Hank Mobley ハンク・モブレー:サイド参加作 CDレビュー ②(1960年以降)

60年代以降、モブレーのサイド参加盤の後半は、前半に比べて枚数が減ってきます。というのも自らの絶頂期を迎え、リーダー盤が多くなるからです。モブレーはサイドに回っても手を抜くことなく味わいのあるプレイを聞かせています。


Byrd in Flight/Donald Byrd  バード・イン・フライト/ドナルド・バード

60.1.17 & 25
Blue Note

おすすめ度

hand      ★★★★

しげどん ★★★★★ 

Donald Byrd(tp),Hank Mobley(ts:1,3,4,7-9),Duke Pearson(p),Doug Watkins(b:1,3,4,7-9),Lex Humphries(ds)

名盤「ソウル・ステーション」の直前、60年代モブレー快進撃の最初の盤

ドナルド・バードの人気盤「フュエゴ」の次の盤ということで期待度は高い。フュエゴがバード=マクリーンの双頭盤のような感じだったので、母屋を取られかけたバードが嫌ったのかマクリーンが6曲(一部おまけ付CDでは9曲)中2曲に参加し、残りに参加しているのがモブレー。60年代前半のモブレーは本当に素晴らしい。ただ、ベースも録音日も違うせいか、演奏のクオリティは高いものの、盤としての統一感が弱いのが残念な点だ。(hand)

素晴らしいドナルド・バードの傑作盤のひとつ。作曲とアレンジと各プレイヤーのソロがマッチしている。レックス・ハンフリーズのドラムイントロからはじまるノリのいい冒頭曲ガーナのかっこよさ。ピアソンのゲイト・シティもかっこいい曲で、自分の盤Profileでもトリオで演じていた。(しげどん)



Goin’ Up/Freddie Hubbard  ゴーイン アップ/フレディ・ハバード

1960.11.6

Blue Note

おすすめ度

hand      ★★★★☆

Freddie Hubbard(tp),Hank Mobley(ts),McCoy Tyner(p),Paul Chambers(b),Philly Joe Jones(ds)

フレディの隠れ名盤に参加

在籍時期は微妙にズレるがJM仲間のフレディ盤に参加。マッコイ、チェンバース、フィリーという新旧混淆メンバーだ。①アジアティック・レイズは、ドーハムのロータスブロッサムの別名だ。ここにこの曲が入っていることに気づいてなかった。フレディの盤は持っていても聞いてないということだ。モブレーの縁でフレディ版の蓮の花に出会えた。フレディもモブレーも素晴らしい。新旧混淆の誰もが生き生きしている。新主流派っぽくなりがちなフレディ盤をモブレー、チェンバース、フィリーがハードバップに引き留めているのが好感の理由だと思う。6曲中ドーハム2、モブレー2、スタンダード1でフレディ1というのも良かったのかもしれない。(hand)



Undercurrent/Kenny Drew  アンダーカレント/ケニー・ドリュー

1960.12.11

Blue Note

おすすめ度

hand      ★★★★

Kenny Drew(p),Freddie Hubbard(tp),Hank Mobley(ts),Sam Jones(b),Louis Hayes(ds)

フレディとの2管でドリュー盤を成功に導くモブレー

管入りのドリューのリーダー盤ではこの盤が最高だと思う。サイド参加のコルトレーンの「ブルー・トレイン」がさらに素晴らしいが。いずれにしても、ドリューはトリオもいいが、管のサイドもうまい。フレディの「ゴーイン・アップ」と同じフレディ=モブレーの2管で、曲のせいか、よりハードな感じに仕上がっている。モブレーは同じドリューの「ジス・イズ・ニュー」のときとは別人のように堂々としたプレイになっている。ドリューは私のお気に入りのピアニストだったが、80年代に日本人プロデューサーのK氏に見込まれて以降は、私の中では残念な人になってしまった。(hand)



Together!/Phiily Joe Jones & Elvin Jones  トギャザー!/フィリー・ジョー・ジョーンズ & エルビン・ジョーンズ

1961.2.2

Atlantic

おすすめ度

hand      ★★★☆

Philly Joe Jones,Elvin Jones(ds),Blue Mitchell(tp),Curtis Fuller(tb),Hank Mobley(ts),Wynton Kelly(p),Paul Chambers(b)

2大ドラムと堂々と渡り合う快調なモブレー

フィリーとエルビンという二大ドラムの共演盤。メンバーを見ると、ミッチェル、フラー、モブレー、ケリー、チェンバースであり、フィリーのリーダー録音にエルビンをゲストに迎えたような印象を持った。以前から所有していたが聞いた記憶のない盤だったが、メンバーが私好みな上、内容もいいと思った。それにしても、この時期のモブレーは2ドラムに埋没することもなく、堂々として最強の演奏を聞かせてくれる。(hand)



A New Perspective/Donald Byrd  ア ニュー パースペクティブ/ドナルド・バード

1963.1.12

Blue Note

おすすめ度

hand      ★★★☆

Donald Byrd(tp),Hank Mobley(ts),Herbie Hancock(p),Kenny Burrell(gr),Donald Best(vib,vo),Butch Warren(b),Lex Humphries(ds),Duke Pearson(arr),Coleridge-Taylor Perkinson(choir direction),4 men & 4 women(vo)

ゴスペル・コーラスをフィーチャーしたドナルド・バードの異色盤

バード自身のフェイバリット盤らしいが、ゴスペルコーラスをフィーチャーした異色盤だ。聞いてみると、バード、モブレー、バレル、ハンコックと各メンバーのソロがいい。ただ、全曲にコーラスがほぼ全面的に入っているので、これが苦手だとつらい。バード、モブレーとハンコックの3人は結果的にここから2ヶ月で5枚の共演盤を残すことになる(実質的には各人1回ずつのセッションで3枚分)。(hand)



MY Point of View/Herbie Hancock  マイ・ポイント・オブ・ビュー/ハービー・ハンコック

1963.3.19

Blue Note

おすすめ度

hand      ★★★★

しげどん  ★★★

Herbie Hancock(p),Donald Byrd(tp),Grachan Moncur III(tb),Hank Mobley(ts),Grant Green(gr:except 2-4),Chuck Israels(b)Tony Williams(ds)

ハービー・ハンコックのセカンド・アルバムに参加

あまり聞かれていないハービー・ハンコックのセカンド・アルバムだと思うが、今、聞くと悪くはない。ジャケに新曲として紹介される①ブラインドマンは続ウォーターメロンマンのような曲。バードとモブレーをフロントに置いたのがハンコックの意思かどうかわからないが、新主流派色を弱め、この盤を普通の盤にしてくれていて、私には好ましい。グリーンのギターには必然性を感じない。グラシャン・モンカーのトロンボーンもあまり目立たない。(hand)

ウォーターメロンマンが大ヒットして、その第2弾としてヒットを狙ったジャズロック=ブラインド・マン。全曲がハンコックのオリジナルなのに、この曲をあえてジャケットに登場させてアピールしている。グラント・グリーンのギターでよりコテコテ感を足してヒットを狙ったのかもしれない。全体的にハンコックの作曲の才能を見せた盤なのだが、7人編成を充分生かし切れていないようにも思う。しかし、この時期にしてはこのコテコテ路線は新鮮だったのかも。(しげどん)



Good Move/Freddie Roach  グッド・ムーヴ/フレディ・ローチ

1963.11.29 & 12.6

Blue Note

おすすめ度

hand      ★★★

Freddie Roach(org),Blue Mitchell(tp:2,4,5,7),Hank Mobley(ts:2,4,5,7),Eddie Wright(gr),Clarence Johnston(ds)

オルガンのフレディ・ローチ盤にブルー・ミッチェルとともに参加

オルガンのフレディ・ローチのリーダー盤にブルー・ミッチェルとともに参加。トリオとクインテットで、8曲中クインテット4曲②④⑤⑧への参加だ。モブレーのソロは悪くないが、曲も5分程度と短くソロイストも多いので、あっさりした感じで終わってしまうのが残念なところ。(hand)



Blue Spirits/Freddie Hubbard  ブルー・スピリッツ/フレディー・ハバード

1965.2.19 & 26

1966.3.5

Blue Note

おすすめ度

hand      ★★★

Freddie Hubbard(tp),

1,4:James Spaulding(as:1,fi:4),Joe Henderson(ts),Harold Mabern(p)

Larry Ridley(b),Clifford Jarvis(ds),Big Black(conga),Kiane Zawadi(euphonium)

2,3,5:Hank Mobley(ts),James Spaulding(as:3,5,fl:2),McCoy Tyner(p),

Bob Cranshaw(b)Pete LaRoca(ds),Kiane Zawadi (euphonium)

6,7:Joe Henderson(ts),Hosea Taylor (as:6,bassoon:7),Herbie Hancock(p:6, harpsichord:7),Reggie Workman(b),Elvin Jones(ds)

フレディの新主流派的な盤に参加

元々2つのセッションからなる盤だが、CD化で別セッションのおまけがつき3セッション盤となっている。モブレーは、2番目のセッションに「ゴーイン・アップ」以来5年ぶりのフレディ盤への参加。ユーフォニウム入りの珍しいセッションで、モブレー以外はジェームス・スポールディング、マッコイなどの新主流派メンバーだ。フレディは5年前とは違い新主流派のリーダー的存在になっている。モブレーは、新主流派的なリズム隊でも適合したソロを吹いていて、モブレーの演奏の中で最も左派の演奏かもしれない。他の2セッションのテナーはジョーヘンで、特に3番目のセッションではかなりフリー寄りのソロを吹いている。(hand)



I Want to Hold Your hand/Grant Green  抱きしめたい/グラント・グリーン

1965.3.31

Blue Note

おすすめ度

hand      ★★★☆

しげどん  ★★★

Grant Green(gr),Hank Mobley(ts:1-4,6),Larry Young(org),Elvin Jones(ds)

グラント・グリーン盤に参加はビートルズ曲で知られるこの盤のみ

グラント・グリーンのリーダー盤に唯一参加した記録。タイトル曲①抱きしめたいはビートルズのジャズ化で、新主流派路線とはある意味真逆のポップ路線で、モブレーは1か月前のフレディ盤「ブルー・スピリッツ」とは全く違ってお気楽そうに演奏している。②スピークロウなどはやや気合い不足にも聞こえてしまう。(hand)

ややイージー・リスニング的なジャズで、気楽に聴ける盤。モブレーはモブレーらしくはあるけれど、やはりリアルなジャズの緊張感はない。タイトルのビートルズ曲よりも、ジャズ・スタンダードの方が出来栄えは良い様な気はする。(しげどん)



Midnight Walk/Elvin Jones  ミッドナイト・ウォーク/エルビン・ジョーンズ

1966.3.23 & 24

Atlantic

おすすめ度

hand      ★★★☆

Elvin Jones(ds),Thad Jones(tp),Hank Mobley(ts),Dollar Brand(p),Steve James(el-p: 2-4,7),Don Moore(b),George Abend(perc:1,5,6)

エルビンのリーダー盤に兄サドらとともに参加し、珍しくコルトレーン寄りのプレイを聞かせるモブレー

不思議な印象の盤。メンバーも不思議だ。エルビン盤に兄のサド・ジョーンズの参加はわかる。それ以外ではモブレーも過去に共演している。やはりの違和感は、ダラー・ブランドの参加だ。そして、それ以上に②でピアノのほかにエレピでのスティーブ・ジェームスという人の参加で、このエレピが盤全体をささくれ立った感じにしている。とはいえ、これらの違和感が嫌な感じではないのがさらに不思議なところだ。サドは中間派的なプレイが多いが、ここではモダンなスタイルだ。モブレーは、ややコルトレーン寄りのハードなプレイをしている。(hand)



Mustang!/Donald Byrd  ムスタング/ドナルド・バード

1966.6.24

⑦⑧:1964.11.18

Blue Note

おすすめ度

hand      ★★★★☆

Donald Byrd(tp),McCoy Tyner(p),Walter Booker(b)

1-6:Sonny Red(as),Hank Mobley(ts),Freddie Waits(ds)

7,8:Jimmy Heath(ts),Joe Chambers(ds)

ドナルド・バード=ソニー・レッドの双頭盤に参加

バードはだんだん時代とともにプロデューサーとしての色合いが強まる人だが、この盤ではまだ純粋なプレイヤーに踏み止まっている。アルトのソニー・レッドとの三部作と言われる作品の1作目で、モブレーは2作目まで付き合っている。3管でのジャズロック的な演奏を含む盤で、モブレーは太い音色できっちり期待に応えている。マッコイ・タイナーもモーダルになり過ぎずいい感じのプレイだ。おまけ2曲⑦⑧は、2年前のセッションでテナーがモブレーではなくジミー・ヒース。ヒース作⑦ジンジャーブレッドボーイはマイルスより2年前の演奏で貴重だ。ヒースが珍しくワイルドでカッコいい。⑥⑧は同じ曲なのでモブレーとヒースの聞き比べができる。バードはやはり2年前がブリリアントだ。(hand)



Blackjack/Donald Byrd  ブラックジャック/ドナルド・バード

1967.1.9

Blue Note

おすすめ度

hand      ★★★★

Donald Byrd(tp),Sonny Red(as),Hank Mobley(ts),Cedar Walton(p),Walter Booker(b),Billy Higgins(ds)

引き続きバード=レッドのキャッチーな仕上がりの人気盤に参加

バードとソニー・レッドとの三部作の2作目。ジャズロック度がより強まっているが、盤は比較的良くできている。前盤から引き続き。レッドの活躍が光る。シダー・ウォルトンもいい。モブレーもまずまずだと思う。タイトル曲①はロックのクイーンを思い出すリズム、②③ともにバード版セブン・ステップスのような曲、バードの教え子作④エルドラドはバード版ソー・ホワット、⑤ベール・ストリートはバード版サイドワインダー、というように全体にキャッチーな仕上がりで飽きさせない。(hand)



Yasmina, A Black Woman/Poem for Malcom/Archie Shepp

1969.8.12 & 14

BYG → Affinity

おすすめ度

hand      ★★★☆

②,④-2:Archie Shepp,Hank Mobley(ts),Grachan Moncur III(tb:④-2),Dave Burrell(p:②),Vince Benedetti(p:④-2)Malachi Favors(b),Philly Joe Jones(ds)

フリーの旗手、アーチー・シェップの仏録音盤に参加

フリーの騎手、同じテナーのアーチー・シェップのフランス録音盤「ヤスミナ…」と「ポエム…」の2in1盤にモブレーが各1曲参加。理由はわからないが、ドラムがフィリーというのがモブレーにハードルを低くしていると思う。「ヤスミナ」のピアノはデイブ・バレル、ベースはマラカイ・フェイバース。モブレーはグラシャン・モンカー作のソニーズバックに参加。ロリンズ風の曲なので、違和感なく参加している。「ポエム」ではロリンズ作のオレオに参加。ただし、レイン・フォレスト〜オレオのメドレーなので、シェップのフリーソロを10分ほど聞いた後にオレオが聞ける。「ヤスミナ」と多少メンバーが違い、シェップ、モブレー、フェイバース、フィリーは共通だが、グラシャンのトロンボーンが加わり、ピアノは1か月前のモブレー盤「ザ・フリップ」に参加していたヴィンス・ベネディッティに変わる。オレオ自体はロリンズ風ではなく、かなりフリーな感じの演奏だ。フィリーはうまく適合している。モブレーは微妙だがよく健闘していると言っていいと思う。(hand)



I Want to Talk about You/Tete Montliu

1980.3.22

SteepleChase

おすすめ度

hand      ★★★★

Tete Montoliu(p),George Mraz(b),Al Foster(ds),Hank Mobley(ts:7)

テテ・モントリュー盤のCD化でモブレーのラスト録音「枯葉」が発掘された。

最終録音とされていたシダー・ウォルトンとの「ブレイクスルー」から8年。モブレーのラスト録音が発見された。スペインの盲目のピアニスト、テテ・モントリューのコペンハーゲン録音のリーダー盤のCD化に際し、おまけ曲として発掘された1曲にモブレーが参加していた。テテは多作で、いずれも素晴らしい盤ばかりだと思う。指もとてもよく動く。この盤もジョージ・ムラーツ、アル・フォスターという強力なメンバーとともに熱い演奏を聞かせている。モブレーの参加曲は⑦枯葉。過去のモブレーに比べ音色が暗い気がするが、雰囲気はある。この4年後に55歳で亡くなっている。(hand)