Scott Nickrenz(viola)
Vol.1とほぼ同時に録音されたVol.2、なのだが、Vol.3、4と続けて録音、発売することがこの時点では想定されていなかったのか、Vol.2とは表示されずに独自のタイトル「ブリッジ・ゲーム」と名付けられて発売された。内容は、当然のようにVol.1の続編で、これはこれでいい内容だとは思う。(hand)
1984.7.9
Gazell
おすすめ度
hand ★★★★
Putte Wickman(cl), John Lewis(p), Jesper Lundgaard(b), Aage Tanggaard(ds)
前作「ストックホルム’81」から3年後の「コペンハーゲン’84」。プッテ・ウィックマン、ルイスは同じだが、ベースはイェスパー・ルンゴーに変わり、ドラムにアージ・タンガードが加わり、ライブのせいかリズム隊のせいか盤の印象は元気のいい感じに変わっている。ウィックマンの伸び伸びした演奏が好ましい。ルイスも影響されたのか楽しそうだ。ワンホーン+ピアノトリオの形態なので仕方ないが、前作に比べてウィックマンの主導性が強まり、ルイスはサイドマン気味になったと思う。(hand)
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