初期の名盤集
ドナルド・バード(1932.12.9~2013.2.4)は、多くのモダンジャズメンを輩出したデトロイトの出身です。ハイスクール時代には頭角を現し、地元州立大学を卒業後、マンハッタン音楽院で学び、初リーダー録音は1955年8月に22歳で行っています。先輩達に気に入られ、ジョージ・ウォーリントン5、アート・ブレイキーのジャズ・メッセンジャーズに招かれたほか多くのジャム的な録音にも参加しています。
アナログ時代の幻盤だった
ウォーリントン5
アルトのジジ・グライスとジャズ・ラブを結成した後、バリトンのペッパー・アダムスとの双頭クインテットが成功し、ブルーノートを中心に黄金時代を迎えました。60年代には若きハービー・ハンコックの才能を認め活用したほか、アルトのソニー・レッドとのクインテットも高いクオリティを持っていました。
ペッパー・アダムスを加えた三管の名作=Byrd In Hand
大きな転機は、70年代にエレクトリック・ファンクの導入によって起こりました。ブラックバーズなど新ジ談的にはなかなか理解しにくい時期ですが、世間の評価は高く、ビジネス的にも大成功したようです。最後は、正統派ジャズに戻ったバードですが、トランぺッターとしてよりも教育者、プロデューサー的な色合いが濃くなって最後を迎えたように思います。(しげどん)
・新宿ジャズ談義の会 :ドナルド バード CDレビュー 目次
今回の新ジ談3人の談義の中でもやはり圧倒的に高評価だったのは「フュエゴ」だった。続いてバード=アダムス+ピアソンのヒット曲集ともいえる「ハーフノート」のライブ2枚。
最高の人気作=フュエゴ
勢いがほとばしる名ライブ
そして未発盤ながら高評価となったのが「チャント」、ハンコックの加入が大きいと思う。続いてもバード=アダムスを象徴するような「イン・ハンド」。
後期からソニー・レッドとの双頭盤「ブラックジャック」が滑り込んだのは嬉しい。次点は初々しいバードがワンホーンで聞ける「ビーコンヒル」であった。しげどんが推していた「イン・フライト」は惜しくも選外となった。
初期のワンホーン作=ビーコンヒル
バードのリーダー盤、共同リーダー盤の対象とした今回の56枚のうち、私が満点の5★を付けたのは「フュエゴ」と「ブラックジャック」の2枚だけだった。自信を持って愛聴に値する盤としてオススメ可能と考えた盤だ。これまで取り上げてきたアーチストの中では最少かもしれない。ただ。4.5★や4★の盤は多数あり、その中からご自身の肌に合う盤を見つけていただけると嬉しい。もちろん、ブラックファンク期の“評価不能”や0.5★や1★を付けた盤については、その手の音楽が好きな方には失礼と思いつつ、感じたままに評価しただけなので、このサイトを単なるディスコグラフィーとして活用して、お気入り盤を探していただければと思う。(hand)
1959.10.4
Blue Note
おすすめ度
hand ★★★★★
しげどん ★★★★★
ショーン ★★★★★
Donald Byrd(tp), Jackie McLean(as), Duke Pearson(p), Doug Watkins(b), Lex Humphries(ds)
バードの人気盤で、ハードバップ&ファンキーの名盤の1枚でもある。オリジナルのタイトル曲①から始まるのがいい。ベースから始まる盤に名盤多し、といえる盤の1枚と言えると思う。全曲バードのオリジナルで、いい曲ばかりというのがすごく、バードの黄金時代の頂点をなす盤だと思う。マクリーンの貢献も多大だが、今回はワトキンスの全編にわたる活躍を耳で追ってしまった。(hand)
モダンで自由な薫りのするアルバムだ。カッコイイという言葉がよく似合う。Humphriesの装飾系ドラムが、そうさせているのだろう。ByrdとMcLeanのステレオホーンが心地良い曲の骨格を成し、この名盤が生まれた。ロックやブルース好きの私の大切な保存盤だ。(ショーン)
とにかくバードの作曲能力が素晴らしく、いい曲揃いの一枚だ。一曲目からかっこ良さ全開でA面B面通してヒット要素満載のファンキー時代を代表する作品。曲もいいし各人のソロも素晴らしい作品なのでジャズ入門者には特におすすめ。(しげどん)
Donald Byrd(tp), Pepper Adams(bs), Duke Pearson(p), Laymon Jackson(b), Lex Humphries(ds)
Vol.1はピアソンの名曲マイ・ガール・シャールから始まる名ライブ。バードもアダムスも勢いがあり好感が持てる。Vol.2も1と同様にピアソンのヒット曲ジーニーから始まる。キャノンボールも愛奏している曲だ。オマケ各2曲がVol.1&2ともに、米CDでは真ん中に、日CDでは後ろについているものと、オマケなしがある。オマケはあると嬉しいが、元の製作者の意図を尊重して、後に付けるのがいいと思う。「フュエゴ」、「バード・イン・フライト」と作曲面でこのバンドに貢献しているピアソンもこのライブでバンドを離れてしまう。バードクラスの人気者でもベースとドラムまで含めて固定メンバーを維持していくことは経済的に難しいのだと想像する。(hand)
ジャズらしいイキイキしたすばらしいライブだ。スタジオ盤「Byrd In Flight]ではB面の最終曲だったMy Girl Shirlから始まる出だしが勢いがあり、この曲のイメージが変わる。Soulful KiddyもByrd In Flightではオリジナルではボツになった曲で、重複をさける為か、ライオン氏の好みか?Child’s Play やChantなども、オリジナルではボツテイクだったのだが悪くない出来。デューク・ピアソンの影響力がかなり強い感じがするので、バード=アダムスの双頭バンドというより、ピアソンが準リーダーにように感じるライブ。(しげどん)
素晴らしいLIVE演奏だ。緩急つけたByrdの演奏はしっとりとした円熟味がある。コードのスケールははずさずにキッチリ演奏しているので、安心して聴ける反面、オーソドックすぎるきらいもある。(ショーン)
Donald Byrd(tp), Pepper Adams(bs), Herbie Hancock(p), Doug Watkins(b), Teddy Robinson(ds)
スピードとパワーに溢れたアルバムである。pepper adamsのゴリゴリなバリトンサックスと小気味良いくらいコロコロ回るherbie HancockのピアノがByrdの潜在能力をぐいぐい引き出してくれているような感覚で、骨太の素晴らしい演奏となった。(ショーン)
CTシリーズといういわゆる発掘盤なのだが、私的には正規盤以上の魅力を感じる一枚だ。冒頭の「おいらは老カウボーイ」は、ソニー・ロリンズが名盤Way Out Westで演じていたが、その時ののんびりした印象とは違い急速調で演じられている。それがなかなか良い感じだ。ハービー・ハンコックのソロはアーシーな粘っこさもありながら、調和のとれた素晴らしいもの。この一枚のクオリティを高めている。(しげどん)
61年録音だが、79年の発掘盤。ドラムの印象がこれまでのドラマーと一変する。フォービートだがシンバル多用でロックを感じる。知らないドラマーのテディ・ロビンソンという人で、その後参加するビリー・ヒギンスに近い。この盤は、何と言っても、ハンコックのBN初録音として価値がある。ハンコックの参加以降、バンドがモダンにリニューアルしたと思う。ベースは久々のワトキンス。タイトル曲③チャントが名曲で耳に残る。参加はしていないがピアソンの一番いい曲かもしれない、前年の「ハーフ・ノート」のライブでも演奏されていた(オマケ曲)。2年後の「ニュー・パースペクティブ」でもゴスペル・コーラスをつけて再演されるくらいだ。(hand)
Donald Byrd(tp), Charlie Rouse(as), Pepper Adams(bs), Walter Davis, Jr.(p), Sam Jones(b), Art Taylor(ds)
ジェントルな雰囲気が漂う味わい深い一枚。テナーとバリトンの2本のサックスが脇を固めたことで、Byrdの演奏が際立ち、完璧な演奏となった。JAZZを知らない初心者でも、その良さを感じる事ができるだろう。特にPepper Adamsのバリトンが、個性豊かな音色で曲の価値をを上げている。(ショーン)
バードのBNリーダー第2作。バード=アダムス5にラウズがゲスト参加した盤。本作からバード盤のクオリティが一枚上がったように感じる。バードの音色は自信に溢れているし、アダムスのバリの破壊力もアップしたと思う。特にバード曲②ヒア・アム・アイが、このバンドの魅力を表現した素晴らしく個性的な演奏になっている。①ウィッチクラフトも悪くはないが、スタンダードで、この曲が冒頭というのは前作「オフ・トゥ・ザ・レイシス」同様BNの弱気の現れだろうか?ラウズは、モンク4とは違い、情感あるソロや速いソロが新鮮だ。⑥クラリオン・コールズのウォルター・デイビスにはソニー・クラークを感じた。(hand)
ドナルド・バードらしい曲づくりが前作より強化され、一枚のアルバムとしての魅力度はアップしているが、まだ決定的な名曲は登場していない。冒頭のWITCHCRAFTがスタンダードとは知らず、全曲オリジナルと思って聴いていたが、この盤録音時点では比較的新しいスタンダード作品なので、冒頭曲のつかみにはいいと思ったのだろう。演奏は悪くないが、テーマのメロディはそれほど魅力的ではないと思う。二曲目のHere I Amは、シンプルなメロディが繰り返されるやや前衛的な雰囲気の曲。バードの曲は単純にメロディラインが分かりやすい印象的な曲ばかりではないバリエーションがある。ラウズ、アダムスのゴリゴリしたエネルギーを感じるソロも味わえるハード・バップ作品の佳作。(しげどん)
1-6:1967.1.9
7:1963.5.27
Blue Note
おすすめ度
hand ★★★★★
しげどん ★★★★
ショーン ★★★★
Donald Byrd(tp), Sonny Red(as),
1-6:Hank Mobley(ts), Cedar Walton(p), Walter Booker(b), Billy Higgins(ds)
7:Jimmy Heath(ts), Herbie Hancock(p), Eddie Khan(b), Albert Heath(ds)
バードとソニー・レッドとの三部作の2作目。この三部作は、バードのジャズとしての第二の黄金期と考える(もちろん「フュエゴ」前後が第一の黄金期だ。)。いずれも素晴らしいが、本作が一頭地を抜いているのではないかと思う。1作目「ムスタング」とメンバーはほぼ変わらず、ピアノがマッコイ・タイナーからシダー・ウォルトンに変わっただけで、盤の雰囲気は大きく変わっている。ジャズロック度がより強まっているが、盤はとても良くできている。また、前盤から引き続き。レッドの活躍が光る。ドルフィー的なニュアンスもあるカッコいいアルトだ。レッドにとってもこの三部作がピークの記録かもしれない。シダーもいいが、モブレーもまずまずだと思う。バード作のタイトル曲①はクイーンのウィ・ウィル・ロック・ユーを思い出すリズム、②③ともにバード版セブン・ステップスのような曲、バードの教え子作④エルドラドはバード版ソーホワット、⑤ベール・ストリートはバード版サイドワインダー、というように全体にキャッチーな仕上がりで飽きさせない。米盤CD収録のオマケ曲⑦オール・メンバーズは、三部作の3年前に既にレッドと共演していた記録だが2人はデトロイト時代の同級生のようだ。(hand)
3管の迫力を感じられるアルバム。ビリーヒギンズのドラムが重厚で重いので、スピード感のある重戦車の様なハードバップだ。ノリ良く身体の芯に響く、なかなか心地良く陶酔が出来そうなアルバムである。(ショーン)
冒頭曲ではジャズロック路線が継続されており、この当時の売れ線路線だ。一方でエルドラドのようなモーダルな演奏もいい味を出している。ソニー・レッドのいがらっぽいアルトはモブレー以上に目立っている。オリジナルも3曲あり、盤全体に存在感を及ぼしている。(しげどん)
・新宿ジャズ談義の会 :ドナルド バード CDレビュー 目次