ホーズの初期はは、世間的な人気がとても高い時期です。特にレッド・ミッチェル、チャック・トンプソンと組んだVOL.1~3は高く評価され、人気もあります。これらの前にもわずかながらトリオ録音もあり、現在は集大成盤も出ています。この初期のコンテンポラリー時代は、ギターやテナーを加えたリーダー盤も吹き込んでいます。
・新宿ジャズ談義の会 :ハンプトン・ホーズ CDレビュー 目次
Hampton Hawes(p),
Joe Mondragon, Harry Babasin, Clarence Jones, Red Mitchell(b)
Lawrence Marable, Larry Bunker, Shelly Manne, Chuck Thompson, Mel Lewis(ds)
ザナドゥ、ディスカバリー、サボイ、プレステッジ、パシフィックなど、初期のトリオ(一部カルテット録音が集大成された好盤。プレステッジのカルテット演奏のみはフレディ・レッドとのカプリングで「ピアノ イースト/ウエスト」として定番化している(別掲)。51年の演奏は、西海岸のバドという感じで、バドに比べると西海岸的な明るさ、軽さ、慌たゞしさがある。魅力でもあり、弱点でもあると思う。52年は、かなりのバドを意識した演奏に感じる。56年になると、ライブのせいもあるとは思うが、音は悪いが私にはかなり聞きやすいバップピアノになってきた。「Vol.1」冒頭に収録の2⑰アイ・ゴット・リズムの再演は、アレンジはそのままだが、聞きやすさが多少違ってマイルドになっている。神がかり度が弱まったとも言えるのかもしれないが、聞きたくならないよりも、聞きたいほうがいい。この盤に収録されているホーズ入りの盤は「ザ・イースト/ウエスト・コントロバーシー」(ザナドゥ)、「アーリー・イヤーズ」(ザナドゥ)、「アイ・ジャスト・ラブ・ジャズ・ピアノ」(サボイ)、「ジャズ・ピアニスツ・ガロア」(パシフィック)など。(hand)
Hamp Hawes(p), Larry Bunker(vib), Clarence Jones(b), Lawrence Marable(ds)
ホーズとフレディ・レッドの10インチ2枚のカプリング盤。ホーズ分は「アーリー・イヤーズ」にも収録されている。ホーズは、ラリー・バンカーのバイブ入りカルテットなので、ピアノの主役度は下がるが、一応、リーダー録音なので、ホーズの張り切りは感じる。(hand)
Hamp Hawes(p), Red Mitchell(b), Chuck Thompson(ds)
やはり名盤と言われるだけのクオリティはある。神がかり的な何かも感じる。ただ、私自身は、この盤は西海岸的な慌たゞしさを強く感じてしまい、あまり得意な盤ではない。レッド・ミッチェルのベースは素晴らしい。ミッチェルは、元祖スコット・ラファロとでも言うべきプレイをしていて、単なるリズム・キーパーの域を超えてインタープレイの手前まで行っていると思う。(hand)
初期の代表作。同一メンバーでの2回の録音を、Vol.1~Vol.3まで三作に分けて発売された。したがって内容はほぼ同レベルで選曲の違いでの好みの差くらいしかない。この第一集は一番勢いがあり代表作とされている。ホーズのドライなタッチのピアノ特徴が良くでている。(しげどん)
ハンプトンのピアノは、縦横無尽に翅を伸ばして、軽快にスイングする。また、レッドミッチェルのベースが、とてもメロディアスに伴走してくれるので、トリオとは思えない厚みと充実感のある演奏となっている。どの曲も良く仕上がっており、聴きやすくて素晴らしいアルバムだ。(ショーン)
Hamp Hawes(p), Red Mitchell(b), Chuck Thompson(ds)
55年12月3日録音5曲②④⑤⑧⑨を主体としながら、半年前の6月28日録音の「Vol.1」から1曲⑦、翌56年1月25日録音の「3」①③⑥なので、タイトルどおり「1」と「3」の中間的な盤といえるが、時期的には「3」に近い。半年で「Vol.1」の慌たゞしさが弱まり、よく知られる曲が多いこともあり、親しみやすい内容になっていると思う。ところで、ホーズの慌たゞしさはどこから来るのか考えてみた。よく言えば、ピアノが上手い。運指が速く、打鍵も強く、粒立ちがいい。悪く言えば、ピアノが上手過ぎて、次の音に早く移ることはできるが、一音一音がスタカット的で、尖った音の連なりのようになってしまうのが理由ではないかと思う。速弾きで知られるフィニアスのピアノが慌たゞしくないのは、スピードは速くとも、弾き方がレガート的で音同士の連なりができているのだと思う。(hand)
三部作の二作め。前作にくらべて選曲のせいかややおちついた情感をかんじさせる作品。(しげどん)
軽快でノリも良く、自然と身体がスイングするような良いアルバムだ。オーソドックスな演奏で、新鮮味はあまりないが、楽しく聴ける安心感がある。さすがハンプトンだ。(ショーン)
Hamp Hawes(p),
Paul Chambers(b), Lawrence Marable(ds)
⑧⑩⑫:Scott LaFaro(b), Frank Butler(ds)
1999年の発掘盤。タイトルどおりのパーカー曲集で、なぜ未発になったかは不明な出来。「Vol.2」と「3」の間に挟まり、発表しにくかったのだろうか。チェンバース、ラファロという日本人には超人気ベース入りの2セッションが収録されている。⑬ブルース・フォー・ジャックの別テイクの入った盤もある。ラファロとバトラーの3曲は「フォー・リアル」の3月17日かもしれない。(hand)
死後発掘された作品で、ベースはポール・チェンバースとの事。2曲が58年の録音とので、このへんの経緯もよくわからない。ドライなタッチではなく、重々しい雰囲気でバップチューンを演じていて、トリオ三部作とはかなり雰囲気が変わる。本当にホーズなの?という印象だが、演奏としては悪くはない。(しげどん)
Hampton Hawes(p), Red Mitchell(b), Chuck Thompson(ds)
「Vol.1」から多少時間のあいた「Vol.3」。ジャケも全く関係ないワニだ。「Vol.1」と「Vol.2」に比べると、尖り度がほんの多少だが弱まり、聞きやすくなっていると思う。過去の評論家さんは「Vol.1」ばかりやたらと褒めるのは、尖りピアノがよほどお好きなのだろう。後期のホーズが好きな私としては、年月とともにだんだん良くなるホーズのピアノ!という感じで聞いている。(hand)
三部作の最終作。ワニのイラストが良い感じで、アナログ盤を部屋に飾るにはピッタリのジャケットで、ジャケットの分だけ+☆おまけした。演奏としては前2作と大きくは変わらないが、ジャケットのイメージに沿った小粋で楽しめる作品だ。中後期の演奏に比べて情感が足りない感もあるが、このケレン味のないドライなタッチもなかなか捨てがたいのだ。(しげどん)
比較的スローで静かな曲が多く、大人の雰囲気がある。逆に言うと少し単調に感じる部分もあり、そこに物足りなさを感じる人もいるかもしれない。アルバム全体の演奏の完成度はそれなりに良いものがある。(ショーン)
Hampton Hawes(p), Jim Hall(gr), Red Mitchell(b), Chuck Thompson(ds)
アナログ3枚、CD2枚組のホーズの最大のボリューム盤。トリオにギターのジム・ホールを迎えたカルテットの徹夜での録音。ライブと勘違いしやすいがスタジオ盤だ。初期の特徴である慌たゞしさは消えてはいないが、少しずつ弱まり、私の好感度は高まっていく。ホーズの影響か、ホールのギターも割と激しい面を見せていて好感だ。(hand)
アナログではVol.1~Vol.3の三枚。キング盤のコンテンポラリーは1500円の廉価盤シリーズだったが、なかなかLP三枚オトナ買いはできず、この三枚を聴いたのはかなり後年で、しかも中古で安く出ていたからやっと買えた。CDでは二枚ものなので、通しで聴くには聴きやすいし、曲順もアナログと同じ。で、通しで聴くと二枚目のほうが良い出来だと思う。アナログだとVol.2のB面からVol.3にかけてノリが良く、この曲順で録音したのかどうかわからないが、だんだん白熱してくる感じがする。(しげどん)
Hampton Hawes(p), Barney Kessel(gr), Red Mitchell(b), Shelly Manne(ds)
「オールナイト・セッション」同様のギター入りカルテットだが、2カ月前にバーニー・ケッセル盤「レッツ・クック」に誘われたお礼なのかギターはケッセルだ。ケッセルよりジム・ホールが好みの私としては残念なことだ。ケッセルのギターは典型的な西海岸っぽい軽さがウリなのだと感じている。ホーズを慌たゞしくさせないためには、軽くないメンバーとの共演が望ましいと思う。あくまで個人的な好みの問題だが、音の太いウエスやバレル、白人ではホールが好みで、音の軽いケッセル、ハーブ・エリス、黒人でもグラント・グリーンはあまり好みではない。白人で音は太いタル・ファーロウは、慌たゞしさがあまり得意ではない。以前より落ち着いたホーズだが、繰り返し聞きたい盤とは思えなかった。(hand)
Hamp Hawes(p), Harold Land(ts), Scott LaFaro(b), Frank Butler(ds)
この時期のホーズ盤としては特色を持つ盤。まずスコット・ラファロの参加、そしてハロルド・ランド入りのテナーのワンホーン盤ということだ。ドラムもフランク・バトラーで西海岸ではフィリー的な暴れ感のある人だ。西メンバーによる西録音ながら、東指向を持つメンバーだと思う。ラファロはバッキングにもソロにも存在感を示している。ランドとバトラーは多少遠慮している感があり、後半に勢いが出てきた感じなので、もっと本領発揮してくれれば、かなり名盤に近づいたと思われる。(hand)
アレンジなどのグループ表現の要素が多くなる二管、三管と違い、ワンホーン作はテーマ吹奏の部分からホーン奏者の個性がもろに出て、そこが盤全体の良し悪しを決めてしまうのではないかと思う。ハロルド・ランドは名手だが、テーマ部分での訴えかけが弱い気がする。ソロ部分を聴いていると悪くはないが、盤全体的には強い印象の曲が少なく感じる一枚。(しげどん)
Hamp Hawes(p), Leroy Vinnegar(b), Stan Levey(ds)
ロリンズの「コンテンポラリー・リーダーズ」の翌月、ベースのリロイ・ヴィネガーはそのままに、ドラムをスタン・リービーに変えて録音したスピリチュアル集。サーモンは鮭(salmon)ではなく教会での説教のこと。ホーズの父親は大教会の有名な牧師で、母親は教会のピアニストだったということで、ホーズとスピリチュアルは自然な組合せだということが分かる。ホーズはこの録音の5日前に麻薬容疑で逮捕され収監待ちの間に録音したらしい。そのせいかどうかわからないが、発売はホーズの死後10年経った87年だ。収監が短くなるよう祈りの盤なのかもしれない。ホーズのこの時期はまだ少し慌たゞしさの残る弾き方と教会音楽は微妙に合っていない気がする。ラストの唯一オリジナル⑧ブルースN/Cは、ブルージーではないがなんだかいい感じだ。レイ・ブライアント「トリオ」を思い出した。オルガンのジミー・スミスにも「サーモン」という盤があり、スミス作のサーモンという曲も入っている(ホーズ盤にはタイトル曲はない。)。(hand)
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