・新宿ジャズ談義の会 :ジョン ルイス CDレビュー 目次
1960年代後半からの約10年間は、リーダー録音のなかった時期が続きます。MJO活動に専念したためと思われますが、その後、この時期からは精力的にリーダー盤を録音していきます。日本人の働きかけによって、ルイス自身の後期が充実したものとなっていたことがわかります。
1975.1.13
Columbia
おすすめ度
hand ★★★☆
John Lewis(p,harpsichord), Harold Jones(fl), Gerald Tarack(vln), Fortunato Arico(cello), Richard Davis(b), Mel Lewis(ds,perc)
ピアノトリオにフルート、バイオリン、チェロを加えたセクステットといよりも六重奏という感じのクラシカルな演奏だ。オーケストラU.S.A.の65年の「ソノリティーズ」からでも10年、リーダーとしては62年のアルバート・マンゲルスドルフとの共同盤「アニマル・ダンス」以来13年ぶりとなる。MJQの実質的リーダーとしてこの間精力的に活動し74年末に解散しているので、解散後の自由な中で録音された盤と言える。ここからルイスの後期と捉えることが可能だと思う。後期の特徴は、前期以上にクラシックの色が濃くなるということだろう。ただし、クラシック盤を吹き込むのではなく、よりクラシックに近づいたジャズだ。この盤でもルイスは一部ハープシコードを弾きクラシカル度をかなり高めている。私自身はクラシックのオーケストラは苦手だが、後期ルイスのクラシカルなジャズは必ずしも嫌いではない。ピアノアドリブのジャジーなフレーズと、クラシックにはないジャズベースとドラムのおかげだと思う。ハープシコードはつらい。(hand)
John Lewis(p)
ソロピアノで、ルイスのMJQでのヒット曲やスタンダード、ジャズメンスタンダードを演奏。多少の商業主義(コマーシャリズム)を感じない訳ではないが、レーベルがソニーのせいか比較的上品で、嫌な感じがしない。(hand)
日本で録音されたソロ・アルバムで、アルバムとしての完全なソロ作品はこれが初めてだという。タイトルから想像すると、内省的で知的なイメージのジョン・ルイスのことだから、難解な音楽を想像したが、意外と親しみやすい聴きやすいソロアルバムだ。ジョン・ルイスのオリジナル中心の選曲で、彼の個性である格調あるピアノが味わえる。(しげどん)
クラシックな曲のようなルイスの演奏は、テクニカルで精度も高いが、私的にはいまいち感情移入ができないところがあり、他のメンバーとの競演の方が、ルイスのチャレンジャブルな面が出て良いような気がする。(ショーン)
John Lewis(p), Hank Jones(p:7-9)
ハンク・ジョーンズとのデュオ作品が日本で3枚吹き込まれている。その最初がこの盤。ハンクは明確にバッパーというタイプではないが、ルイスと同様にビバップ時代をともに過ごし、その中で頭角を現したという点ではビバップ学校の同窓生みたいな感じかと思う。年齢はハンクが2歳上だ。76年5月22日にハンクは日本企画でグレイト・ジャズ・トリオを結成し、渡辺貞夫と「アイム・オールド・ファッションド」おり、後期の活躍が始まる直前の時期に当たる。この盤は、ルイスの自作はソロ、スタンダードはデュオで、前半6曲ソロ、後半3曲デュオで構成されている。ピアノ・プレイハウスと題されたコンサートのライブだ。(hand)
Helen Merrill(vo), John Lewis(p), Hubert Laws(fl), Richard Davis(b), Connie Kay(ds)
日本のトリオの企画によるヘレン・メリルとルイスのピアノトリオとの共演。フルートのヒューバート・ロウズが曲により加わる。①ジャンゴ、は詞はなく全面スキャットで、メリルの物悲しい声質と物悲しい曲調がピタリと合って素晴らしい。⑧ハウ・ロング…の多少の明るさがとても明るく感じる。全体にメリルに合った選曲がなされ、盤の統一感はある。(hand)
日本で人気のヘレン・メリルをフィチャーした作品。ルイスの名曲ジャンゴからはじまるが、全編スキャットボーカルで、ヘレン・メリルとしては意外な感じ。正直なところ彼女の個性に合っていない感じがした。ほかは有名スタンダードだが、スローテンポの曲が続き、やや単調に感じる。Alone Togetherあたりから徐々に乗り始める感じだが、ヘレン・メリルの歌を楽しむには、もっとミディアムからアップテンポの曲の割合を増やしたほうが良かったような気がする。ジョン・ルイスの伴奏はさすがにソツがなく、リチャード・デイビスも名人芸だが、バックミュージシャンも一流どころなので、小節交換的な掛け合いなどもいれて、ジャズらしい盛り上げを仕掛けて欲しかった。(しげどん)
1976.12.20
SONY
おすすめ度
hand ★★★☆
John Lewis(p), Michael Moore(b), Connie Kay(ds)
後期のルイス盤は、かなりの割合で日本が絡んでいる。この盤もCBSソニーの録音。ただ、テオ・マセロのプロデュースなので日本的な商業主義はあまり感じずに済んでいる。とはいえ、ピアノトリオでのルイスのヒット曲集なので、ケニー・ドリューのように商業臭は強くはないが、またですか感は多少ある。全体の印象はいい。(hand)
1977.11.2
Columbia
おすすめ度
hand ★★★☆
John Lewis(p) 他
8人のピアニストのソロピアノのオムニバス2枚組LPが現在の2枚組CDになっている。ジョン・ルイスは自作の4曲が収録されている。タイトルはビバップだがルイスのピアノはいつもの感じであまりビバップは感じない。①アフタヌーン・イン・パリは、別テイクが未CD化の「ゼイ・オール・プレイド・ビバップ」(未聴)に収録されている。(hand)
John Lewis(p), Christian Escoudé(gr), George Duvivier(b), Oliver Jackson(ds)
ルイスのピアノトリオに仏ギタリストのクリスチャン・エスクーデを迎えた作品。エスクーデはジャンゴの流れを汲むギターを弾く。ある意味、バリー・ガルブレイス的な繊細さを持ち、ジャンゴ流のヨーロッパを感じる弦の緩い感じのスタイルなので、ルイスには合っている。ただ、全6曲中なぜか4曲しか参加していない。盤により曲順が違う模様。CDは別テイク4曲が追加されている。(hand)
John Lewis(p:Right Channel), Hank Jones(p:Left Channel)
ハンク・ジョーンズとの共演第2作。穏やかそうな2人なので、穏やかな共演かと思うが、意外にもエネルギッシュな感じで2人とも取り組んでいる。ビバップ曲が多いのも元気を感じる理由だろう。(hand)
John Lewis(p), Hank Jones(p:6-11), George Duvivier(b:3-5,11), Shelly Manne(ds:3-5,11)
ハンク・ジョーンズとの共演第3作は、ベース&ドラムも加わってカルテットになった。前作「イブニング」が意外にもエネルギッシュだったのに比べると、リズム隊入りなのに穏やかで、彼ららしい演奏になっている。(hand)
1979.11.29
All Life
おすすめ度
hand ★★★★
しげどん ★★★☆
John Lewis(p)
仏録音のソロピアノ作品。ビバップ同世代のハンク・ジョーンズとの3枚の共演の影響なのか、ルイスのピアノのビバップ度が高まった気がする。選曲のせいもあるかもしれないが、タッチも粒立ちも明瞭になったと思う。(hand)
内容的に優れたソロアルバム。一曲目にサマータイムを入れるのは企画としてどうかと思うが、ジョン・ルイスのオリジナルが多く含まれており、内容的には「素描」に負けない充実度を感じる。(しげどん)
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