Eric Dolphy エリック・ドルフィー リーダー作②


ブッカー・リトルとのファイブスポットでの録音後、ドルフィーは単身、欧州楽旅に出て、現地のミュージシャンとの録音を何枚か残しています。帰米直後に、ブッカー・リトルが亡くなり、ドルフィーは新鋭ハービー・ハンコックを迎えて演奏を行っています。(しげどん)


BERLIN CONCERT / Eric Dolphy

1961.8.30

Enja

おすすめ度

hand      ★★★☆

しげどん ★★★★☆

Eric Dolphy(as,b-cl,fl), Benny Bailey(tp), Pepsi Auer(p), George Joyner(b), Buster Smith(ds)

欧州ツアーは現地のメンバーと。この日はベルリン

アナログ2枚組がCD1枚に。同日にベルリンのホールとクラブに出演した記録なので、タイトルは複数形のコンサーツが正しい。この盤と「ストックホルム」はかなり早くCD化されていたと思う。アナログで「ファイブ・スポット」の2枚を聞き、ドルフィーに親しみを感じたので購入し全く馴染めなかった記憶がある。ファイブスポットのオリジナル中心の方が初心者には馴染みやすいというのもドルフィーの特異なところだと思う。ドルフィーのスタイルは、パーカーを本流とした場合、どう考えても変異株的な内容だと思うので、私自身今は聞くことができるが、初心者向けではない。ビバップ曲①ホット・ハウス、をパーカーとは全く違うスタイルで演奏する。この盤の特徴は、トランペットのベニー・ベイリーが参加していること。ベイリーのソロになると普通のビバップ盤になる。(hand)

アナログ時代は二枚組。ドルフィの魅力を味わえるライブだ。現地ミュージシャンとのセッションになるので、やむをえずスタンダード中心の選曲になったのかも知れないが、それがなかなか興味あるものになっている。ダメロンのホットハウスや、ベニー・カーターのオリジナル曲は、ジャズファンなら耳に馴染んだ曲で、もちろんドルフィは彼の個性で演じるんだが、根本のところは違和感がなく、むしろそこに根差していたというドルフィの本質が味わえる発見がある。素晴らしい作品だと思う。(しげどん)



UPPSALA CONCERT VOL.1 / Eric Dolphy

1961.9.4

Marshmallow

おすすめ度

hand      ★★★★☆

しげどん  ★★★★

ショーン  ★★★★☆

Eric Dolphy(as,b-cl,fl), Rony Johansson(p), Kurt Lindgren(b), Rune Carlsson(ds)

スウェーデンのウプサラでのコンサート録音

日本タイトルが「ウプサラ」と「ウプッサラ」があるので検索しにくい。ウプサラはスウェーデン、ストックホルムの北75kmにある人口第4位の都市。この盤がなければ知らなかった。正規録音に比べて多少見劣りする程度で私には満足できる音。内容は素晴らしく、メンバーと選曲のせいか、このツアーの録音の中では最も親しみやすく感じた。当初、仏SereneというレーベルからVol.1と2として80年代末か90年代初めにCDが出て、その後2001年に日M&Iが、2009年に上不さんのマシュマロがCDとアナログを出し、欧Naked Lunchがアナログを出している。2枚組CDは1993年独JazzDoor、2005年欧Gambitがある。いずれもジャケが違うのは紛らわしくファン泣かせだと思う。(hand)

非正規録音のためかバランスが悪い。245というオリジナル作品でのドルフィのソロに圧倒される。(しげどん)

高音域の掠れるアルトで、独特の語り部たるドルフィーが、詠々とかつ熱を持って演奏で、緊張感を会場全体に与える。ルネ・カールソンの荒々しいドラムは、とても力強く、全体の色付けに大きく寄与していて、ドルフィーの世界観に上手くマッチしている。興味深くそそられる演奏だ。(ショーン)



UPPSALA CONCERT VOL.2 / Eric Dolphy

1961.9.4

Marshmallow

おすすめ度

hand      ★★★☆

Eric Dolphy(as,b-cl,fl), Rony Johansson(p), Kurt Lindgren(b), Rune Carlsson(ds)

ウプサラ・コンサートの第2集

1961年8月30日ベルリン、9月4日ウプサラ、9月6日、8日コペンハーゲン、9月25日、11月29日ストックホルムの記録があり、「ウプサラ」は公式録音の「イン・ヨーロッパ」の直前の盤となる。ヨーロッパが発売を前提としたのかコンパクトな演奏が多いのに対し、ウプサラは長尺が多い。残念なのはヨーロッパよりも、ベルリン&ストックホルムよりも音が良くないことだ。ただ、鑑賞に支障はなく、十分に楽しめる内容だ。後半にドルフィーのインタビューを収録している。(hand)



IN EUROPE VOL.2 / Eric Dolphy

1961.9.6

Prestige

おすすめ度

hand      ★★★★★

しげどん  ★★★★

ショーン  ★★★★☆

Eric Dolphy(as,b-cl,fl), Bent Axen(p), Erik Moseholm(b), Jorn Elniff(ds)

コペンハーゲンでの公式ライブ録音の第2集

Vol.2だが、Vol.1の2日前の録音。演奏楽器は①とCD追加のその別テイク⑤がフルート、②③④がアルト。アルト好きの私にはこのアルト3曲が興奮できる素晴らしさ。ベント・アクセンを中心にしたデンマークのトリオとの共演もとても相性がいいと思う。作品としては⑤はない方がいい。エッセンシャルから出ているVol.1〜3のコンプリート盤2枚組CDは収録曲に誤りがあるらしい。(hand)

この第二集もフルートからはじまる。あとはアルトだが、タイトルが間違ってMiss AnnとされたLesというドルフィのオリジナルが一番良くて、スタンダードはやや保守的な普通のハードバップに近づいている感じがする。サイドメンも質的な問題ではなく、レギュラーグループではないので、ドルフィの前衛性に沿った選曲があまりできなかったのではないかと思う。逆にドルフィの柔軟性はすごいと思う。(しげどん)

メロディアスで美しいフルートの語りは、これから始まるドラマチックな物語のプロローグのようであり、実際The Way You Look Tonight では、ドルフィーのアルトは一気に激しく攻めまくり、その勢いは会場全体を巻き込み凄いのだ。(ショーン)



IN EUROPE VOL.3 / Eric Dolphy

1961.9.6 & 8

Prestige

おすすめ度

hand      ★★★★★

しげどん  ★★★★☆

ショーン  ★★★★

Eric Dolphy(as,b-cl,fl), Bent Axen(p), Erik Moseholm(b), Jorn Elniff(ds)

コペンハーゲンでの公式ライブ録音の第3集

他の2枚がフルート曲から始まるのに対し、この盤①ウッディン・ユー、はアルトから始まる。私の中ではドルフィーの主楽器はアルトで、バスクラやフルートはどちらも最高に素晴らしくはあるが持ち替え楽器なのだ。なのでアルトから始まり、アルト比率の高い盤の評価が高くなりがちだ。ドルフィーのオリジナルにいいものもあるが、スタンダードや他のジャズマンの有名オリジナルをやった時のドルフィーの調理ぶりが刺激的でとても楽しいと思う。フルートの場合はオーソドックスになりがちだがアルトやバスクラは破天荒で面白い。(hand)

第三集はバップ・スタンダードであるウディン・ユーからで、これも保守的な流れかと思いきや、意外とドルフィらしさ全開のいいソロを聴かせる。When Lights~はやや保守的にもどり選曲が残念な感じ。B面のIn the Bluesもなかなか良い。3テイク同じ曲が続くので、アルバム編集としては雑な印象を受ける。(しげどん)

アルトの速吹きは、ドルフィーの真骨頂だ。澱みなく続くブローイングが会場を圧倒が、やや単調になるきらいがある。(ショーン)



IN EUROPE VOL.1 / Eric Dolphy

1961.9.8

Prestige

おすすめ度

hand      ★★★★☆

しげどん  ★★★★☆

ショーン  ★★★★☆

Eric Dolphy(as,b-cl,fl), Bent Axen(p), Chuck Israels(b①), Erik Moseholm(b②-④), Jorn Elniff(ds)

コペンハーゲンでの公式ライブ録音の第1集

「ファイブ・スポット」と雰囲気は全く違うが、「ファイブ・スポット」と同様にあるいはそれ以上に聞きやすい3枚。この渡欧時の録音はどれも比較的いい内容だが、プレステッジの正規盤3枚は内容も音も一頭地飛び抜けている。多分、発売を前提のコンパクトな演奏で、録音機材もきちんとセッティングされたのだろう。「イン・ヨーロッパ」の3枚はVol.2が61年9月6日、Vol.1が9月8日、Vol.3が6日と8日のミックスとなっていて、日付け順を重視するディスコグラフィー的にはややこしい状況にある。Vol.1は偶々?現地にいたチャック・イスラエルが1曲だけドルフィーのフルートと共演した①ハイ・フライ、と③ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド、のバスクラのソロ演奏が有名な盤だ。他の2曲のトリオ入り演奏も②フルート、④バスクラでアルトがないのが私には残念な点だ。(hand)

イン・ヨーロッパ3部作はアルバムとしては選曲に偏りがある。Five SpotはVol.1を代表の一枚にしてよいが、In Europeは3枚全部聴かないとこのライブの面白さはわからないと思う。その中でもこの第一集はユニークな編成の一枚になっている。一曲目はベースとのフルートでのデュオ。チャック・イスラエルが参加したのはこの一曲だけ。どのような経緯なのか私は知らないが、強いインパクトがあり、この一枚の価値を高めている。続く曲もフルートで、B面に入ってようやくバスクラが登場するが、これがなんとソロ。最後はワンホーンカルテットのバスクラ。と様々な形態のドルフィが味わえる実験性がある。でも、コンサートの曲順から考えると、この収録順はやや疑問。変化に富んだ価値ある作品とは言えるが・・・(しげどん)

アルトサックスも素晴らしいが、2曲目のsorinoでのドルフィーのバスクラリネットの音色は、独特の哀愁を帯び、どことなく懐かしさを感じて、素晴らしい。ジミー・ウッドのベースも語るようなメロディラインで、良い雰囲気だ。フルートのleft aloneも泣かせる演奏で、多彩な天才の魅力が満載の素晴らしいアルバムだ。(ショーン)



STOCKHOLM SESSIONS / Eric Dolphy

1961.9 & 11

Enja

おすすめ度

hand      ★★★★

しげどん  ★★★★☆

ショーン  ★★★★☆

Eric Dolphy(as,b-cl,fl), Idrees Sulieman(tp), Knud Jorgensen, Rune Ofwerman(p), Jimmy Woode(b), Sture Kallin(ds)

ストックホルムでの61年9月と11月の2セッション

この時期の8〜9月の一連の録音と少し離れた11月の録音を含む。11月の録音はトランペットのアイドリス・スリーマンが③⑥に参加している。「ベルリン」よりも親しみやすく聞こえる。選曲とメンバーのせいだろう。アルトから始まるのもいい。(hand)

初期の頃からのオリジナル曲や、よく演奏しているスタンダードなど、選曲がバランス良く組まれて、聴きやすい作品になっている。地元ミュージシャンもいい演奏している。(しげどん)

アルトサックスも素晴らしいが、2曲目のsorinoでのドルフィーのバスクラリネットの音色は、独特の哀愁を帯び、どことなく懐かしさを感じて、素晴らしい。ジミー・ウッドのベースも語るようなメロディラインで、良い雰囲気だ。フルートのleft aloneも泣かせる演奏で、多彩な天才の魅力が満載の素晴らしいアルバムだ。(ショーン)



GREEN DOLPHIN STREET Live In Germany = MUNICH JAM SESSION / Eric Dolphy

1961.12.1

Stash

おすすめ度

hand      ★★★☆

Eric Dolphy(b-cl,fl), McCoy Tyner(p), Reggie Workman(b), Mel Lewis(ds)

コルトレーン・バンドの欧州ツアー中の海賊セッション

コルトレーンのバンドでのヨーロッパツアー中のドルフィーがリーダーの海賊セッション。音は海賊音質ではない。日本盤も含めて、様々なタイトルやジャケで出されている。アナログ時は主に単なる「1961」で3曲だったが、CD化でオレオが追加になっている。日本ではジャケには「Live In Germany」で日タイトルが「グリーン・ドルフィン・ストリート」となり現在に至る。米国では「Softly, As In A Morning Sunrise」、欧州では「Munich Jam Session」として出ている。コルトレーンとのツアー中なので、マッコイ・タイナー、レジー・ワークマンまではいいが、ドラムがメル・ルイス?と違和感を持つが、コルトレーンのツアー自体にエルビン・ジョーンズに代わってルイスが入りながらだったようだ。スタジオ録音とあるが拍手入りなので放送用のスタジオ・ライブなのかもしれない。①グリーン・ドルフィン・ストリート、は「アウトワード・バウンド」以来で、23分の長尺なので貴重だ。ドルフィーのいななきバスクラが堪能できる。この日はアルトは持って来なかったのか珍しくバスクラのみだ。④オレオ、の前半はマッコイの長いトリオ演奏で、ロリンズのこの曲がモーダルに演奏されるのは珍しいと思う。欧盤「ミュンヘン」には⑤インプレッションズが入っているが、これは1週間前11月24日のコルトレーン5のテレビ用録音で、エルビンが入りドルフィーはアルトを吹いている。欧ローンヒル盤「エリック・ドルフィー5・フィーチャリング・ラロ・シフリン・コンプリート・レコーディングス」はマッコイに代わり一部ラロ・シフリンが入っていると表記されているが間違いだと思う。内容は他と全く同じだ。(hand)



VINTAGE DOLPHY / Eric Dolphy

⑤1962.3.10

④⑥1963.3.14

①②③1963.4.18

GM Recordings

おすすめ度

hand      ★★★☆

Eric Dolphy(as,fl,b-cl,cl),

①-③:Ed Armour(tp), Richard Davis(b), J. C. Moses(ds)

④:Gloria Agostini(harp),Eddie Costa, Warren Chiasson(vib), Richard Davis(b)

⑤:Barry Galbraith(gr), Art Davis, Chuck Israels(b), Sticks Evans(ds)

⑥:Lewis Kaplan, Matthew Raimondi(vln), Samuel Rhodes(viola), Michael Rudiakov(cello), Richard Davis, Barre Phillips(b), Jim Hall(gr),  Sticks Evans(ds)

⑦:Phil Woods(as), Benny Golson(ts), Don Ellis, Nick Travis(tp), Jimmy Knepper(tb), Lalo Schifrin(p), Barre Phillips(b), Charlie Persip(ds)

マニア向けの発掘ライブ

86年発掘の62、63年のライブ。チコ時代以来の珍しいギターとの共演。初心者向きではないが、ドルフィーらしさが出た盤。改めてドルフィーの楽器の上手さを感じる。(hand)



LEFT ALONE / Eric Dolphy

1962.10.7

Stash

おすすめ度

hand      ★★★☆

Eric Dolphy(as,fl,b-cl), Ed Armour(tp), Herbie Hancock(p), Richard Davis(b), Edger Bateman(ds)

帰米後のライブにはハンコックが参加

コルトレーン5での欧州ツアーが終わり帰国したドルフィーのニューヨーク“ガスライト”での単独ライブ。ピアノに新鋭ハービー・ハンコックを迎えている。ドナルド・バードのバンドに参加した時期で、ハンコックのフレッシュで元気なプレイが聞かれる。トランペットは無名?のエド・アーモア。調べたところ、ミンガス、ハバードの共演がある。録音は「ミュンヘン」よりも悪いが、何とか鑑賞に堪える音だ。バスクラがなく①アルト②フルート③④⑤アルトを吹いている。苦手な男性ビバップボーカル、ジョー・キャロルが参加。苦手なだけでなく、この盤の雰囲気に全く合っていない。②レフト・アローン、は日本タイトルに選ぶだけあり、名曲の名演だと思う。(hand)