ドルフィー退団後の64年と、その後5年間の沈黙期間となる前の65年の録音です。ロニー・ヒリヤーとチャールズ・マクファーソンという新しいフロントが登場します。
・新宿ジャズ談義の会 :チャールズ・ミンガス CDレビュー 目次
1964.6.2 & 3
Fantasy
おすすめ度
hand ★★★★☆
しげどん ★★★☆
ショーン ★★★★☆
Charles Mingus(b),
John Handy(as:①), Clifford Jordan(ts), Jane Getz(p), Dannie Richmond(ds)
欧州ツアーから帰米約1か月後の6月初めの西海岸サンフランシスコ、ジャズワークショップでのライブ録音。ドルフィーに代わりジョン・ハンディが全2曲中1曲目だけ参加、バイアードに代わり女優としても知られているらしいジェーン・ゲッツがピアノに参加している。欧州ツアー時とはかなり雰囲気が変わった印象だ。メンバーの違いと、ホールとクラブの違いもあると思うが、フォーバスが①ニュー・フォーバス、となっているように、ミンガスがアレンジに手を入れて変えようとしているのだと思う。ジャズなので奏者が違えば演奏が違うのは当たり前だが、リッチモンドの叩き方も違うように感じる。ドルフィーが抜けてバンドの人気は下がったかもしれないが、盤のクオリティーは下がっていないと思う。(hand)
どんどん一曲が長くなる。新しい寓話というタイトルだが、フォーバス知事の寓話そのものだ。この曲はやるたびごとにアレンジもいろいろ変えているので、これが特に「New」というわけではないと思うが。(しげどん)
いずれも23分以上に及ぶ長い曲。1曲目のNEW FABLESは、スピードと迫力のある演奏で、ドラムスのダニー・リッチモンドがうまくリズムリードして、特にアルトとテナーのサックスはロングブローの連続で、息つく間もないとはこのことだ。続くMEDITATION でも、スピード感のあるリズムに乗せられたクリフォード・ジョーダンのテナーは、かすれ気味に情感を表現して素晴らしい。(ショーン)
1964.9.20
Jazz Workshop
おすすめ度
hand ★★★★
Charles Mingus(b,p),
Lonnie Hillyer(tp), Charles McPherson(as), Jaki Byard(p), Dannie Richmond(ds)
⑥⑧:John Handy(ts)
⑧:Bobby Bryant, Melvin Moore(tp), Lou Blackburn(tb), Red Callender(tuba), Buddy Collette(fl,piccolo,as), Jack Nimitz(b-cl,bs)
前作「ライト・ナウ」から3か月後の西海岸モンタレーフェスでの録音。前作では残っていた欧州ツアーメンバーのクリフォード・ジョーダンも遂に退団し、これ以降ミンガスとは共演していない。ジャッキー・バイアードやダニー・リッチモンドはその後も離れたり共演したりがあり、ここでも入っている。前半はエリントン・メドレーで、ハンディに代わってチャールズ・マクファーソンのアルトがオーソドックスながらいい感じだ。この時期、ミンガスはメドレーが好きだったようで、次盤「マイ・フェイバリット・クインテット」でも採用している。後半はスモールビッグバンドとなり、集団即興の一歩手前くらいでミンガスバンドらしい雰囲気となる。ジャズを聞き始めた大学生の頃、当時あった貸しレコード屋で借りて聞き、全く理解できず、いいとも思えなかった盤だが、今、聞くとなかなかいい盤に思える。僅かながら耳も成長したと思われる。(hand)
1965.5.13
Jazz Workshop
おすすめ度
hand ★★★★
Charles Mingus(b),
Lonnie Hillyer(tp), Charles McPherson(as), Jaki Byard(p), Dannie Richmond(ds)
1965年5月、ミネアポリスのタイロン・ガスリー劇場でのライブ。リズム隊は欧州ツアーと同じで、フロントがロニー・ヒリヤーとチャールズ・マクファーソンになっている。この盤はVol.1となっているがVol.2は出ていない。ただ、モザイクの「コンプリート・ジャズ・ワークショップ」のDisc7に丸々1枚分の別テイクが収録されているので、これがVol.2になる予定だったのかもしれない。マクファーソンのアルトはパーカー直系と言われているが、バリー・ハリスと共演していたバッパーというだけで、音色が濁っていて、これまであまりいいと思ったことがなかった。ところが、ミンガスのメンバーとして聞くと、ミンガスの音楽性とマクファーソンの濁った音色が微妙にマッチしていると感じるから不思議だ。ヒリヤーのトランペットは、事実上、真面目に聞いたのは今回が初めてとなるが、想像以上に爆発力があり、いい印象を持った。(hand)
Charles Mingus(b,p,narration),
Lonnie Hillyer(tp), Charles McPherson(as), Jaki Byard(p), Dannie Richmond(ds)
「マイ・フェイバリット・クインテット」の残りテイクは、やはり発売が躊躇われるのが理解できる統一性のなさだ。新アレンジの④ペギーズ・ブルー・スカイライト、など面白いものもあるが、日本人にはなかなか受け入れにくいミンガスのナレーション多用のプロテストソングなども入っていてごった煮感がある。あえて発売するならば第2,3集と内容で分けたほうがいいと思う。(hand)
1965.9.25
Jazz Workshop →
Sunnyside
おすすめ度
hand ★★★★
Charles Mingus(b,p,narration),
Hobart Dotson, Lonnie Hillyer(tp), Jimmy Owens(tp,flh), Julius Watkins(French horn), Howard Johnson(tuba), Charles McPherson(as), Jaki Byard(p), Dannie Richmond(ds)
ミンガスのレーベル、ジャズ・ワークショップから当初発売されたアナログには、一週間前の65年9月18日にモンタレーフェスで録音されたEPが付いていたがCD化でカットされた。モンタレーの出演時間30分という短さに不満を持ったミンガスが25日にUCLAでアナログ2枚の長さで録音したのがこの盤だ。これまでも大コンボでの1曲の長尺演奏やエリントンメドレーなど長い演奏はあったが、晩年に向かって大編成での組曲やプロデューサー的立場での盤が増えることとなり、その初期盤がこの盤と言えると思う。ジュリアス・ワトキンスやハワード・ジョンソンなど珍しい楽器と、トランペットが2本追加されて入っている。フレンチホルンとチューバが活躍する曲は、雰囲気が変わる。この後、70年まで5年間は録音がなく、沈黙期間となる。体調の問題だろうか?(hand)
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