Charles Mingus チャールズ・ミンガス おすすめCDレビュー  リーダー作② 1957~1959年

「直立猿人」後も、「道化師」、「メキシコの思い出」など名盤を出し続けていきます。そして、メジャーのコロンビアに移籍し、さらなる躍進を遂げていきます。


THE CLOWN / CHARLES MINGUS 道化師

1957.2.13 & 3.12

Atlantic

おすすめ度

hand        ★★★☆

しげどん   ★★★★☆

Charles Mingus(b),

Jimmy Knepper(tb), Shafi Hadi(as,ts), Wade Legge(p), Dannie Richmond(ds), Jean Shepherd(narration:4)

「直立猿人」直後の高水準作

ミンガス・ワールドを作り上げた「直立猿人」直後の作品。マクリーン、JR、マルという猿人の立役者が居なくなりどうなるかと思うが、ジミー・ネッパー、ウェイド・レグが頑張っている点は評価できる。①ハイチ人の戦闘の歌、は特にいい。ただ、カーティス・ポーター (シャフィ・ハディ)のサックスはマクリーンと比べると圧力のようなものが多少弱いと思う。また、タイトル曲④道化師、にはナレーションが入っている。世界の共通言語である音楽でのナレーションはやってはいけないことだと私は思っている。(hand)

有名なハイチ人戦闘の歌を含む有名盤。タイトル曲の「道化師」は、ナレーション入りで、音楽的にはあまり評価できない。それ以外の曲は高水準で、ミンガスの問題作にして代表作と言えると思う。(しげどん)



TONIGHT AT NOON / CHARLES MINGUS

1957.3.12

1961.11.6

Atlantic

おすすめ度

hand        ★★★★☆

しげどん   ★★★★

ショーン   ★★★★☆

Charles Mingus(b,p,vo),

Jimmy Knepper(tb),Dannie Richmond(ds)

Shafi Hadi(Curtis Porter) (as:1,5), Wade Legge(p,1,5),

Booker Ervin(ts:2–4), Roland Kirk(ts,manzello,stritch,siren,fl:2–4), Doug Watkins(b;2–4)

4年半離れた2つのセッションからなる落穂盤だが、素晴らしい内容

57年3月①⑤と61年11月②③④と4年半も離れ、メンバーも全く違う2つのセッションからなる、今回、録音順に聞いている私には、ちょっと困った盤。アトランティックの「道化師」と「オー・ヤー」の落穂盤だ。アトランティック期には、ベツレヘム、コロンビア、キャンディドに録音した盤もあり、アトランティック専属ではなかったようだ。とはいえ、内容が悪い訳ではなく、どちらかと言えばいい、というか、かなりいい。①のカーティス・ポーター (シャフィ・ハディ)のサックスは圧力不足はあるもののフリーキーなトーンで曲の色付けに成功している。アービン、ネッパーも活躍し、録音年の違いを気にせず楽しめる。後年、繰り返して演奏される④ペギーズ・ブルー・スカイライトの初演も貴重だ。(hand)

The CrownとOh Yeah という二枚の名盤からのアウトテイク集。当然コンセプトアルバム的な作りではなくなっているが、ミンガス氏の意図とは逆に、かえって統一感のある一枚になっている印象だ。The Crownの表題曲は賛否分かれ(否のほうが多いかも)、このアルバムのTonight At Noonが代わりに入っていたら、The Crownは一級作になったかもしれない。(しげどん)

壮大なドラマの幕開けのようなスタート。自由なメロディラインは、時にアジアを感じ、また時にイスラム的な雰囲気で、まるで雑踏の中、一人で気ままな旅をしているかのような気持ちになる。しっとりとしたバラードもあり、バラエティに富んだ一枚。(ショーン)



MINGUS THREE / CHARLES MINGUS

1957.6.9

Jubilee

おすすめ度

hand        ★★★★

Charles Mingus(b), 

Hampton Hawes(p), Dannie Richmond(ds,tambourine)

ハンプトン・ホーズとのピアノトリオ盤

同じ西海岸出身のハンプトン・ホーズとの初録音。「直立猿人」後の盤であることを考えると、かなりオーソドックスなピアノトリオ盤と言える。ベースのスペースが多めで、ミンガスのベースのピチカートによる演奏を楽しむことができる。※2022年、未発録音を含む2枚組デラックス・エディションが発売された。(hand)



TIJANA MOOD / CHARLES MINGUS メキシコの思い出

1957.6.18 & 8.6

RCA

おすすめ度

hand        ★★★★

しげどん   ★★★★☆

Charles Mingus(b),

Clarence Shaw(tp), Jimmy Knepper(tb), Shafi Hadi(Curtis Porter) (as,ts), Bill Triglia(p), Dannie Richmond(ds), Ysabel Morel(castanets, vo), Frankie Dunlop(perc), Lonne Elder(vo)

エリントン的な情景描写が感じられる作品

「道化師」のハイチから、メキシコのティファナと中米シリーズとなった。「直立猿人」以降では初めてトランペットが採用されている。クラレンス“ジーン”ショーという聞いたことのないトランペッターだ。硬質ないい音色だと思う。カーティス・ポーター(シャフィ・ハディ)の圧も以前より強まって好感だ。ジミー・ネッパーのトロンボーンが引き続き素晴らしい。パーカッションやボイスで中米らしさを演出している。過去に聞いた時はスルーしてしまったが、改めて聞くと中身の濃い良盤であった。「完成盤」で2枚組となったが、初出はDisc2②コロキアル・ドリームだけで、他は全てオリジナル5曲の別テイクだ。(hand)

エリントン的な情景描写が感じられる作品で、詩的な趣きがある。ミンガス特有のどろどろした怒りの表現はなく、明るいイメージの中に、ミンガスのメロディ作りの能力が生かされている。これも傑作。(しげどん)



EAST COASTING / CHARLES MINGUS

1957.8.16

Bethlehem

おすすめ度

hand        ★★★★

Charles Mingus(b),

Clarence Shaw(tp), Jimmy Knepper(tb), Shafi Hadi(Curtis Porter) (as,ts), Bill Evans(p), Dannie Richmond(ds)

ベツレヘムのレーベルカラーに合わせた?ミンガス盤

レーベルのせいか、エバンスのせいか、選曲のせいか、冒頭のメモリーズ・オブ・ユーを聞くと、いつものミンガスの個性の濃度がやや希薄なような気がした。多分、ベツレヘムのプロデューサーがミンガスの黒人的な濃厚な個性を避けて、白人受けする盤にしたかったのではないかと想像する。聞き進むにつれ徐々に濃度は増していくが、濃厚までには至らない。※私の所有CDは全6曲だが、現在は追加テイク入りの11曲CDのようだ。(hand)



DEBUT RARITIES VOL.3 / CHARLES MINGUS

1957.9

Debut

おすすめ度

hand        ★★★☆

Charles Mingus(b:1-10),

Clarence Shaw(tp), Shafi Hadi(Curtis Porter) (ts), Pepper Adams(bs), Wade Legge or Wynton Kelly(p), Henry Grimes(b:12,13), Dannie Richmond(ds)

「ミンガス&ケリー」として出たこともあるが...

元々は、シャフィ・ハディ名義の録音。「ミンガス&ウィントン・ケリー」として出たこともあるが、ディスコグラフィー上ではウェイド・レグ又はケリーとなっている。ピアノトリオ演奏はなく、まだ個性的なケリー節を聞くこともできない。バド系とはまた違うソロやバッキングをしている。ケリーに限って言えば、リーダー盤ではリバーサイドの初盤「ウィントン・ケリー(邦題、ウィスパー・ノット)」の4か月前の録音になる。ベーシストとしてのミンガスを楽しむことはできる。(hand)



A MODERN JAZZ SYMPOSIUM OF MUSIC AND POETRY / CHARLES MINGUS

1957.10

Bethlehem

おすすめ度

hand        ★★★☆

Charles Mingus(b),

Clarence Shaw(tp:except2), Bill Hardman(tp;2), Jimmy Knepper(tb), Shafi Hadi(Curtis Porter) (as,ts), Horace Parlan(p:2-5), Bob Hammer(p;1,3), Dannie Richmond(ds), Mel Stewart(narration:1) 

シーンズ・イン・ザ・シティ収録で知られる盤

「イースト・コースティング」同様、ミンガス度は曲が進むにつれて濃くなる感じの盤。これまであまり意識してこなかったが、ジミー・ネッパーがこの時期いい働きをしていたことがわかった。後年、ブランフォード・マルサリスが取り上げた①シーンズ・イン・ザ・シティ、はニューヨークの情景を描いた名曲と言っている人もいるが、ナレーションが苦手な私には、難解で親しみが感じられなかった。他の4曲はナレーションは入らないがミンガス臭の弱い演奏で、まずまずという感じだと思う。追加された別テイク3曲は、これらもミンガス臭は弱いが、雰囲気が異なり、いわゆる普通のビバップ演奏として楽しめる。⑥ウドゥント・ユーはウッディン・ユーで、⑦バウンスはビリーズ・バウンス。(hand)



JAZZ PORTRAITS / CHARLES MINGUS

1959.1.16

United Artists

おすすめ度

hand        ★★★★

Charles Mingus(b),

John Handy(as), Booker Ervin(ts), Richard Wyands(p), Dannie Richmond(ds)

映画用のせいかミンガスにしては普通のハードバップ盤

ミンガスにしてはとても普通のハードバップ盤に感じる。ジョン・ハンディのアルトとブッカー・アービンのテナーの2ホーンだが、ハーモニーはあってもバトル的な場面はない。元々が映画用の録音らしくアクのようなものが控え目だ。行方不明の音源が4曲あるようだ。(hand)



BLUES & ROOTS / CHARLES MINGUS

1959.2.4

Atlantic

おすすめ度

hand        ★★★★★

しげどん   ★★★★★

ショーン   ★★★★

Charles Mingus(b),

John Handy, Jackie McLean(as), Booker Ervin(ts), Pepper Adams(bs), Jimmy Knepper, Willie Dennis(tb), Horace Parlan(p:except 6.10), Mal Waldron(p:6,10), Dannie Richmond(ds)

熱量が半端ないミンガス・ジャズの魅力満載の名盤

ミンガスらしさが濃厚に出た傑作。JMと同名異曲の③モーニン、が目玉で、「直立猿人」以来のマクリーンと、新たに迎えたペッパー・アダムスの炸裂するバリサクが突出して素晴らしい。アダムスの破壊力抜群の大名演で、サイド名盤の1つではないかと思う(バード=アダムスでのヒア・アム・アイ、がこれに準ずると思うが、他のサイド名盤をご存知でしたらお知らせください。)。私の場合、マクリーンとアダムスに目(耳)が行ってしまうのだが、アービンやハンディ、ネッパーらも素晴らしい。そして何より、ミンガスのベースがクッキリと録音され、以前の盤に比べミンガスというベーシストのベースそのものを味わうことができると思う。CD追加の4別テイクもいい。(hand)

水曜の夜の祈りの集いは名曲というより名演か。ミンガスの作品は一聴難解なようでいて実はメロディが分かり易く印象に残る曲が多い。この一枚はそういう意味で、いい曲、分かりやすい曲が揃っていて、しかもジャズ的な魅力満載。ホレス・パーランのピアノなどは最高にアーシーで、ファンキーのそのものだ。曲単位では「直立猿人」がNO1だと思う私だが、いい曲が揃っているこのアルバムは、ミンガスのNO1作品と言ってもいいと思う。(しげどん)

9人編成という、とんでもない大人数のコンボ、決して雑然とすることはないが、その熱量は半端ない。叫び声?もあり、盛り上がったモン勝ちというノリが楽しい世界だ。(ショーン)



MINGUS AH UM / CHARLES MINGUS

1959.5.5-12

Columbia

おすすめ度

hand        ★★★★☆

しげどん   ★★★★☆

ショーン   ★★★★

Charles Mingus(b,p),

John Handy(as,ts,cl), Booker Ervin(ts), Shafi Hadi(as,ts), Jimmy Knepper(tb:1,7-10), Willie Dennis(tb:3-5,12), Horace Parlan(p), Dannie Richmond(ds)

ミンガス有名曲を多数収録し、独自世界を完成した盤

メジャーのコロンビアに移り、作品もクオリティーが高まり、黄金時代を迎えた感のある盤だ。ドルフィーという特異なメンバーを迎える前に既に個性的な世界を作り上げていたことがよくわかる。「プレゼンツ・ミンガス」で有名なフォーバスも、ジェフ・ベックまで演奏したポークパイ・ハットも、ベター・ギット・イットも、ここに入っている。CD追加曲も、全て別テイクではなく別曲で、これらも悪くないので、ミンガスが好調であった証だと思う。後年の長大なライブ盤のソロと比べるととても短く感じる各人のソロとアンサンブルも充実している。(hand)

Better Git~、Goodbye Porkpie Hat、そしてフォーバス知事の寓話、と有名曲が多く収録されている。Porkpie Hatはレスターヤングに捧げた曲だが、エリントン、パーカー、ジェリーロール・モートンなど、敬愛するミュージシャンに捧げた曲もあり盛りだくさん。ミンガスには珍しく9曲も収録されていて、メロディアスで印象に残る曲が多い。曲数が多いのはミンガスのどんどん出てくる創造力の結果かもしれないが、大手レーベルであるコロンビアの売らんかな路線のためなのかもしれない。(しげどん)

軽快なJAZZと美しいバラード等が、バランス良く配置されたアルバムだが、やや淡々としていて、抑揚がない。(ショーン)



MINGUS DYNASTY / CHARLES MINGUS

1959.11.1 & 13

Columbia

おすすめ度

hand        ★★★★

Charles Mingus(b),

John Handy(as), Booker Ervin(ts), Benny Golson(ts:2-4,6,10), Jerome Richardson(bs:2-4,6,10,fl:2), Don Ellis(tp:1,5,8,9), Richard Williams(tp:2-4,6,10), Jimmy Knepper(tb), Roland Hanna(p:1-6,8,9), Nico Bunink(p:7,10), Dannie Richmond(ds), Teddy Charles(vib:2-4,6), Maurice Brown, Seymour Barab(cello:2,9), Honi Gordon(vo:10)

「アー・ウム」の続編的な半年後のコロンビア録音

「アー・ウム」の半年後のコロンビア録音で、前作の続編的な印象を持った。どんどん新曲の曲想が湧き、汲めども尽きぬ状態だったのでは、と想像する。エリントン曲が昔は良かったね?とムード・インディゴ、と2曲も入っているのは次のエリントン崇拝盤「プリ・バード」に続く布石なのではと思う。CDオマケ⑩ストローリン、はホレス・シルバーとは別曲で、ケリー・ブルーを思い出すようなファンキーな佳曲だ。(hand)