ミンガスの欧州ツアーに参加し、終了後ヨーロッパに留まったドルフィーですが、その2か月後に36歳で早逝してしまいます。ドルフィーは活動期間が短く、正規録音は多くありませんが、海賊録音が多く残されていまます。正規盤の人気は高いですが、海賊的な盤もそれなりのクオリティを持ち、人気もあります。(しげどん)
・新宿ジャズ談義の会 :エリック・ドルフィー CDレビュー 目次
・Eric Dolphy CDリーダー作③・・・このページ
Eric Dolphy(as,fl,b-cl), Ed Armour(tp), Herbie Hancock(p), Eddie Khan(b), J.C. Moses(ds)
⑥:University of Illinois Brass Ensemble
⑦:University of Illinois Big Band
35年後の発掘盤。レーベルがブルーノートで、ハンコックとの共演もあり、発売時にはスイングジャーナル誌で大きく取り上げられた。私もその時に購入して聞いたが、ピンとこないのでそのまま20?年間、一度も聞くことなく今日に至った。今回、改めて聞くと、ドルフィーは相変わらず素晴らしく、デビュー直後でドナルド・バードのバンドに加入した頃のハンコックもなかなかいいと思えた。やはり、ドルフィーは、入門者にはハードルが高いミュージシャンなのだと再認識した。発売時のプロデュースはマイケル・カスクーナで、多分、録音順を尊重したと思われるが、聞く側からすると、バスクラ3曲→フルート1曲→アルト3曲、最後2曲がイリノイ大のビッグバンド共演となっており、私自身そうだったが最初4曲バスクラの暗い感じにめげてしまうので、楽器の登場を勢いのあるアルトからにしたほうが馴染みやすかったように思う。(hand)
Eric Dolphy(as,fl,b-cl), Woody Shaw(tp①), Bobby Hutcherson(vib①), Clifford Jordan(ss②), Sonny Simmons(as②), Prince Lasha(fl②), Eddie Khan(b①), Richard Davis(b②③), J.C. Moses(ds①), Charles Moffett(ds②)
他のアーチストとドルフィーの大きな違いの一つは、3楽器をほぼ均等に持ち替えていることだと思う。コルトレーンやショーターはソプラノも吹くが基本的にはテナープレイヤーとしてカテゴライズされると思う。ドルフィーの場合、アルトの比重がやや高いようにも思うが、この盤のようにフルートから始まることも多い。盤の印象は楽器によるものが大きく、特に冒頭曲が盤の印象を決定づけるように思う。前半がフルートの①ジターバグ・ワルツで賑やかに始まる。アルトの②ミュージック・マタドールもラテン。後半がリチャード・デイビスとのデュオなのでこのタイトルが付けられたと思うが、クラシカルな演奏で、この後半は私は苦手だ。この盤は現在、「ミュージカル・プロフェット」という3枚組CDのDisc1として収録されている。(hand)
Eric Dolphy(as,fl,b-cl), Woody Shaw(tp), Bobby Hutcherson(vib), Clifford Jordan(ss), Sonny Simmons(as), Prince Lasha(fl), Eddie Khan(b①), Richard Davis(b), J.C. Moses(ds)
同時期セッションの「カンバセーション」がクラシカルな内容が中心だったが、こちらタイトル曲①は、タイトルどおり鉄は熱いうちに打て的なドルフィー流ハードバップの激しい演奏で好感だ。②マンドレイク、も同様だ。エリントンの③カム・サンディ、はリチャード・デイビスのアルコとドルフィーのバスクラのデュオだが、バラードなので聞きやすい。④バーニング・スピアも勢いがある。⑤オード・トゥ・チャーリー・パーカー、もリチャード・デイビスとフルートのデュオだが、これもビート感があるので聞きやすい。ただ、ラストにやはり不思議な演奏が収録されていて、約15分の長尺曲⑥パーソナル・ステイトメント、はドルフィーのアルト、バスクラ、フルートにフリーなピアノとパーカッション、そして何よりも能の唄いのような、お経のような女性のボイスで、かなり難解だ(この曲のみ64年3月2日)。この盤は現在、「ミュージカル・プロフェット」という3枚組CDのDisc2として収録されている。(hand)
Eric Dolphy(as,fl,b-cl), Woody Shaw(tp), Bobby Hutcherson(vib), Clifford Jordan(ss), Sonny Simmons(as), Prince Lasha(fl), Eddie Khan(b), Richard Davis(b), J.C. Moses(ds)
2018年に発売された3枚組CD「ミュージカル・プロフェット」は「カンバセーション」と「アイアン・マン」がDisc1&2として収録されており、Disc3のみが初出となる。63年7月1日と3日のセッションから前記2枚がピックアップされ、残り物の別テイク集がDisc3となり、2枚とは全曲が被っている。ただ、必ずしも悪い内容ではない。最終セッションのリチャード・デイビスとのデュオがないので印象がいいのだと思う。(hand)
Eric Dolphy(as,fl,b-cl), Freddie Hubbard(tp), Bobby Hutcherson(vib), Richard Davis(b), Tony Williams(ds)
名門ブルーノートからの名盤の誉れ高い盤だが、私には最初から苦手だった盤。お昼ごはんに行ってきます!の楽しさはなく、あの世に行ってきます!みたいなぞっとする寒さを感じる盤だった。今回、聞いた感想もあまり変わらなかった。ボビーハッチャーソンのメタリックな音色、フレディの感情を排したようなトランペット、そこにドルフィーのバスクラとフルートで凍死しそうになる。(hand)
全曲彼のオリジナルで、ブルーノートらしく丁寧な作り、しかもメンバーも申し分ない満を持した作品だ。でも私にとってはとっつきにくい作品で、今回聴き直してもその印象は変わらなかった。ドルフィは音楽理論にも長けているので、長生きしたら作曲やアレンジでももっと才能を開花させてかもしれないが、今のところ私が聴いた作品で評価すると、やはりプレイヤーとしての魅力がすばらしいと思うので、この作品でも彼のソロは悪くないのだが、凝りすぎたアレンジのため、なかなか聴き返す気にならない作品だ。(しげどん)
ヴィブラフォンとバスクラリネットが加わることで、JAZZもこんなに変幻自在に聴く者を驚かせてくれるのか?と思うほど、斬新な演奏でとても面白い。スリラー映画を観ているような、聴覚が視覚を支配してしまう芸術性の高さを感じる。(ショーン)
Eric Dolphy(as,fl,b-cl), Misha Mengelberg(p), Jacques Schols(b), Han Bennink(ds)
おどろおどろしい感じのバスクラから始まるが、モンク曲①エピストロフィー、なので親しみを感じることができた。私の聞き方は、やはり曲の良し悪しによる部分が大きい。ジャズなので、アドリブソロの良し悪しはもちろん重要だが、アドリブの元となる曲が良くないと楽しみも半減すると思う。②サウス・ストリート・イグジット、はフルートでのスピード感のある曲。③④のオリジナルは、テンポは微妙に違うが似通った曲だと思う。⑤君は恋を知らない、名曲の名演として定評のあるフルート演奏。そのとおりだと思う。 ⑥ミス・アン、何度も録音のあるドルフィーのオリジナル。いつもどおりにアルト。リズム隊のせいかスインギーに演奏される。(hand)
これほどまでに緊張感のあるライブは中々ないと思う。研ぎ澄まされた緊張感がありながら、冒頭から引きずりこまれる魅力がある素晴らしさ。全曲素晴らしいがYou Don't Knowは彼のフルート演奏中最高のもの。名曲Miss Annもこの演奏が私は一番好きだ。(しげどん)
ドルフィーの一瞬難解なブローイングは、聴き進めて行くにつれ、ドルフィーマジックの沼にハマっていく心地よさがある。芸術性の高い作品といえる。他のメンバーすらも圧倒するようなドルフィーの演奏は凄みを感じる。(ショーン)
Eric Dolphy(as,fl,b-cl), Donald Byrd(tp), Nathan Davis(ts), Jacques Dieval(p), Jacques Hess(b), Franco Manzecchi(ds), Jacky Bambou(conga)
ドナルド・バードとの珍しい放送用録音が現時点(2023年1月)のドルフィーのラストとなる。春のミンガスの欧州楽旅後、ドルフィーは帰米せずヨーロッパに残り、このパリ録音の18日後には亡くなることとなる。残ったのは、アメリカに戻っても仕事の予定がないという残念な理由らしい。バードはハードバップからブラックファンクに向かったので、なぜドルフィーと?となるが、バードのメンバーであったハンコックがドルフィーと62年から63年にかけて共演しており、その縁かもしれない。ドルフィーとバードがどう化学反応するか不安があったが、バードはさすがにうまく対応していて、アヴァンギャルドではないがその場には適合したソロを吹いている。テナーのネイザン・デイビスも地味ながら3管の一翼を担いこの盤の価値を高めている。この盤は、過去には色々な形で出ていたが現在の6曲入りのこの盤が決定盤だと思う。①スプリング・タイム、はこの盤のみで聞かれるドルフィー曲。バスクラでドルフィーらしさが溢れる曲だ。②はアルト、いつもよりかなりテンポ速い。③もアルト、④はバスクラでスインギーに、⑤はフルート、⑥ネイマ、はコルトレーンとの共演時(「バンガード」、「ヨーロピアン・ツアー」)以外では唯一の演奏。コルトレーン時と同様にバスクラで演奏している。パーカッションが効果的だ。(hand)
死の直前のライブ。ドナルド・バードとの双頭コンボで、フロントラインは3管だ。でもアレンジは特に凝っておらず、ドルフィのソロの魅力がストレートに味わえる。彼のオリジナルが多く収録されていて、魅力ある記録だ。(しげどん)
springtime 壮大な映画のプロローグのようなスタート。どことなくアジアンな香りのするドルフィーのバスクラリネットのフレージングとフランコのドラミングが冴え渡り、独特の雰囲気を漂わせる。続く245もブルージーなノリで冒途中から少しダレ、後半の曲はいまいちいち。(ショーン)
・新宿ジャズ談義の会 :エリック・ドルフィー CDレビュー 目次
・Eric Dolphy CDリーダー作③・・・このページ