最初期に続く時期のサイドマンとしての活動です。シルバーのサイド活動としては最盛期と言えるかもしれないのがこの1955年です。というのもジャズ・メッセンジャーズ(JM)に所属していたのがこの時期で、翌56年前半には脱退しています。この時期には、JMのデビュー作にして最高作ともいえる「カフェ・ボヘミア」が録音されています。また、JM同僚のドーハム、モブレー、バードなどのリーダー盤にも参加しています。
Clark Terry(tp), Jimmy Cleveland(tb), Cecil Payne(bs), Horace Silver(p), Oscar Pettiford(b,cello), Wendell Marshall(b:1,3,6), Art Blakey(ds)
クラーク・テリーという人はエリントン楽団からモンクまで、と言っても2つのバンドは似た要素もあるが、カバー範囲が広く、ミュージシャンからリスペクトされている人。日本ではそういう器用な人はあまり人気がない。ただ、この盤はテリーがアフロアメリカンの個性を盛り込んだ感があり、なかなかいいと思う。日本盤は「イントロデューシング」が付いているが、本来は名前のみをタイトルにした決意ある盤だと思う。(hand)
ウィントン・ケリー入りのセッションとシルバー入りのセッションからなる。ケリーは個性が強烈になる前の時期だが、シルバーは最初からシルバーらしい。(hand)
Gigi Gryce(as), Art Farmer(tp:1-6), Eddie Bert(tb:3,5), Jimmy Cleveland(tb:1,2,4,6), Gunther Schuller(French Horn:1,2,4,6), Julius Watkins(French Horn:3,5), Bill Barber(tuba:1-6), Cecil Payne(bs:3,5), Danny Bank(bs:1,2,4,6), Horace Silver(p:1-6), Oscar Pettiford(b:1-6), Art Blakey(ds:3,5), Kenny Clarke(ds:1,2,4,6), Ernestine Anderson(vo:3,5)
シルバー参加の前半は、スモール・ビッグバンド編成で、グライスのアレンジを楽しむ作品。シルバーどころかグライス自身のソロも埋没気味だ。ところが後半4曲、アナログB面のコンボ編成は、グライスも、シルバーと交替したモンクも個性を十分に発揮したソロを展開する。シルバーに少し同情した。(hand)
Kenny Dorham(tp), Hank Mobley(ts), Horace Silver(p), Doug Watkins(b), Art Blakey(ds)
JMの名盤中の名盤の「バードランドの夜」にはクリフォード・ブラウンがいた、「モーニン」にはリー・モーガンがいた。そしてこの盤には、私は好きだが大スターではないケニー・ドーハムがいる。ドーハムとハンク・モブレーがフロントを務めるこの盤。2人とも一流だと思うが世間の扱いは1.5流的な場合がほとんどだと思う。しかしながら、この盤はどう考えても一流だ。総合力の勝利といったところだろうか。ドーハムもモブレーも、そしてシルバーも、ダグ・ワトキンスもブレイキーもみんな若くて絶好調だ。シルバーとブレイキーの蜜月もあと半年ほどで終わってしまう前の絶妙にいいコンビネーションの時期を捉えた記録だと思う。スタンダードもいいが、ドーハムのオリジナル(マイナーズホリディ、プリンスアルバートなど)やモブレーのオリジナル(スポーティンクラウド、アヴィラ&テキーラなど)が曲も演奏もとてもカッコいい。シルバーのオリジナルがないのは別れの予兆かもしれない。アナログ時代のVol.1&2は各5曲だったが、CDで各3曲追加で全16曲のコンプリート盤となった。捨て曲なしの素晴らしい2枚だ(2枚組も別売もある。)。(hand)
初期メッセンジャーズの傑作盤だ。ホレス・シルバー名義のジャズメッセンジャーズ(BLP1518)と同一メンバー。「モーニン」のような必殺ヒット曲がないのでやや地味な印象かも知れないが、ドーハム,モブレーという二管のフロントラインは、私にはモーガン,ゴルソンより魅力的に感じる。じっくり聴けば味わい深いライブなのだ。二人とも音楽監督的な素養もあり作曲にも才能があるのは明らかで、Vol.1はドーハムのマイナーズホリディ(→アフロ・キューバン),Vol.2はモブレーのアヴィーラアンドテキーラ(初リーダー作)と、それぞれのリーダー盤で演奏している名曲を熱演しており、聞き比べも楽しい。(しげどん)
Donald Byrd(tp), Joe Gordan(tp:1,2,4), Hank Mobley(ts), Horace Silver(p), Doug Watkins(b), Art Blakey(ds)
売り出し中のドナルド・バードが、同じく売り出し中のジョー・ゴードンとの2トランペットで吹き込んだ盤。ハンク・モブレーも入っている。バードは60年代に入ると徐々に総合音楽家的な感じになってしまうが、この盤の頃はトランペット1本で勝負する、という感じで好感が持てる。シルバーは、JMつながりで参加したという程度ではないかと思われ、特段の働きは見られない。同日録音のクレイジー・リズムがオムニバス盤「ジャズ・イン・トランジション」に収録されているが、慌たゞし演奏なので、別盤にして正解だったと思う。(hand)