30年近く在籍したブルーノートを離れたシルバーは、1981年に自己レーベルのシルヴェトを設立し、自らの音楽を発表し続けますが、あまり売れなかったと思われます。その後、1993年にメジャーのコロンビアと契約したことをきかっけに、シルバーの最後の快進撃が始まります。
1981.9.18 & 29
Silverto
おすすめ度
hand ★★★
Horace Silver(p), Eddie Harris(ts), Joe Diorio(gr), Bob Magnusson(b), Roy McCurdy(ds), Bill Cosby(recitation), Weaver Copeland, Mahmu Pearl(vo)
長年在籍したブルーノートを離れ(多分、五部作が売れなかった?)、移籍先もなく?自己レーベル、シルヴェトを設立。ここから5枚がシルヴェト盤で、いずれもCD化されていない。この1枚目は、私自身は仕方なくアナログを買ったが、CD化しても売れない気がする。シルバーさん、ごめんなさい。ただ、私の理解できないレアグルーヴ系などで人気が出ればわからない。内容は、コーラスが活躍し、ジャズサイドからのセルメン&ブラジル’66や’77のように感じる。ボサノバとしてのセルメンは好きだが、ジャズのセルメン化はあまり歓迎できない。シルバーの作詞作曲のコーラスのほかに、曲の冒頭にナレーションも入る。英語が苦手なのでわからないが、シルバーが成長に関する何かを語りたいのだろう。メンバーはブルーノート時代から一新し、テナーはエディ・ハリスになりシルヴェト盤3枚目まで付き合っている。シルヴェト後も入っている盤があるので、相性がいいのだろう。ポップな時代のシルバーには合っている。(hand)
1983.1.19
Silverto
おすすめ度
hand ★★★☆
Horace Silver(p), Eddie Harris(ts), Bobby Shew(tp), Ralph Moore(ts), Bob Maize(b), Carl Burnette(ds)
シルヴェト2作目。ジャケ写がエディ・ハリスとの2ショットで、ジャケにはフィーチャリング・ハリスとまで書いてある。ただハリスの他に若手テナーのラルフ・ムーアが2曲に入っている理由は不明だ。ボーカルなしのインストなのは好感だが、好みの音楽かと聞かれると微妙だ。近年、後期シルバーの見直しの機運があるらしいが、旧来のジャズファンとは違うアプローチだと思うので、それはそれで進めてほしいと思う。(hand)
1983.8.25 & 9.1
Silverto
おすすめ度
hand ★★★☆
Horace Silver(p), Eddie Harris(ts), Bobby Shew(tp), Ralph Moore(ts), Bob Maize(b), Carl Burnette(ds), Weaver Copeland, Mahmu Pearl(vo)
シルヴェト3作目は再びボーカル盤だ。男女1声ずつで2人ともあまり強烈な感じでなくセルメン的な使い方だ。曲はいいものが多く、メロディも親しみやすい。前作で2曲参加のラルフ・ムーアがエディ・ハリスとともに全曲に参加。もがく必要がなく気楽に楽しむ音楽という意味のタイトルなのだろうか。(hand)
1985.3.25
Silverto
おすすめ度
hand ★★★☆
Horace Silver(p), Carl Saunders(flh), Buddy Collette, Ray Pizzi, Ernie Watts, Don Menza(fl), Bob Maize(b), Carl Burnette(ds), Andy Bey, Maxine Waters, Julia Waters(vo), Chuck Niles(narration),
Los Angeles Modern String Orchestra, William Henderson(cond)
シルヴェト4作目は、全10曲となっているが実際には6曲で、曲の前に長いナレーションが1曲として入っている。アナログだと飛ばし聞きができないので大変だ。ストリングスは入っているものの曲の感じは前作「ストラグル」と似ている。歌の基本はコーラスなのだが、この盤ではアンディ・ベイが参加し、濃厚な声を聞かせるのは前作と少し違う。久しぶりにシルバーがたくさんピアノを弾いている気がする。エリントンら先達に捧げているらしいが、ナレーションや歌詞の内容はわからない。(hand)
1988.3.31
Silverto
おすすめ度
hand ★★★☆
Horace Silver(p), Clark Terry(tp,flh), Junior Cook(ts), Ray Drummond(b), Billy Hart(ds), Andy Bey(vo)
シルヴェトのラスト5作目は、前作「コンティニュイティ」と同様ナレーションから始まるので心配になるが、今回は最初と最後の2回だった。ジュニア・クックが「ソング・フォー・マイ・ファーザー」以来なんと25年ぶりに参加。他にもクラーク・テリーなどジャズらしいメンバーが揃い、サウンドはとてもジャジーになり好感なのだが、今回はアンディ・ベイが活躍する。アル・ヒブラー的な超濃厚なボーカルはどうも苦手だ。(hand)
Horace Silver(p), Michael Mossman, Bob Summers(tp), Andy Martin, Bob McChesney(tb), Ricky Woodard, Ralph Bowen, Doug Webb(ts), Bob Maize(b), Carl Burnett(ds), Andy Bey, Dawn Burnett(vo)
自己レーベル・シルヴェトとメジャー・コロンビアの5年の空隙を埋める盤が2003年にバップシティという小レーベルから発売されている。ロシア出身のクラシックの作曲家・ピアニストのラフマニノフに捧げた、シルバーのジャズ・ミュージカル。全曲の作詞作曲はシルバーで、ラフマニノフの曲はない。異色作かと思って聞くと、この時期の他作と比べると、どちらかというと本盤のほうが滑らかなスモールビッグバンド的な演奏で聞きやすいと思う。歌も入っているが全曲ではないのでそれもいい。(hand)
Horace Silver(p), Oscar Brashear, Ron Stout, Bob Summers(tp,flh), Bob McChesney(tb), Maurice Spears(b-tb), Suzette Moriarty(french horn), Eddie Harris, Branford Marsalis(ts), Red Holloway(ts,as), Bob Maize(b), Carl Burnette(ds), Andy Bey(vo)
メジャーのコロンビアでの「シルバーズ・ブルー」以来36年ぶりの録音だ。音楽全体にパワーがみなぎり、気合いの入った録音だと思う。シルバーは64歳になっている。メンバー的には、テナーにシルヴェト盤で活躍したエディ・ハリスに加え、期待の若手ブランフォード・マルサリスが入っているのが特色だと思う。全曲ではないがアンディ・ベイの歌入り盤なので、個人的には歌抜きのインスト100パーセントにしてほしかった。⑧ソングフォーマイファーザーの30年ぶりのスタジオ録音を喜んで聞いていると途中からボーカルが出てきて私はガッカリした。(hand)
Horace Silver(p), Oscar Brashear, Ron Stout, Jeff Bernell(tp,flh), George Bohanon(tb), Maurice Spears(b-tb), Suzette Moriarty(french horn), Red Holloway, James Moody, Eddie Harris, Rickey Woodard(ts),
Bob Maize(b), Carl Burnette(ds), O.C. Smith(vo)
前作に続きコロンビアからの盤。アンディ・ベイに変わりO.C.スミスのボーカルが入っている。シルバーはやはりソウルフルな男性ボーカルが好みのようだ。音楽性も、よりポップになり、私の好みとは反対方向に向かっている。テナーには、エディ・ハリスの他に、ジェームス・ムーディまで入っているのだが、ジャジーな盤とは思えなかった。⑨セニョールブルースの再演はかなりポップになっている。シルバーのピアノ自体は、後期のどの盤もほとんど変わらない快調さだ。(hand)
Horace Silver(p), Claudio Roditi(tp,flh), Steve Turre(tb), Michael Brecker(ts), Ronnie Cuber(bs), Ron Carter(b), Lewis Nash(ds)
インパルスに移籍。タイトルのハードバップに期待し、グランドポップを警戒しながら聞いた。ポップではあるが割といい、いや、かなりいい。ボーカルなしのセプテットというのが特にいい。テナーがマイケル・ブレッカーではなくジュニア・クック、もしくは若手ならブランフォードを使ってくれればもっと嬉しかった。インパルスにブレッカーが居たから仕方ないのか…残念だ。(hand)
Horace Silver(p), Randy Brecker(tp), Michael Brecker(ts), Ron Carter(b), Louis Hayes(ds)
インパルスからの2作目。日本タイトル「ブルースに処方箋」。薬剤師の衣装のシルバーが病気のブルースを治療するのだろうか?わからない。「イン・パースート・オブ・ザ・27th・マン」以来、25年ぶりにブレッカー・ブラザーズが揃って共演。ルイス・ヘイズは「ブローイン・ザ・ブルース・アウェイ」以来、38年ぶりで、すごいことだ。ブレッカー兄弟は、あまり得意ではないが、30年ぶりのオーソドックスなクインテット盤は大歓迎だ。残すところあと1枚でやっと私の理想的な形態に戻ってきたことは喜ばしい。シルバーという人は有り余る才能がオーバーフローしている感じがあり、4ビートジャズ、ハードバップの枠組みには収まらない人だったのだと思う。ブレイキーやキャノンボールの60年前後のスタイルをファンキーのモデルと考えると、シルバーはファンキー、ファンキーと言われてきたが、どうもイメージが合わない。8ビートやラテン、アフリカなど、シルバーは各ジャンルのフュージョンミュージックをずっとやっていて、80年頃のフュージョン時代のずっと前からフュージョンしていたのだと思う。だからマイケルのようなフュージョン的なサックスを採用するのだろう。(hand)
ピアニストであり最高のバンドリーダーだったJRモートンとシルバー本人をかさねあわせた作品なのかもしれない。 最後の曲もDr.Jazzなのだが、モートンの作ではなくシルバーのオリジナルだった。古いジャズファンならおなじみの電話でドクタージャズを呼んでくれという歴史的な名作のくだりは、まさにジャズが処方箋なのだというのを思い起こすが、内容は全編シルバー作で、原点回帰の意味があったのでは?などと思う。この時期1997年としては極めてオーソドックスなジャズ作品だ。(しげどん)
Horace Silver(p), Ryan Kisor(tp), Jimmy Greene(ts,ss), John Webber(b), Willie Jones III(ds)
2014年に85歳で亡くなったシルバーの現時点(2021)でのラストリーダー盤。69歳、初のヴァーブ盤だ。ブレッカー兄弟のようなフュージョンもやるメンバーではなく、ライアン・カイザー、ジミー・グリーンというジャズ専業メンバーと組んだことは歓迎だ。グリーンという人は初めて聞いたが、バリバリのバッパーではないのかもしれないが、フレージングはバップの語法に近いと思った。カイザーは、現代のバッパーとして満足のいくプレイをしている。50年代、60年代にクインテットで活躍したシルバーが、90年代末に洗練されたクインテットで最後に録音したジャズ盤を歓迎したい。(hand)
シルバー最後の作品は1998年という時代を考えると原点回帰の印象の作品で、オーソドックスなハードバップになった。曲のタイトルは意味深な組曲的なイメージだが、実際はシルバーらしい曲調で、ややコーニーな感じも彼らしいとも言える。ほかのメンバーも、ソロは悪くはないのかもしれないが印象が薄い。シルバーの曲の魅力は感じられるし彼のピアノの魅力だけを聴くべき作品のように聴こえた。(しげどん)
ソロだけでなく、管楽器たちのパートのバックでも存在感を発揮するシルバーのピアノ。演奏を楽しんでいる様子、リラックスしている雰囲気が伝わって来るアルバム。Ryan Kisor のトランペットも伸びやかで良く、どの曲もバランス良く仕上がっている。安心して聴けるアルバムだ。(ショーン)