シルバーのサイドマンとしての活動は1957年で一旦終了します。
57年4月の「ソニー・ロリンズVol.2」以降では、例外的に最後に近い94年のディディ・ブリッジウォーターの歌伴に参加した以外は記録はありません。
いい話としては、1989年のアート・ブレイキーの70歳記念ライブ「ジ・アート・オブ・ジャズ」に、シルバーは参加こそしていませんが、‵Mr. Blakey’という曲を作詞作曲し捧げています。当日歌ったのはミシェル・ヘンドリックスで、テレンス・ブランチャード、ベニー・ゴルソン、ウォルター・デイビスJr.などが参加しています。
Donald Byrd(tp), Hank Mobley(ts), Horace Silver(p), Doug Watkins(b), Art Blakey(ds)
この盤を聞いて、ブレイキーとシルバーが袂を分かった理由の一端が見えた気がする。ブレイキーは基本的に4ビートでスイングする人。またはアフリカンビートを濃厚に出すドラムも得意。これに対し、シルバーはあまりスイングしない曲が好きなようで、4ビートよりも8ビートに名曲が多い。ブレイキーも後年ジャズロック的な8ビートは叩くがシルバー曲②ニカズ・ドリームのようなボサノバ、サンバなどチチチチチチチチの緻密でタイトな8ビートはあまり得意ではないと思う。スタンダード③イッツ・ユー・オア・ノー・ワンではブレイキーがイキイキしているが、シルバーは個性が弱まりバド的なプレイになっている。色々な別れた理由はあると思うが、この辺りも関係しているように思う。バードとモブレーのフロントはなかなかいい。(hand)
Rita Reys(vo),
7,8,10,12:Donald Byrd(tp), Hank Mobley(ts), Horace Silver(p), Doug Watkin(b), Art Blakey (ds:7–12)
オランダのリタ・ライスの歌伴もの。全12曲中6曲にJMが参加。ライスはこの録音のために渡米したようだ。JMはシルバー在籍の最後の時期で、バード、モブレーもいる。シルバーが4曲で2曲がケニー・ドリューになっている。ベースもダグ・ワトキンス4曲、ウィルバー・ウェア2曲で、理由はわからない。この共演、悪くはないが、なぜわざわざ渡米してJM?という程度だと思う。ヘレン・メリルとクリフォード・ブラウンのような濃厚な共演にはなっていない。(hand)
Paul Chambers(b), Donald Byrd(tp), John Coltrane(ts), Kenny Burrell(gr), Horace Silver(p), Philly Joe Jones(ds)
マイルスバンドでの活躍で知られるチェンバース。他の名盤にもサイドとして多数参加しているが、自らのリーダー盤は少なく、私の記憶では、「チェンバース・ミュージック」(1956.3)、本盤(56.9)、「クインテット」(57.5)、「ベース・オン・トップ」(57.7)、「ゴー」(59.2)、「1st ベースマン」(60.5)の6枚。この中でベースの主役感が強いのがタイトルどおりオン・トップ。他は通常のハードバップ盤。ミュージックと本盤がコルトレーンをフューチャーし、ゴーはキャノンボールをフィーチャーしたスタジオライブ。強烈なリーダーシップを発揮する人ではないので、ブローインセッション化しやすいが、本盤は比較的まとまりもよく、作品として楽しめる。ちょい兄貴分のシルバーがその辺に貢献していると思う。(hand)
J. R. Monterose(ts), Ira Sullivan(tp), Horace Silver(p), Wilbur Ware(b), Philly Joe Jones(ds)
ミンガスの「直立猿人」でのキツツキ奏法テナーでの活躍が知られるモンテローズ。リーダー盤では超マイナーレーベル・ジャロの「ザ・メッセージ」(ザナドゥから「ストレート・アヘッド」として再発)収録のバラード、コートにスミレが有名だ。自らの名前のみをタイトルにしたこの盤は、ブルーノート盤だけにそれなりの人気はあるが、目立つところはあまりない。トランペットのアイラ・サリバンがプレイは悪くないが人気があまりないのも損をしているかもしれない。シルバーもいい感じでサポートしてまとまりのあるハードバップ盤になっている。②サードがカッコいいと思う。(hand)
Cliff Jordan, John Gilmore(ts), Horace Silver(p), Curly Russell(b), Art Blakey (ds)
クリフォード・ジョーダンとジョン・ギルモアの2テナーのライブ。ツインテナーという編成はあまり好きではないかもしれない。2人を聞き分けなければと思うと難しくて疲れるのだ。なので、あまり気にせずに聞くと良質なハードバップに聞こえてくる。内容的にはアレンジも少なめでビバップの感じがまだ残っている。シルバーも頑張っているが、ブレイキーのほうが目立っている。(hand)
Dee Dee Bridgewater(vo), Stéphane Belmondo(tp), Lionel Belmondo(ts), Thierry Eliez(p-except②⑨), Horace Silver(p:②⑨), Jimmy Smith(org:⑧⑫), Hein van de Geyn(b), André Ceccarelli(ds)
シルバーの後期は、多分この録音以外でサイド参加していない。しかも、パリまで出かけて行って2曲だけの参加だ。ディディは、1970年、20歳の時、トランペットのセシル・ブリッジウォーターと結婚し、この姓を名乗ることとなった。その頃、セシルはシルバー・バンドに所属しており、「トータル・レスポンス」等に参加している。録音はないが、ディディもその頃、シルバーで歌っていたようなのだ。その後、ミュージカルに活動の場を移していたが、90年代に入り、このシルバー・トリビュート盤で、ジャズに復帰し、現在も活躍している。なので、シルバーにとっては娘の録音に花を添えた感じなのかもしれない。全曲シルバー曲で、全曲に歌詞があるのも驚きだが、作詞もシルバーだ。シルバーは②ニカズ・ドリームと⑨ソング・フォー・マイ・ファーザーに参加し、彼らしいソロを弾いている。私個人としては、この②ニカと、シルバーはいないが⑤セント・ヴィタス・ダンスが気に入っている。(hand)