ここではモブレーの最後期までを取り上げます。ディッピン のヒットを期に、時代の流れを追うようにジャズロック路線を歩み始めますが、ハンク・モブレーは最後まで本質的には歌心を持ったハード・バッパーでした。病のため40歳台にしてほとんど活動ができなくなっていましたが、元気であれば、マクリーンやガーランドなどとともに80年代以降のハードバップリバイバルに一役買っていたと思うと早い死去が惜しまれます。
1965年6月18日
Blue Note
おすすめ度
hand ★★★☆
しげどん ★★★★☆
ショーン ★★★★☆
Lee Morgan(tp),Hank Mobley(ts),Harold Mabern(p),Larry Ridley(b),Billy Higgins(ds)
ジャズロック盤だが、ジャズロックではない1曲「リカードボサノバ」のおかげで人気盤になった盤。この曲からモブレー入門してしまうと、初期盤は簡単には理解できないかもしれない。(hand)
後期モブレーの代表作であり、リアルタイムでは一番売れた盤なのかも知れない。これ以降はこの路線の作品が多い。65年というと昭和40年。白黒テレビのオバQを見ていた頃かな・・などと思いつつ、リカードボサノバをアナログで聴くと時代感覚にジーンとくる。後半の作品から一枚選ぶならやはりこれしかない。(しげどん)
ボサノヴァ好きなショーンとしては、このアルバムのようなJAZZの境界線に近いポップな音楽は結構好きだ。特に冒頭の2曲は新鮮。トランペットでリーモーガン が参加しているが、主役のモブレーといい感じで共存しており、アルバムの価値を上げている。特に最期のボーリンでの突き抜けるトランペットは最高だ。(ショーン)
Lee Morgan(tp),Curtis Fuller(tb),Hank Mobley(ts),McCoy Tyner(p),Bob cranshaw(b),Billy Higgins(ds)
ウォーターメロンマンみたいな一曲目のジャズロックをはじめ、耳になじみやすい楽しめる曲が多いので、ディッピン同様にジャズファン以外にも好まれるヒットの要素があるアルバム。村上春樹さんがルウドナのMr.Shing-aLingとともにこの作品を「何ものにも代えがたいイモっぽさ」と表現して、自分の好きな作品に選んでいた。大作家の的確かつ独創的な表現はすごいです。(しげどん)
ジャズロック。モブレーらしからぬ盤。モブレーのソロ自体は悪くないので、時代のせいだと思う。リー・モーガンの「サイドワインダー」が好きな人には、おススメだが、、、(hand)
※この作品は、村上春樹氏が好きなブルーノート盤として取り上げています。
1966年3月18日
Blue Note
おすすめ度
hand ★★★★
しげどん ★★★
Lee Morgan(tp),Kiane Zawadl(euph),Howard Johnson(tuba),Hank Mobley(ts),James Spaulding(fl,as),McCoy Tyner(p),Reggie Workman(b),Billy Higgins(ds),Duke Pearson(arr)
ユーフォニアム、チューバの入った、モブレーとしては珍しい編成の盤。未発表音源だが、今聞くとなかなかいいと思える。既にジャズロック期になっているが、4ビートでモダン・ビッグ・バンドの趣きがある。デューク・ピアソンのアレンジのおかげか。モブレーも堂々とソロをとっている。(hand)
オクテットによる厚ぼったいアレンジ。一応ジャズだが66年という時代を表している聞き流し盤。(しげどん)
Lee Morgan(tp),James Spaulding(fl,as),Hank Mobley(ts),Ceder Walton(p),Sonny Greenwich(g),Walter Booker(b),Billy Higgins(ds)
この盤も、ジャズロック期にありながら、①アップテンポの前ノリ4ビートのジャズである。この時期は、4ビート=オクラ入りであったのだと思う。ギターも珍しい。②ピアノがいい。③スポールディングのドルフィー的ソロ、ハンコックのピアノも好ましく。④ドルフィー的なソロが光る。⑤フルート入りのかわいいボサ。ここまで全体にモブレーの存在感が薄い。⑧ラストがジャズロック曲。この頃のモブレーは、こういう曲で存在感を発揮する(笑)。(hand)
これもポピュラーな志向のジャズ作品。曲は悪くないがモブレーのソロには残念ながらかってのような味わいは感じない。やはり彼はハードバップの人だった。Don't Cry,Just Sigh とは彼の心情か?(しげどん)
※初出のLT盤のジャケットデザインはオリジナルなのに無機質で人気がありません。昔は輸入レコードのコーナーで売れ残り品のイメージだったので、あの頃買っておけば・・・と後悔するように、今となってはこのデザインのアナログ盤は貴重なものがけっこうあるようです。
CD時代のかっこよくなったバージョンも掲出しておきます。
Donald Byrd(tp),Hank Mobley(ts),Ceder Walton(p),Ron Carter(b),Billy Higgins(ds)
この手の未発表音源を聞くと、なぜ未発になったか考えてしまう。ミュージシャン本人がお蔵入り前提で吹き込むはずがないので、制作販売側に理由があるはずだ。この盤も同時代盤と同様に、ジャズ・ロック的な内容で、クオリティも低くない。やや4ビート寄りなところが、当時は敬遠されたのかもしれない。⑤ボサ曲は親しみやすい。(hand)
この時期の作品の中では一番ストレートにオーソドックスなジャズを感じる作品。モブレーもしっかりと長いソロをとっていて悪くはない。(しげどん)
Hank Mobley(ts),Blue Mitchell(tp),Jackie McLean(as),John Hicks(p),Bob Cranshaw(b),Billy Higgins(ds)
これも一曲目はジャズロックなのだが、ボサノバ調もあり、これもディッピン路線の継続。マクリーンはジャズロックでもひたむきに彼らしいソロでジャズしているのはえらい。この前後の作品中では一番ジャズらしさは感じられる作品。(しげどん)
粒の揃った演奏。始めの2曲は、ボルテージ高く勢いがあり、その次のNo One Goodbybyes が良い。ハンクモブレーのテナーは、John Hicks の静かなピアノの調べに誘われるように、しっとりと歌い上げている。(ショーン)
ジャズロック盤。ジョン・ヒックスがハンコック風だ。マクリーンは、いつでも、いい味を出している。聴く人によっては、いい作品なのかもしれないが、特段の感動はない。(hand)
Woody Shaw(tp flh),Hank Mobley(ts),Lamont Johnson(p),George Benson(g),Bob Cranshaw(b),Billy Higgins(ds)
ジャズロックといより、ギターのせいか、ジャズポップという感じだ。曲も含めてセルメンに近い。それ以外は、暗い演奏が多い新主流派的な曲を、明るめに、モブレーらしくない音色で元気に吹いている。ブラジル好きの私には意外と楽しめる盤だ。ジャケットまで珍しく笑顔だ!(やや無理した笑顔にも見える。)(hand)
まるでPOPSか映画音楽のようなReach Outから始まるこのアルバム。ギターのジョージベンソンの影響で、新しいハンクモブレーを感じることができる。聴きやすいといえば、その通りだが、ストレートでシンプルなモダンジャズを楽しみたい人には物足りなく感じるだろう。(ショーン)
ジャズロックがついにイージーリスニングジャズになってしまった。ジョージ・ベンソンのせいなのか?ポップな音楽が好きな人には聴きやすいと高く評価されるアルバムかもしれない。(しげどん)
Hank Mobley(ts), Kenny Drew(p), Niels-Henning Ørsted Pedersen(b),Albert Heath(ds)
イン・オランダと同時期のコペンハーゲンのカフェ・モンマルトルでの非公式録音だが、こちらの方が音が悪い。ケニー・ドリュー、ペデルセン、アル・ヒースの一流のハウス・リズム隊だ。ドラムの音が大きく録れているので、スティープル・チェイスに正式に録って欲しかった。ただ、モブレーの①ブルー・ボサは、この盤でしか聞かれないので貴重。リカード・ボサ的な曲なので、得意なのであろう。長いソロを吹いている。ワンホーンで17分超の③サマータイムも長いソロだ。④ワークアウトのライブも珍しい。後半に行くほど、ドラムのバランスが良くなっていく。ドリューもペデルセンもなかなかいい。(hand)
訪欧時のライブ音源で、ジャズロック渦中にあった時期の貴重なワンホーンのオーソドックスなジャズ。リズム隊もケニー・ドリュー、ニールス・ペデルセン、アル・ヒース、と一流だ。音は悪いが一曲がやたらと長く、ライブとしての迫力は味わえるので、マニアックなファンにはおすすめかも。やはりモブレーはハードバップの人だったのだ。最良のトラックは4曲目の自作曲ワークアウト。表題曲にしたアルバムは名盤化したが、このワンホーンでの熱演もいい。(しげどん)
Hank Mobley(ts),Pim Jacobs,Rob Agerbeek (p),Hans van Rossem,Ruud Jacobs(b), Cees See,Han Bennink(ds) ,Wim Overgaauw(g)
Hobby Orkest Orchestra
オランダでのテレビ放送用の3種類の録音の組合せ。TV用なので音はいいが、曲は短めだ。ピム・ヤコブなど現地リズム隊がとてもいい。オーソドックスに枯葉などのスタンダードをモブレーがワンホーンで演奏した盤は少ないので、ブルーボサとこの盤は貴重だ。(hand)
これも訪欧時録音で、3種の音源の組み合わせだ。最初のピム・ヤコブス(p)とのセットが最も緊張感あり、リズム隊も優れている。次のオーケストラとの共演は面白いが、特にモブレーらしさは出ていない。最後のライブ5曲はLPなら充分一枚分のボリュームで、Three Way Split(No Room For Squaresの冒頭曲)、枯葉、などで長尺の演奏をしているが、出来栄えは良くないように思う。リズム隊との連携もギクシャクした感じがする。(しげどん)
Dizzy Reece(tp),Slide Hampton(tb),Hank Mobley(ts),Vince Benedetti(P),Alby Cullaz(b),Philly 'Joe' Jones(ds)
ジャズロックっぽいドラムだが、よく聞くとスイングだ。モブレーは適合している。モブレーリーダー盤には珍しいトロンボーンもいい感じで入っている。(hand)
才能を持ちながら、なんとなく時代の流れに乗り切れなかったモブレーの最後の正規盤。でもすべてオリジナル曲でジャズロックからボサノバまで最後までヒットを狙うモブレーに泣けてくる。(しげどん)
1970年7月31日
Blue Note
おすすめ度
hand ★★★☆
しげどん ★★★
Woody Shaw(tp),Hank Mobley(ts),Ceder Walton(p),Eddie Diehl(g),Micky Bass(b),Leroy Williams(ds)
未発盤。ギターが活躍する。モブレーのプレイは、ディッピンがヒットした自信からか余裕ある大物感がある。作品としては、ジャズロック盤ではない。多分、それが未発の理由だと思う。(hand)
BGMにはいいおしゃれなジャズ。未発表作ながらスタジオ盤としての実質的な最終作。メロディアスな曲づくりとアレンジができるモブレーの行先はファンキーなジャズロックでも、フリーでもなく、このような作品だったのかも。このとき39歳だった彼は肺の病気で55歳でなくなるまでその後ほとんど演奏らしい演奏を残せなかったが、元気だったらフュージョンブームに乗ってもっとヒット作をだしていたかもと思わせる最終作。(しげどん)
※これもサード・シーズンと同じくLTシリーズが初出なので、CD時代のデザインも掲出しておきます。
1972年2月22日
Cobblestone
おすすめ度
hand ★★★
しげどん ★★★
Ceder Walton(p),Hank Mobley(ts),Charles Davis(ss,bs),Sam Jones(b),Billy Higgins(ds)
チャールズ・デイビスの激しいバリサクのソロがトップだ。何かをブレイクスルーしたいのだろうが、よくわからない。モブレーのソロは、頑張っているがあまり訴えてこない。②のエレピは、意外といい。④ピアノ・トリオでの「ある愛の詩」、これもいい。(hand)
双頭リーダーながら最終作になった一枚だが、かなり前向きにシリアスなジャズに挑戦している作品だ。1972年なので、音はやはりこの時代の音。もはやかっての「モブレー節」は聴かれなくなっている。(しげどん)
※この盤はオリジナルデザインのものはもう販売されていないようなので、現在販売中のデザインを掲出しておきます。