ジャッキー・マクリーンの主要作をレビューしています。彼のキャリアは大きく分けてプレスティジと契約していた時代(1957年まで)、ブルーノート時代(1967年まで)、ステープルチェイスへの再起後(1972年以降)に分けられます。このHPでは、すべてのリーダー作を順次レビューしていきます。
マクリーン自身は金の支払いが悪いプレスティジとの契約を「人生最大の失敗だった。」と不満に思っていたそうです。入念なリハーサルを行うブルーノートに対し、ほとんどぶっつけ本番で録音させられるプレスティジのやり方にも、「いい演奏が生まれるはずがない」と言ったといいます。
でもそんな状況でも、意外といい演奏が行われてしまうのがジャズという音楽の不思議なところで、プレスティジ時代の作品は、編集はずさんですが演奏の質は高いものが多く、隠れた名盤が多く存在します。
ジャッキー・マクリーンの主要作品 CD レビュー 目次
→ジャッキー・マクリーンの主要リーダー作1 (Prestige時代)・・・このページ
→ジャッキー・マクリーンの主要リーダー作2(Blue Note前半 Let Freedom Ringなど) へ
→ジャッキー・マクリーンの主要リーダー作 3(Blue Note後半 It's Time など)へ
→ジャッキー・マクリーンの主要リーダー作 4(Steeple Chase時代)へ
→ジャッキー・マクリーンの主要リーダー作 5(最後期 ルネとの共演など)へ
→ジャッキー・マクリーンのサイド参加作 1 (51年~57年 直立猿人など)へ
→ジャッキー・マクリーンのサイド参加作 2(57年~59年 Cool Struttin' など)へ
Jackie Mclean(as),Donald Byrd(tp),Mal Waldron(p),Doug Watkins(b),Ronald Tucker(ds)
快調なマクリーンのデビュー作。ラヴァー・マンを除いて、数年後のマクリーンに比べて、しつこいねっとり感が不足している気はするが、悪くない。(hand)
マクリーンの原点といえるようなデビュー作。スタンダードあり、実験的な曲調のオリジナルあり、ブルースありと粗削りながら後年の作品に現れる要素が網羅されている感じだ。特にオリジナルのブルースは後年のプレスティジ諸作を想起させる。(しげどん)
マクリーン23歳のときの初リーダー作。とにかく音が若い!トランペットのドナルドバードも22歳、最年長のマルウォルドロンでさえ29歳といった20代クインテットだ。完成度はそれなりに高いが、情感、情景が浮かぶような「うま味」^_^は、まだまだ感じられるべくもない。それでも爽やかで元気なマクリーンのアルトと時折見せるバードのマイナーキーの効果的な使い方は、未来を期待させるものがある。(ショーン)
Jackie Mclean(as),Donald Byrd(tp),Elmo Hope(p),Doug Watkins(b),Art Taylor(ds)
一部、荒削りなところもあるが、①のブルースなど、素晴らしい演奏が多い。もっと聞かれていい盤だと思う。(hand)
プレスティジ第一弾。スタンダードのA Foggy Day も悪くはないが、良いのは冒頭のオリジナルブルースだ。でも4,5&6やジャッキーズパルに比べて知名度が低いのは、一曲目が一般受けするスタンダードとか、オリジナルでも耳に馴染みやすいメロディーではないからか?ハードバップの本格的なジャズ作品だと思う。(しげどん)
渋いマクリーンのアドリブ、ドナルドバードのミュートされたトランペットと、オトナのブルースの世界がここにある。二人の息がぴったりと合った2曲目のupの管楽ハーモニーがカッコイイ!全体を通して、落ち着きと勢いを感じる一枚で、特にドナルドバードのかすれ気味の高音プレーが光る。(ショーン)
Jackie Mclean(as),Donald Byrd(tp),Mal Waldron(p),Doug Watkins(b),Art Taylor(ds),Hank Mobley(ts)
1曲目のセンチメンタル・ジャーニーが素晴らしい!肩の力が抜けたマクリーンのメロディアスなプレイは惹き込まれる。続くwhy was I born?の速いテンポもノリが良い。3曲目はクインテット、ドナルドバードのトランペットが加わり、その伸びやかな高音で厚みが出ている。さらに4曲目ではセクステットになって、ハンクモブレーも参加!ホーンの掛け合いは見事だ。全体を通して、スピード感いっぱいのノリノリな印象のアルバムだが、最後のabstractionのゆったりとしたマルウォルドロンの曲もなかなか良い。優等生で間違いのない名盤。(ショーン)
評論家に評判のいいセンチメンタル・ジャーニーが特段、好きになれない。メロディが明るく、センチメンタル度が低い。マクリーンには、もっとマイナー調のメロディが合うと思う。その他の曲は、標準の出来だ。(hand)
タイトル通りカルテット、クインテット、セクステットによる演奏が混在している。ワンホーンによる3曲は全部スタンダードだが出来栄えがいいのはややアップテンポの二曲で、評判がいいセンチメンタルジャーニーはやや平板。クインテットとセクステットの曲も、バード、モブレーとのからみはハードバップらしくて好きだ。この日のセッションは「モブレーズ・メッセージ」にも収録されている。(しげどん)
Bill Hardman(tp),Jackie Mclean(as),Mal Waldron(p),Paul Chambers(b),Philly Joe Jones(ds)
マクリーン、ハードマンともに、いい演奏をしている。①②の曲がもっといいメロだったら、と残念。(hand)
メンバーのオリジナル中心の選曲で、若きマクリーンの気合を感じる快作。メンバー構成も申し分なく、ウォルドロン、ハードマンのソロもさえている。(しげどん)
アルバム全体が、スピードに溢れる好演だ。ポールチェンバースの硬質なベースランニングが引き締め役となり、マクリーンも自由八方に飛び回っている。ビルハードマンのトランペットも、前に音が出ていて盛り上げ役として一役買っていて、元気なマクリーンを聴くには最高な一枚。しかも最後のバラード it could happen to youがしみる。(ショーン)
1956年12月14日:Bill Hardman(tp),Jackie Mclean(as),Red Garland(p),Paul Chambers(b),Art Taylor(ds)
1957年2月15日:Jackie McLean(as),Mal Waldron(p),Arthur Phipps(b),Art Taylor(ds)
マイルスのマラソン・セッション以上に、この時期、プレスティッジに大量に吹き込んでいるマクリーン。残念なのは、ボブ・ワインストックの盤発売時の選曲、組合せ、曲順のセンスがイマイチということだと思う。この盤も、スタンダードではなく、オリジナルからスタートした方が、よりマクリーンの個性を感じる良い盤になったと思う。(hand)
長尺のブルースも収録されているが、この盤に限って言えばスタンダードの出来栄えのほうが良く、マクリーン節全開だ。特に57年のカルテットのものが良いが、このセッションは4枚のアルバムにばらばらに収録されている。この盤以降のリリース作品はニュージャズレーベルからで発売時期も遅く、雑な扱いになっているため評価が低くとどまっていたきらいがある。(しげどん)
マクリーンのアルトの雑味が美味しい音色とビルハードマンのクリアで爽やかなトランペットの音色の相性はとても良く、聞き惚れる。そこにレッドガーランドのピアノが絡む3曲が特に素晴らしい。もちろんそれ以外のマクリーンの1ホーンカルテットの3曲も落ち着いていて、レベルが高い演奏ばかりで、いいアルバムだ。(ショーン)
Jackie Mclean(as),Bill Hardman(tp),Ray Draper(tuba),Mal Waldron(p),Doug Watkins(b),Art Taylor(ds)
裏・直立猿人のような作品。知られざる名盤だ。この盤とストレンジ・ブルースが私にとってのマクリーン2大名盤だ。ジャケがもう少しかっこ良ければ、もっと人気盤になったはず。ジャズで最も不器用な楽器と思われるチューバとの共演。アルトで は不器用気味なマクリーンも饒舌な人に思える。(hand)
この作品はプレスティジ最後の正規盤として発売され、同一日録音のセッションで統一性があるアルバムになっている。ここではスタンダードはやらず全てメンバー持ち寄りのオリジナル作だが、ブルースといいスローなバラード作品といい、マク リーンのアルトの味わいを引き出す最高の材料になっていると思う。(しげどん)
冒頭の黒っぽいFlickersはマルウォルドロンの曲だが、レイドレイパーのチューバが独特の雰囲気を醸し、都会の夜のドラマ を感じる。次のHelpもまた黒い!ダグワトキンスのおどろおどろしく響く闇のベースラインが良い感じを演出している。ここで もドレイパーは猛獣の様な雄叫びで、チューバを奏でる。最後はやはりバラード。静かにマルのリリカルなピアノとマクリーン
のアルトが絡んで、都会のドラマも幕を閉じる。ショーンはこの様なちょっとクセのあるアルバムが大好きだ。(ショーン)
2月15日:Jackie McLean(as),Mal Waldron(p),Arthur Phipps(b),Art Taylor(ds)
7月12日:Jackie McLean(as),Webster Young(tp),Ray Draper(tu),John Meyers(p),Bill Salter(b),Larry Ritchie(ds)
ベースから始まる盤に外れなし、と思う。発掘盤ながら名盤だ。新ジ談では、基本的に発掘盤は対象としないが、真に優れた 盤は例外だ。ブルーな感じと、マクリーンの熱情が封じ込められている。チューバ入りの曲も違和感なく融け込んでいる。マルも、無名に近いジョン・メイヤーズも最高のプレイを聞かせる。発掘盤でここまで統一された完成度はレアだ!(hand)
LP両面の劈頭を飾るカルテット曲は素晴らしく、タイトル曲のブルースはアルバムの一曲目にふさわしい。ドレイパー入りの セクステットの演奏も印象的で良い。最後のブルースもワンホーンだが、これも2月15日の録音と思いきや、こちらは7月12 日のドレーパーなどが参加した日の録音らしい。演奏はいいのに途中で突然終わる不完全なテイクなのがアルバムの完成度として残念だ。アナログ派の人はニセステ盤が多いので、OJCか国内盤を探したほうがよい。(しげどん)
タイトル曲は、ゆったりとしたブルース。Millie's Padは、全員が丁寧に演奏し、仕上がり上々。チューバ独特のゆる〜い音程 の揺らぎが効果的だ。What's New? ピアノとベースが単調でノリがいまいち。Disciples Love Affair まずまず。Not So Strange Blues アルトの高音の伸び、フレージングがgood! しかし何故かフェードアウト…。大きなマイナスだ。(ショーン)
注:1957年のプレスティジのセットはここにあげた5枚のアルバムに分散収録されている。特に2月15日のマル・ウォルドロンとのカルテットのセッションは彼の代表作といえる出来栄えだが、ばらばらに切り売りされてアルバム単位で評価されておらず残念だ。What's Newは二回(2月15日=カルテットと8月30日=セクステット)録音されており、このアルバム収録は2月15日のマル入りカルテットのもの。ウィキペディアや一部のディスコグラフィで、メンバーをピアノ=ギル・コギンス、ベース=ポール・チェンバース、ドラムス=ルイス・ヘイズ としているのは、8月録音のものと混乱したための間違いである。
2月15日:Jackie McLean(as),Mal Waldron(p),Arthur Phipps(b),Art Taylor(ds)
8月30日:Jackie McLean(as),Webster Young(tp),Curtis Fuller(tb),Gil Coggins(p),Paul Chambers(b),Louis Hayes(ds)
作品としてのレベルは高い。キラーチューンがあればもっと良かったのに。ビバップ曲は不要だった。(hand)
アルバムタイトルから何か実験的なチャレンジを期待しそうだが、内容はスタンダード中心で、やはり57年2月15日のカルテットのものが素晴らしい。ホーキンスとパーカーのビバップオリジナルもあり原点回帰の素材とも言えるが、曲順はスタンダードが一曲目のほうが印象が良かったのでは?(しげどん)
冒頭のbean and the boysは、ちょっと走り過ぎてるきらいのあるアーサーテイラーのドラムに煽られたマクリーンのアルトが炸裂。2曲目は一転して、ゆったりとした3管の共演。まずまずではあるが、アルバム全体としては、マクリーンの演奏はややもたついており、バタバタまとまりなく聞こえて、スカッとしない。(ショーン)
1957年2月15日,8月30日
Prestige
おすすめ度
hand ★★★★★
しげどん ★★★★☆
ショーン ★★★★
2月15日:Jackie McLean(as),Mal Waldron(p),Arthur Phipps(b),Art Taylor(ds)
8月30日:Jackie McLean(as),Webster Young(tp),Curtis Fuller(tb),Gil Coggins(p),Paul Chambers(b),Louis Hayes(ds)
すばらしい演奏なのだが編集が疑問。AB面別々の二つのセッションから構成されているアルバムで、タイトル曲のブルースは、Makin'The Changesに入っていた3曲と同じ8月30日の録音。内容はたいへん素晴らしいがなぜこの曲だけ切り離して別アルバムにしたのか?また、冒頭にやり直しの収録音がテイク1として収録されているが、この意図もよくわからない。それ以外の曲は2月15日のカルテットによるセットで、ここでのスタンダード演奏も素晴らしく、パーカーの名演で知られるEmbraceable youなど、2月15日のセッション中でも最高の部類に入るのではないだろうか。(しげどん)
ブルースのテイク①のガヤガヤは、一度聞けばいいかも。二度めからはテイク②から聞けばいいと思う。②は20分超の長尺物で、マクリーンは最初テナーを吹いているが、マクリーン節なので、アルトとあまり変わらない。飽きずに聞ける名演。③以降B面のバラード3曲も名演(hand)
タイトルチューンはチェンバースの行進曲の様な正確なリズムが中心となり、他のメンバーが追随する感覚のブルース。カーティスフラーの緩いトロンボーンが渋い味付けとなっている。20分以上の長い曲だが、意外と飽きずに聴いていられる。後半の3曲は、マルウォルドロンらとのカルテットで、いずれもバラード。(ショーン)
Webster Young(tp),Ray Draper(tu),Jackie McLean(as),Gil Coggins(p),Geroge Tucker(b),Larry Ritchie(ds)
プレスティジを離れてからのレイ・ドレイパーとの再演。ウエブスターヤングのMillie's PadはStrange Bluesでも演じられていたが、プレスティジがお蔵入りするんでわざわざ再演したのか?マクリーンのソロは快調だがドレイパーは少し前作よりトーンが弱く感じるのは録音のせいだろうか?(しげどん)
マクリーンとチューバのレイ・ドレイパーの組合せは最強のはずなのだが、この盤は残念な例外だ。足を引っ張っているのは、単調なドラムとプレスティッジと違う深みに欠ける録音。減点要素が無ければ、Aランク相当の盤(hand)
ジャッキー・マクリーンの主要作品 CD レビュー 目次
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