ミンガスの最晩年の時期は、アダムス=プーレンの活躍する多くの後期名盤が作られます。その後、フュージョンに舵を切った名盤「クンビア」を発表します。最後は、ミンガスは、ベースを弾くことも困難となり、総合音楽家として作曲、アレンジでの盤を発表しました。
・新宿ジャズ談義の会 :チャールズ・ミンガス CDレビュー 目次
1974.1.19
Atlantic
おすすめ度
hand ★★★★★
しげどん ★★★☆
ショーン ★★★★☆
Charles Mingus(b),
Jon Faddis(tp), George Adams(ts), Hamiet Bluiett(bs), Don Pullen(p), Dannie Richmond(ds),
Disc 2②③:Charles McPherson(as), John Handy(as,ts), Roland Kirk(ts,stritch)
前作「ムーヴス」と同じ、アダムス=プーレン+リッチモンドに、バリのハミエット・ブルーイットとロンドンで共演したジョン・ファディスを迎えたカーネギーホールでのライブ。前作とほぼ同メンバーながら前作と違いミンガスらしい盤に感じるのは、ペギーやフォーバスなどいつものミンガス曲やエリントン曲が入っていることがやはり大きいと思う。現在は未発を加えて2枚組完全版デラックス・エディションとなっているが、調べるとなんと元盤アナログはDisc 2ラスト2曲のエリントン曲がAB面各1曲だった。通常のCD化では冒頭に置かれる元盤収録曲がラストにある。なのでアナログに親しんだ人には全く違う盤と感じるのではないかと思う。その2曲2 ②パーディド 、③Cジャム・ブルースは、旧メンバーのマクファーソン、カークやハンディがゲストで入りミンガスOBオールスター・ジャムのような様相で、前半と印象も違うが、ブルーイットが一本、筋を通してくれているように感じた。デラックス盤も元盤も、素晴らしい盤であることに変わりはない。(hand)
デラックス・バージョンになって、前半のミンガスらしい曲が明らかになった。後半はジャムセッションなので、ゲスト出演のメンバーも含め、いいソロをとっていて悪くはないが、ミンガスの表現としては評価できない。(しげどん)
1曲目からパワー全開の素晴らしい演奏だ。JON FADDISのトランペットの雄叫びが凄い!またHAMIET BLUIETTのバリトンサックスが曲全体に厚みとスパイシーさを加えており、他のJAZZコンポとは、全く異なるオリジナリティ溢れるものに仕上がっている。しかも時に静かにピアノソロ、テナーソロが入ったりと、緩急の付け所がまた素晴らしい。このアルバムはミンガスの、いやフリージャズの大傑作名盤だ。残念なのは2枚目、単調すぎる。そのため減点した。(ショーン)
1974.12.27,28 & 30
Atlantic
おすすめ度
hand ★★★☆
Charles Mingus(b),
Jack Walrath(tp), George Adams(ts,vo), Don Pullen(p), Dannie Richmond(ds)
晩年の名盤と言われている(らしい)「チェンジズ」のワンとツー、今回、初めて聞いた。かなり前から持ってはいたが、聞きたくなるようなジャケではなかった。録音順に聞いてきて、「カーネギーホール」の次に聞いたせいか、テナーとピアノにフリーキーなフレーズはあるものの、キレイにまとまったスタジオ録音という印象を持った。ミンガス曲ながらミンガスらしいダークな諧謔のようなものはあまり感じなかった。ボーカル曲③はロックボーカルにしか聞こえないのだが、歌っているのはジョージ・アダムスだ。(hand)
1974.12.27,28 & 30
Atlantic
おすすめ度
hand ★★★★
Charles Mingus(b),
Jack Walrath(tp), George Adams(ts), Don Pullen(p), Dannie Richmond(ds),
④:Marcus Belgrave(tp), Jackie Paris(vo), Sy Johnson(arr)
エリントン曲は別として、ミンガス以外のメンバーのオリジナルが入っていると、ミンガス盤らしさがかなり低くなると思う。この盤ではワルラス曲③とサイ・ジョンソン曲⑤が入っているものの、ミンガスの旧曲②が新アレンジながら入っているので、「ワン」に比べるとミンガス臭がしていると思う。④デューク・エリントンズ・サウンド・オブ・ラブ、は、ある意味、ミンガスらしくない美しいバラード。ジャッキー・パリスの歌が合っている。ジャック・ワルラスのミンガス在籍は知らなかった。(hand)
1975.7.9
Sunnyside
おすすめ度
hand ★★★★
Charles Mingus(b),
Jack Walrath(tp), George Adams(ts,vo), Don Pullen(p), Dannie Richmond(ds)
「チェンジズ」のワン&ツーのライブ盤という感じだ。メンバーも選曲もほぼ同じだからだ。ブレーメンの64年は早くから出ていたようだが、この75年は初CD化だと思う。アダムスとプーレンが張り切ると、後年のアダムス=プーレンを先に聞いてしまった私には、ミンガスバンドというよりもアダムス=プーレンバンドに聞こえてしまう。内容が悪いということではない。アダムス=プーレンもある意味、ミンガス・ダイナスティ的なバンドなのだと改めて理解した。新曲だけでなく、フォーバスなど旧曲も演奏していて楽しめる。(hand)
1976.3.29-31
1977.3.1 & 10
Atlantic
おすすめ度
hand ★★★
しげどん ★★★★☆
Charles Mingus(b,vo,perc,arr),
Jack Walrath(tp,perc), Dannie Richmond(ds),
①:Jimmy Knepper(tb,b-tb), Mauricio Smith(fl,piccolo,ss,as), Paul Jeffrey(oboe,ts), Gene Scholtens(bassoon), Gary Anderson(contrabass,cl,b-cl), Ricky Ford(ts,perc), Bob Neloms(p), Candido, Daniel Gonzales, Ray Mantilla, Alfredo Ramirez(conga), Bradley Cunningham(perc),
②:Dino Piana(tb), Anastasio Del Bono(oboe,english horn), Pasquale Sabatelli(bassoon), Roberto Laneri(b-cl), Giancarlo Maurino, Quarto Maltoni(as), George Adams(ts,a-fl), Danny Mixon(p,org)
後期になり変化を見せていたミンガスミュージックだが、晩年近いこの盤でさらなる大変貌を遂げる。アコースティック・マイルスがウェザー・リポートになってしまったくらいの感じがする。後期ミンガスをこれまで全く聞いてこなかった私にとっては、今回の全盤通し聞きは楽しい行為であったが、この盤に限ってはタイトルの「フュージョン」がいわゆる70〜80年代に流行ったフュージョンミュージックなのか、クンビア(南米コロンビアのリズムと舞曲の音楽)という何かとジャズの融合の意味なのか、を微妙な気持ちで聞くこととなった。というのも、私自身70年代末はフュージョンファンであり、その後、ストレートアヘッドなジャズにドップリとハマりフュージョンは聞かなくなっていたからだ。ジャズを聞いてからは、ウェザーなどは全くいいと思えなくなってしまった。フュージョンの特徴として多いのは、8ビートのエレキベースとドラム、アタッチメント多用のギター、ピアノはアコースティックも使うがエレピやシンセも、パーカッション、バップフレーズを吹かないブローサックスなどだと思う。なので、パット・メセニーはジャズ曲をやってもアタッチメント多用でジャズに聞こえず、逆に渡辺貞夫はフュージョンをやってもバップフレーズを吹くのでジャズに聞こえる。この盤のタイトル曲①は20分超の長尺で、フュージョン的な色合いはかなり濃いがギリギリ、ジャズなのかもしれない。前半はフュージョン的だが、後半はジャズ的になる。ただ、個人的な好みの問題としては、私の期待するミンガスとは違うということになる。後半②ミュージック・フォー・トド・モド、も20分超の長尺だか、こちらは時間的に間に合わず使われなかったらしいが仏映画サントラとのこと。①との関連性はなく、この時期のミンガスに近い。(hand)
ミンガスの魅力である迫力ある作曲とアレンジが味わえる最後期の傑作。どんどん盛り上がっていく雰囲気の編曲など、ミンガスの真骨頂が生きている。(しげどん)
1977.3.9,10 & 29
Atlantic
おすすめ度
hand ★★★
Charles Mingus(b,p,vo,arr),
Jack Walrath(tp), Ricky Ford(ts), George Coleman(as,ts:1-4), Sonny Fortune(as:5), Bob Neloms(p), Jimmy Rowles(p:4), Philip Catherine(gr:1-3,5), Larry Coryell(gr:1-4), John Scofield(gr:4,5), George Mraz(b:1-3), Ron Carter(b:5), Dannie Richmond(ds), Paul Jeffrey(arr)
前半2曲は、ミンガスの過去曲をこの時期のアレンジで再演奏したもの。ギター(①はエレキ、②はアコギ)が入るのでロック、フュージョンっぽくなるが、曲のおかげか割とミンガス臭はしている。後半3曲もギターが目立ち、あまりジャジーではなく、ミンガス臭も弱まる。ミンガス本人の盤というよりも、次世代のギタリストが作ったミンガス・トリビュート盤と勘違いしてしまいそうになる。(hand)
1977.11.6
Acrobat
おすすめ度
hand ★★★★
しげどん ★★★
ショーン ★★★★☆
Charles Mingus(b), Lionel Hampton(vib,produce),
Jack Walrath, Woody Shaw(tp), Peter Matt(French horn), Ricky Ford(ts), Paul Jeffrey(ts,arr), Gerry Mulligan(bs), Bob Neloms(p), Dannie Richmond(ds)
先輩ライオネル・ハンプトンが、なぜかこの時期にミンガスをプロデュースした盤。御大が自ら昔のミンガス曲を演奏したくなったのか、ミンガス臭が充満して、私としては好ましい。この後、ミンガスは難病でベースが弾けなくなるので、強靭なミンガス本人のベースが聞かれる最後の盤となる。ハンプが主導しているせいか、いつものミンガス盤よりも演奏もアレンジも多少エンタメ性が高めに聞こえる。この盤は、レーベルが弱小だったのか、タイトル、曲順、ジャケなど、様々な盤(「ヒズ・ファイナル・ワーク」、「ライオネル・ハンプトン・プレゼンツ・ザ・ミュージック・オブ・チャールズ・ミンガス」など)が出されている。曲数からこの盤がオススメだと思う。(hand)
ミンガスのレパートリーとスタンダードのオーケストラ的な再演集だが、かってのような創造力は感じられなかった。(しげどん)
聴きやすいアルバムだ。ライオネル・ハンプトンのヴィブラフォンが入ると、いつものミンガスらしい野獣らしさが薄まり、軽やか且つしなやかになる。ウディ・ショー、ジェリー・マリガン 等メンバーも豪勢で完成度が高い。ミンガス最後の演奏とのことで、穏やかで感慨深い素敵な演奏だ。(ショーン)
1978.1.18 & 23
Atlantic
おすすめ度
hand ★★★☆
Charles Mingus(composition,arr),
Mike Davis, Randy Brecker(tp), Jack Walrath(tp,arr), Slide Hampton, Jimmy Knepper, Keith O'Quinn(tb), Lee Konitz, Charles McPherson, 丸田良昭, 大森明(as), George Coleman, Ken Hitchcock(as,ts), Daniel Block, Michael Brecker, Ricky Ford, John Tank(ts), Pepper Adams, Ronnie Cuber, Craig Purpura(bs), Larry Coryell, Ted Dunbar, Danny Toan, Jack Wilkins(gr), Bob Neloms(p), Kenny Werner(el-p), Eddie Gomez, George Mraz(b), Joe Chambers, Dannie Richmond(ds), Ray Mantilla(perc), Paul Jeffrey(cond)
「クンビア」の流れを汲んだ感じのフュージョン的な音楽だが、クンビアよりはジャズ的で、ソロはジャズだ。タイトル曲①は、クンビア同様に、最初フュージョン的に始まり、徐々にジャズ的になっていき、後半は同楽器同士のバトル的なチェイスが繰り広げられる。やはり本性の隠せないミンガスミュージックなのだろう。ミンガスは難病ALSとなりベースは弾いていない。難病のミンガスながら、なぜか初期のプロテスト精神の強かった時期に比べて、明るい音楽のように感じた。②フェアウェル・ファーウェル、は途中から4ビートジャズとなる。タイトルから想像する別れの悲しみは感じなかった。明るく幕を閉じようとしているかのようだ。(hand)
Charles Mingus(composition,arr),
Mike Davis, Randy Brecker(tp), Jack Walrath(tp,arr), Slide Hampton, Jimmy Knepper, Keith O'Quinn(tb), Lee Konitz, Charles McPherson, 丸田良昭, 大森明(as), George Coleman, Ken Hitchcock(as,ts), Daniel Block, Michael Brecker, Ricky Ford, John Tank(ts), Pepper Adams, Ronnie Cuber, Craig Purpura(bs), Larry Coryell, Ted Dunbar, Danny Toan, Jack Wilkins(gr), Bob Neloms(p), Kenny Werner(el-p), Eddie Gomez, George Mraz(b), Joe Chambers, Dannie Richmond(ds), Ray Mantilla(perc), Paul Jeffrey(cond)
所有していても、聞いたことのなかった盤。タイトルもAN EYEをAND I だと思っていた。ミンガスがベースの弾けない難病ALSとなり、車椅子でスタジオに参加していたという盤。「サムシング・ライク・ア・バード」と同日の1978年1月19日と23日の録音だが、こちらは79年1月にミンガスが亡くなった79年公表で、「サムシング」は80年公表だ。この盤の発表はミンガスの意思に基づいているらしい。「サムシング」のタイトル曲①とこの盤①スリー・ワールズ・オブ・ドラムスが1月19日録音の30分超の2大作だが、サムシングが明るい印象なのに対し、こちらスリー・ワールズは暗い印象だ。曲構成は似ていて、フュージョン的な前半と同一楽器バトルのジャズ的な後半になっている。②デヴィル・ウーマン、はギターメインのロック的で、③水曜の夜の祈りの集い、は多少ミンガス臭が漂うが、やはりギターソロはロック・フュージョン的だ。ラスト曲④キャロライン“ケキ”ミンガス、は美しいがポップな印象だ。(hand)
・新宿ジャズ談義の会 :チャールズ・ミンガス CDレビュー 目次