西海岸ロスでのライオネル・ハンプトン時代から、東海岸ニューヨークに移り、自己レーベル、デビューを設立し、アトランティックからのミンガス・ミュージックを確立した生涯の大名盤「直立猿人」までをまとめています。
・新宿ジャズ談義の会 :チャールズ・ミンガス CDレビュー 目次
1945-1949
Uptown
おすすめ度
hand ★★★
Charles "Baron" Mingus(b,cond) ,
Buddy Childers, John Anderson, Ernie Royal, Hobert Dotson, Eddie Preston, Vernon Smith(tp),
Britt Woodman, Jimmy Knepper, Marty Smith(tb),
Art Pepper(as,cl), Eric Dolphy(as,cl,fl) Herb Caro(ts,cl), William Green, Hadley Caliman, Gene Porter(reeds)
Laurindo Almeida(g), Russ Freeman(p), Red Callender(b), Roy Porter(ds), Jack Costanzo(conga), Johnny Berger(per)
スイング末期の好演集という感じで、ビバップの香りも多少してきている。ただ、その後のミンガスらしい演奏を期待して聞くと当てが外れる。あくまで初期からミンガスは素晴らしいベーシスト&リーダーだったことを確認するための音源だと思う。音質はさほど悪くない。(hand)
Charles Mingus(b), Spaulding Givens(p), Max Roach(ds:10-15)
ミンガスがローチと作った自己のレーベル、デビューについては、「コンプリート・デビュー・レコーディングス」としてCD12枚組で出ている。そのうち、単独でCD化されていない10インチなどを拾い集めた「デビュー・ラリティーズ」4枚のうちの第2集がこの盤。デビューの最初の10インチ「ストリングス・アンド・キーズ」を含んでいる。文字通りベースとピアノのデュオたが、ピアニストが聞いたことのないスポールディング・ギブンスという人で、プレイはあまりジャジーではない。調べてみたら、ナディ・カマルという別名で、70年代に2枚の録音があった。一部ドラムにローチが入る。(hand)
1952.4.12 & 9.16
1953.4.29
Debut
おすすめ度
hand ★★
Charles Mingus(b),
Lee Konitz(as:1-7), Paige Brook(fl.as:8-10)
Phyllis Pinkerton(p:1-7), John Mehegan(p:8-10), Hank Jones(p:11-15),
George Koutzen(cello:1-7), Jackson Wiley(cello:8-10),
Al Levitt(ds:1-7), Max Roach(ds:8-15)
Jackie Paris(vo:1,2,8-10), Bob Benton(vo:3,4), The Gordons(vo:11-15)
冒頭の6曲が、元は3曲なのに、本テイクと別テイクが続けて入った私の嫌いな構成。別テイクはオマケに最後に入れてほしい。と言ってもこのシリーズそのものが資料的な価値を重視で、鑑賞を想定していないのかもしれない。ボーカル曲が多く、しかもあまり魅力を感じない曲と歌だ。(hand)
Charles Mingus(b),
1-6:Ernie Royal(tp), Willie Dennis(tb), Eddie Caine(as,fl), Teo Macero(ts), Danny Bank(bs), John Lewis(p), Jackson Wiley(cello), Kenny Clarke(ds), Janet Thurlow(vo:3,5,6)
7-14:Jimmy Knepper(tb), Joe Maini(as), Bill Triglia(p), Dannie Richmond(ds)
前半は53年10月のミンガスの前史的な録音のひとつ。女性ボーカル、ジャネット・サーロウ?もフィーチャーしたオクテットで。後半のジミー・ネッパーをリーダーとする録音は3年後の57年6月の演奏だが、ジョー・マイニの勢いのあるアルトも活躍するバップ演奏で好感が持てる。前半★★、後半★★★☆で、全体として★★★くらい。(hand)
1954.10.31
1955.1.30
Savoy
おすすめ度
hand ★★★
Charles Mingus(b),
John LaPorta(as,cl), George Barrow, Teo Macero(ts,bs)
Mal Waldron(p;2-4,9,10), Wally Cirillo(p:5–8),
Rudy Nichols(ds:1–4,9,10), Kenny Clarke(ds;5–8)
タイトルからして実験的な要素のある盤。ミンガス自身かテオ・マセロの主導かはわからない。後の「直立猿人」につながるような妖気を多少感じさせる③ユーロジー・フォー・ルディ・ウィリアムス、のような曲もある。⑤からの後半はピアノのウィリー・シロのリーダーセッションらしい。ミンガスは頑張っているが、特にいいとは思えなかった。(hand)
1954.12
Period → Bethlehem
おすすめ度
hand ★★★☆
Charlie Mingus(b.p),
Thad Jones(tp), John LaPorta(cl,as), Teo Macero(ts,bs), Jackson Wiley(cello), Clem De Rosa(ds)
「ジャズ・コンポーザーズ・ワークショップ」の2つのセッションの中間に録音され、ミンガスとラポータ、マセロが共通しているので、多少、似た雰囲気はあるが、スタンダードがあるなど、こちらの方が実験色が薄く、親しみやすく感じた。録音もいい。ミンガスももちろん頑張っているし、ジョン・ラポータのサックスも悪くないのだが、「直立猿人」以降のミンガスを聞いてしまった後に聞くと、何だか大噴火前の小噴火のような景色に感じてしまう。(hand)
1955.12.23(18日説あり)
Debut
おすすめ度
hand ★★★★
しげどん ★★★☆
ショーン ★★★★☆
Charles Mingus(b),
Eddie Bert(tb), George Barrow(ts), Mal Waldron(p),
Willie Jones(ds:1,2,4-8), Max Roach(ds:3)
大名盤「直立猿人」の直前のライブ。猿人につながる雰囲気をかなり持ち、人類はもう少しで直立歩行しそうなところまできている。ジャッキー・マクリーンらの参加前であり、いつもはバリのジョージ・バーロウもテナーで頑張ってはいるのだが、ややスタン・ゲッツ的なテナーなので、ミンガスの濃厚な音楽との適合という意味では、もう少し濃度の濃いサックスが適している。やはりメンバーは重要となる。「ミンガス+ローチ」は同日ライブの続編になり、2枚組CD「コンプリート・ボヘミア」ではDisc 2となっている。(hand)
1955年の年末のライブ。ミンガスらしいグループ表現が発揮されている素晴らしいライブだが、ソロイストは一流と言い難くジャズ的な魅力がやや足りないのが惜しい。マル・ウォルドロンの素晴らしい抽象的な表現は印象に残る。マックス・ローチが一曲ゲスト参加しているが、このトラックにはあまり魅力は感じない。(しげどん)
生々しい臨場感とドラマチックな力のあるライブ演奏だ。George BarrowのテナーとEddie Bertのトロンボーンが絡む中、Mal Waldronのピアノが輝く。Charles Mingusのずっしりとしたベースが、曲全体に骨格と厚みを与えている。(ショーン)
1955.12.23(18日説あり)
Debut
おすすめ度
hand ★★★★
Charles Mingus(b),
Eddie Bert(tb), George Barrow(ts), Mal Waldron(p),
Willie Jones(ds:1,3,4,6), Max Roach(ds:2,5)
「アット・ザ・ボヘミア」の続編にあたり、2枚組CD「コンプリート・ボヘミア」ではDisc 2となっている。録音は同日だが「ボヘミア」の同様、ドラムは、ウィリー・ジョーンズとローチとなっている。(hand)
1956.1.30
Atlantic
おすすめ度
hand ★★★★★
しげどん ★★★★★
ショーン ★★★★★
Charles Mingus(b),
Jackie McLean(as), J.R. Monterose(ts), Mal Waldron(p), Willie Jones(ds)
人類(ミンガス)の前史時代に別れを告げ、歴代時代の始まりを告げた大名盤。ミンガスは、この「直立猿人」という作品で、その個性が完全に確立されたと思う。作編曲能力が飛躍的に高まるとともに、他の伴奏を中心としたベーシストとは全く異なるプロデューサー的かつ個性的なベースプレイも確立し、リーダーとして独自のミンガス・ワールドを描き出すことに成功した。マクリーンとJRの双子の兄弟のような息の合ったプレイとマルの憂いを帯びたピアノが作品を独特のものに仕上げている。(hand)
ジャズを聴き始めた40年以上前、私はまだ高校生だったが、名盤だと言うことで買ったLPで、サキコロやマイルスのリラクシンの後くらいだったろうか?モダンジャズのアドリブの面白さ以上に、編曲で作り込まれた作品のインパクトにいきなり打たれた記憶がある。ジャッキー・マクリーン、マル・ウォルドロンにとっても生涯の傑作といえ、この作品の凄さはこれ以上は言葉では表現できない。4曲入っているLPだが、表題曲が凄すぎて、ほかの3曲も悪くはないが逆に印象が薄れた感じがする。それくらいこの「直立猿人」一曲のインパクトは強烈だ。間違いなくジャズの歴史に残る名盤。(しげどん)
素晴らしい!それぞれの楽器が自由に演奏しつつ、全体として一つの世界観を見事に表現した名盤だ。特にアルバムタイトル曲の「直立猿人」は、まるで動物のような雄叫びサックスと着実に歩みを進めるミンガスのベースが、生命の進化という大きなテーマを具現化しているように思え、何度も聴き込みたくなる。他の曲も生き物のようである。(ショーン)
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