Art Pepper アート・ペッパー おすすめCDレビュー  後期(1964~1982)

アート・ペッパーサイド作 ③ 後期(1964-1981)

前期のペッパーは数多くのサイド盤を残していますが、復活期から復活後の後期はサイド盤らしいサイド盤は少なく、共同リーダー的な作品が多く、そちらはリーダー盤として整理しました。ここでは、純粋にサイド盤と思えるものとオムニバス盤を載せています。



Mercy Mercy/Buddy Rich Big Band

1968

World Pacific

hand       ★★★☆

Buddy Rich(ds),Bill Prince(tp),Rick Stepton(tb),Art Pepper(as),Don Menza(ts)Joe Azarello(p),Walter Namuth(gr),Gary Walters(b)etc

出入獄、入退院を繰り返していた時期にバディ・リッチのビッグバンドで演奏

入出獄を繰り返していた時期、バディ・リッチのビッグバンドに参加。録音は多分このラスベガスでのライブのみ。テナーのドン・メンザがメインのソロイストとしてフィーチャーされている。ペッパーは4曲でソロをとる。ヤク中で生活は乱れていても、演奏だけはきちんとこなすので、音源上は肉体、精神的な状況があまり現れない人だ。バラードの2曲⑦アルフィ、11チェルシーブリッジでさすがのプレイを聞かせているが、ビッグバンドからソロイストが浮き出るような録音ではないので、あっさりと聞こえてしまうのは残念だ。(hand)



Song Book/Hersh Hamel Featuring Art Pepper

1975 Summer

Fresh Sound

hand       ★★☆

Hersh Hamel(el-b),Art Pepper(as),Pete Robinson(keyb,synth),Steve Strazzeri(ds),Brenda Burns, Judy Brown, Linda McCrary(vo)

古くから友人、ベーシストのハーシュ・ハーメルの唯一のリーダー録音に参加

ペッパーの古くから友人、ベーシストのハーシュ・ハーメルの唯一のリーダー録音に参加。「リビング・レジェンド」で75年8月に復活するまでの間、ペッパーのバンドメンバーでもあったようだ。この盤は、全曲がハーメルのオリジナルで、エレピ、エレベに8ビートも多く、ストレートアヘッドなジャズというよりポップ、フュージョンな感じだ。女性ボーカル曲もかなりある。ペッパー自身は、曲に関わらず気持ち良さそうにややフュージョン的なソロを吹いている。(hand)



On The Road/Art Farmer

1976.7.26 & 28,8.16

Contemporary

hand       ★★★☆

Art Farmer(flh),Art Pepper(as:1, 3, 4, 6),Hampton Hawes(p),Ray Brown(b),Shelly Manne (ds: 4, 6),Steve Ellington(ds: 1, 3, 5)

アート・ファーマーとのWアートの共演作

珍しいWアートの共演盤。多分、ブレイキーも含めたトリプルはないと思う。ブレイキーは白人との共演は好まない気がする。リズム隊は、ハンプトン・ホーズ、レイ・ブラウン、シェリー・マン(一部スティーヴ・エリントン)という西海岸の強力な3人。ブラウンとの共演はありそうで意外にないと思う。ペッパーは全6曲中4曲に参加している。ジャケはファーマーの次作以降のCTIに似たポップな路線だが内容はオーソドックスなジャズだ。ファーマー&ペッパーは名人芸の共演ではあるが、ファーマー&マクリーンのような化学反応は引き起こさない。西海岸的2管盤が多いペッパーは、2管でもハードバップな感じにはならない。この時期のペッパーにしては、前期的な雰囲気を残す演奏なのは、ファーマーの優しい演奏の影響かもしれない。(hand)



California Hard/Dolo Coker

1976.12.27

Xanadu

hand       ★★★☆

Dolo Coker(p),Blue Mitchell(tp,flh),Art Pepper(as,ts),Leroy Vinnegar(b),Frank Butler(ds)

ピアノのドロ・コーカーのリーダー盤にブルー・ミッチェルとの2管で参加

「インテンシティ」でピアノを弾いたドロ・コーカーのリーダー盤にブルー・ミッチェルとの2管で参加。ベース&ドラムは、ルロイ・ヴィネガーとフランク・バトラー。ペッパーはアルトとテナーで参加。ファーマーとの共演よりもハードバップな感じがする。(hand)



Bird and Ballads/Various Artists

1978.12.1etc

Galaxy

hand       ★★★★

Art Pepper(as),Stanley Cowell(p),Cecil McBee(b),Roy Haynes(ds)

 

Johnny Griffin(ts),Joe Henderson(ts),Harold Land(ts),Joe Farrell(ts),John Klemmer(ts)

「トゥデイ」録音時にテナー奏者5人を集めて作ったオムニバス盤。CD化で分売に。

アナログ時代は2枚組だったが、CD化で「ファイブ・バーズ・アンド・ア・モンク」と「バラッズ・バイ・フォー」の2枚分売となり、ペッパー曲は各盤1曲ずつとなった。ジョニー・グリフィン、ジョーヘン、ハロルド・ランド、ジョー・ファレル、ジョン・クレマーのテナーとペッパーのアルトという構成で、管奏者は色々変わるが、カウエル、マクビー、ヒギンズという、「トゥデイ」のリズム隊なので盤としての統一感はある。ペッパーは前者には②ヤードバード組曲が入っている。パーカーの音楽性や技術はすごいと認めていたようだが、音色は嫌いで、パーカーに似ないよう努力していたようだ。後者には①虹の彼方にが入っている。前期にも、ショーティ・ロジャースの「モダン・サウンズ」や「マーティ・ペイチ・カルテット」に名演があり、後期には10種以上の演奏があるが、後期ではこの演奏が代表格だと思う。フュージョンにカテゴライズされることの多いクレマーが意外といい。(hand)



Very R.A.R.E./Elvin Jones

1979.6.13,14 & 20

TRIO

hand       ★★★☆

Elvin Jones(ds),Art Pepper(as:1,3,4,6),Roland Hanna(p:1-4,6),Richard Davis(b)

日本企画のエルビン盤にゲスト参加

日本のTRIOが企画し、エルビン自らがプロデュースしている。ペッパーは6曲中4曲に参加のゲストだ。45回転LPだったので、時間は短く30分程度しかない。2年前の77年のバンガードではコルトレーン的なフリーキーなソロを吹いていたペッパーだが、今回はエルビンと組んでもコルトレーン的にはあまりなっていない。とはいえ、音色が太いので、エルビン=リチャード・デイビスの重量リズムに十分に適合している。エルビンの日本人妻、ケイコ・ジョーンズ作の③ザンゲは、完全なる和風曲だ。(hand)



ADLIB/石黒ケイ

1979.7.23

JVC

hand       ★☆

石黒ケイ(vo),Art Pepper(as:①⑥),鈴木宏昌(keyb),松木恒秀(gr),岡沢章(el-b),村上ポンタ秀一(ds)

日本の石黒ケイ盤に2曲ゲスト参加

この盤以外でこの人を知らない。ジャズというよりポップ演歌のような感じか。浅川マキあたりの路線を狙っているのかもしれないが、歌謡曲にしか聞こえない。ペッパーは単なるアルバイトなのだろう。フュージョン的な演奏が2曲①⑥で聞かれる。(hand)



Mistral/Freddie Hubbard

1980.9.15,17,18 & 19

Eastworld

hand      ★★★

しげどん ★

ショーン ★★★★★

Freddie Hubbard(tp,flh),Phil Ranelin(tb),Art Pepper(as),George Cables(p,el-p),Peter Wolf(synth),Roland Bautista(gr),Stanley Clarke(b,el-b),Peter Erskine(ds),Paulinho da Costa(perc)

フレディ・ハバードのフュージョン盤にゲスト参加

ペッパーのアルトサックスの優しい音色とハバードのフリューゲンホルンの澄み渡る音のハーモニーは、純粋に耳に心地良く、この盤がジャンルを超えて愛されるところであろう。まず1曲目のSunshine Ladyだが、イントロのギターで期待感を高まらせ、続いてのフリューゲンホルンとアルトサックスの共演は美しいメロディの応酬で、どうしてペッパーは、こういう初めてのメンバーにも溶け込んで、印象深いアドリブを吹けてしまうのかと、改めてペッパーの懐の深さを感じる曲に仕上がっている。またアナログ盤ではB面の2曲目にあたるI Love Youは、ハバードとしてもまさしく原点回帰のThe Jazzであり、ここでは、スタンリー・クラークのウッドベースに導かれるように歌い上げるペッパーのアルトの即興は聴きもの!(ショーン)

ペッパーは前期が対象なのだが、ショーン氏の強力なプッシュで後期からの、しかもフュージョンの1枚ながら、サイドおすすめ盤だった盤。東芝EMIのイーストワールドが録音したフレディ・ハバード盤にペッパーがゲスト参加。イーストワールドは2000年代には宇多田ヒカルの発売レーベルになっている。フレディとは過去にかかわりもないので、日本側のセッティングと思われる。夏にピッタリのさわやかな演奏とさわやかなジャケット。いつもは根暗なフレディが珍しく明るい音色で吹いているので驚く。そしてサイドに回ったペッパーが、一瞬、サンボーン?!と思わせる場面もなくはないが、やはりペッパー、フュージョン演奏でも、らしさは失わずに、しかもきちんとリーダー、フレディに協調している。唯一のスタンダード⑤アイ・ラブ・ユーも4ビートだがあまりジャズっぽい感じはしない。(hand)

フュージョンの響きは懐かしいなと思って聴いた。学生時代はこれが主流で、みんなジャズと言えばフュージョンだったけど、彼らは今は何を聞いているんだろう? ペッパーのソロだけを取り出して聴くとやはり後期のペッパーだ。(しげどん)



It Happened in Pescara/Various Artists

1981.12.7etc

Philology

hand      ★★★☆

 

Art Pepper(as),George Cables(p),Tony Dumas(b),Carl Burnett(ds)

オムニバス・ライブに入ったペッパーの熱い1曲

イタリアのペスカラでの様々なアーチストの69〜89年に渡るライブから1曲ずつを収録した2枚組22曲。ペッパーは81年のチェロキーが入っている。ケイブルス、デュマス、バーネットがリズム隊で、この高速曲を12分も演奏している。ケイブルスはバッパーではないのでちょいつらそうだ。(hand)