1980年に初の欧州公演を行ったペッパーは、翌81年にも連続して行っており、様々な発掘音源があり、どれも聞きごたえがあります。そんな中、名盤とされるストリングス入りの「ウインター・ムーン」をギャラクシーで録音したほか、日本のアトラスからもソニー・スティットとの「グルービン・ハイ」など引き続き共同リーダー盤も出しています。
アート・ペッパーのCD ディスク レビュー 目次
→アート・ペッパーのCDリーダー作① 初期作品1951年~54年へ
→アート・ペッパーのCDリーダー作② 復帰後1956年~57年へ
→アート・ペッパーのCDリーダー作③ 復帰後後期 1958年~60年
→アート・ペッパーのCDリーダー作④ 後期 本格復活直前まで ~1975年
→アート・ペッパーのCDリーダー作⑤ 本格復帰 1975年~1977年
→アート・ペッパーのCDリーダー作⑥ ギャラクシーへの移籍 1978年~1980年
→アート・ペッパーのCDリーダー作⑦ 1980年~1981年・・・このページ
Art Pepper(as),Milcho Leviev(p),Bob Magnusson(b),Carl Burnett(ds)
1980年5月ジョージア州アトランタの発掘ライヴ。TDKが日本で1995年に6曲を発売した。現在は「アンリリースド・アートVol.11 アトランタ」として2枚組でコンプリート化されている。音はまずまずだが、内容は熱く、③ストレートライフのスピードはものすごい。(hand)
Art Pepper(as),Milcho Leviev(p),Bob Magnusson(b),Carl Burnett(ds)
1980年5月ジョージア州アトランタの発掘ライヴ2枚組。TDKが日本で1995年に6曲を発売したもののコンプリート音源だ。ローリーがソニーのカセットデッキで録ったらしい。カセットデッキ、見くびれない音の良さだ。日本人プロデュースだったら、アトランタでのライブに、我が心のジョージアを演奏してもらう気がするが、ペッパーはいつもどおりのメニューだ。その方がカッコいい。ペッパーはくつろいでいて、楽しそうなMCが収録されている。ライブなのにフリーキーなトーンはほとんど聞かれない。2019年10月に亡くなったピアノのミルチョ・レヴィエフの追悼盤に位置づけられている。(hand)
Art Pepper(as),Milcho Leviev(p),Bob Magnusson(b),Carl Burnett(ds)
ペッパーの湿っぽい感じとヨーロッパの相性はどうなんだろうと思う。日本では大人気だが、ヨーロッパのライブは少ない気がする。これが初の欧州公演なのかもしれない、この日のペッパーはかなり気合が入っているように思う。リードミスも少し入るが①チェロキーを超高速で吹き切る。ギャラクシー移籍で封印していた、フリーキーなトーンもエンディングに少し入れたりもしている。②想い出の夏も③ステラもあまりペッパーらしい曲ではないが快調に吹いていて楽しく聞ける。ヨーロッパ出身のミルチョ・レビエフを使っているのもヨーロッパに受け入れやすいのかもしれない。(hand)
1980.6.27-29
Mole
hand ★★★★
Art Pepper(as),Milcho Leviev(p),Tony Dumas(b),Carl Burnett(ds)
ロンドン、ロニー・スコッツでのライブ。この盤は英モールからミルチョ・レビエフのリーダー盤として出ているが、権利関係からそうしただけでペッパーのリーダー盤だ。MCもペッパーが務め、選曲もこの時期のペッパーのライブと変わらない。近年出たコンプリート盤CD 4枚組「アンリリースドVol.6:ブルース・フォー・フィッシャーマン」はペッパー盤として出ている。ライブなので、ペッパーは少しアグレッシブな面も見せている。(hand)
Art Pepper(as),Milcho Leviev(p),Tony Dumas(b),Carl Burnett(ds)
1980年6月27、28日2日間のロンドン、ロニー・スコッツでのライブ。ミルチョ・レビエフ名義の「ブルース・フォー・フィッシャーマン」のコンプリート音源の4枚組。レビエフ名義は英モールから出ているが、今回はローリー・ペッパーのウィドーズ・テイストからペッパー名義で出ている。音はかなり良くて、モール盤よりいいと思う。ペッパーも好調だが、レビエフ名義にしてもおかしくないくらいピアノも元気だ。(hand)
Art Pepper,Sonny Stitt(as),Lou Levy(p),Chuck De Monico(b),Carl Burnett(ds)
アトラス第4、5作はソニー・スティットとの初録音。ペッパーが若き日にビバップに開眼したのは、パーカーではなくスティットを聞いてらしい。今回の2枚は、スティット&ヒズ・ウエスト・コースト・フレンズとなってはいるが、本当はペッパー・カルテットにスティットがゲストなのだろう。80年7月末に連続4日間録音して2枚の盤を作っている。前半2日と後半2日でリズム隊が違い、前半のこの盤はルー・レヴィ、チャック・デモニコ、カール・バーネットだ。2人ともアルトだが、音色とソロ内容の違いで聞き分けはしやすい。ペッパーはペッパーらしいバップで、スティットはより滑らかな純正バップという印象だ。アトラス盤の中では、スティットとの共演盤、特にこの盤がエネルギッシュで私好みだ。「アトラス・ブルース」とともに「アート・ペッパー・プレゼンツ・ウエスト・コースト・セッションズVol.1」として2枚組で再発されている。(hand)
Art Pepper,Sonny Stitt(as,ts),Russ Freeman(p),John Heard(b),Carl Burnett(ds)
アトラス第5作は、前作に続きスティットとの共演。リズム隊が前作と違い、ラス・フリーマン、ジョン・ハード、バーネットで、2人が曲によりテナーに持ち替えていること、選曲がパーカー曲ではないことなどにより、パーカー度数は下がっている。タイトルがもっとスッキリしたほうがよかったと思う。また、この盤の半分はペッパーの「コンプリート・アトラス・イヤーズ」に入っていない。(hand)
Art Pepper(as,cl),Stanley Cowell(p),Howard Roberts(gr),Cecil McBee(b),Carl Burnett(ds),
Bill Holman,Jimmy Bond(arr,conductor),Nate Rubin(vln,concert master),etc
80年9月3、4日録音のギャラクシーのスタジオ3作目はウィズ・ストリングス。ビル・ホルマンとジミー・ボンドの2組のアレンジャーがいる。翌5日はストリングス抜きで「ワン・セプテンバー・アフタヌーン」を吹き込んでいる。普通はウィズ・ストリングスといえばパーカー盤以外は甘々になりジャズファンが敬遠する内容の場合が多いが、この盤はペッパーがひたすらアドリブしまくるのと、カウエル、マクビー、バーネットにギターのハワード・ロバーツを加えたリズム隊がストリングスに流されていないので、私のようなジャズ原理主義的な人間にも受け入れやすい盤に仕上がっている。ジャケも含めて人気があるようだ。おまけを除いたラスト⑦プリズナーは、ハンコック曲ではなく、『ローラ・マーズの眼』というミステリー映画の曲のようだ。8ビートで、若干、演歌フュージョンのような曲なので、デビッド・サンボーンっぽい感じになっている。(hand)
Art Pepper(as,cl),Stanley Cowell(p),Howard Roberts(gr),Cecil McBee(b),Carl Burnett(ds)
ストリングス入りの「ウインター・ムーン」の翌日にストリングス抜きで同メンバーで吹き込んだ盤。タイトルは録音月から来ているが、前作と続けて聞くと、ストリングスという冬の暑苦しいコートを脱ぎ捨てた春のような気持ちになる盤だ。「ウインター・ムーン」も含めてこの一連のセッションでは、ギャラクシー移籍以来封印されてきたコルトレーン的なフレーズが少しだけ使われる。とはいえ、フレディ・ハバードのフュージョン盤「ミストラル」参加した10日前で、ペッパーもフュージョン的になっていた時期であり、コルトレーンというよりも、マイケル・ブレッカー的あるいはフュージョン的な奏法が味付けとして使われているように感じる。(hand)
Art Pepper(as),George Cables(p),Tony Dumas(b),Carl Burnett(ds)
1980年大阪サンケイホールでの来日ライヴの発掘音源。私が以前買った「アイル・リメンバー・ユー」というサウンドボード盤と内容は同じだ。77年に初来日して、日本での人気が自信を取り戻すきっかけとなったペッパーは5年連続で来日することとなり、これは4年目の記録。リズム隊は、ケイブルス、デュマス、バーネット。クワイエットファイアは珍しいケイブルスのピアノソロ。ペッパーはノッていてメイクアリストでは久々にコルトレーンライクなフリーキーなソロを吹いている。会場の大興奮が伝わってくる。ウィドーズ・テイスト盤はMCを1曲扱いしているので、カットして聞けるので便利だ。(hand)
Art Pepper(as),Milcho Leviev(p),George Mraz(b),Al Foster(ds)
スペインのジョルディ・ソレイと現代の発掘男レゾナンスのゼヴ・フェルドマンによって2013年に共同設立されたエレメンタルからの盤。ミルチョ・レビエフに、ジョージ・ムラーツ、アル・フォスターという強力なメンバーによる81年4月、ニューヨークのライブ。音はかなり磨かれてはいるが、海賊を脱する音にまでもう一息というところだ。4年前のバンガードに比べてこちらのほうが熱い演奏だと思う。フリーキーな音もペッパーの音として馴染んで出ている。ただ、8ビートも多いので、ロック的な激しさを感じる。(hand)
Art Pepper(as),Milcho Leviev(p),Bob Magnusson(b),Carl Burnett(ds)
正規発売されているが発掘海賊盤だ。81年5月ミラノとされていたが、 5月4日アドリア海側のアンコーナと判明し、 最新盤タイトルはミラノ(アンコーナ)となっている。内容はいい。特にレッドカーは、「ザ・トリップ」でエルビンらと演奏した曲だが、リズム隊のソロも含めてかなり激しい演奏になっている。ドラムのシンバル音などリズム隊の音はクリアだが、サックス音が割れているのは残念。この日の演奏と思われる演奏が、「リハーサル&モア」のモアとして3曲、「パリ・ライブ1980」に1曲入っているので、この盤に集約すべきと考える。ただ、5月4日はシェリー・マンの「ハリウッド・ジャム」の録音日と重なるので4日は間違いだと思う。(hand)
②③④:Art Pepper(as),Milcho Leviev(p),Bob Magnusson(b),Carl Burnett(ds)
現在は日本のM&lから同時期とされる「ロンドン・ライブ1980」と双子盤のように発売されているが、こちらは少々問題がある。まずは表示と異なりデューク・ジョーダンとの「イン・コペンハーゲン1981」とダブりが3曲①⑤⑥。パリではなくイタリア、アンコーナでの1曲③。②④の2曲のみがパリのライブ。いずれも81年の演奏でタイトルは間違っている。②③④がこの盤のみで貴重な、帯にあるとおりの「世界未発表ライブ音源」となる。②ユアーズイズマイハートアローンは19世紀のフランツ・レハールというオーストリア=ハンガリー帝国生まれの人の曲のようだ。コルトレーンがやっていたメアリーザウィドーもこの人の曲だ。③ザッツライトと④オフェリアはペッパーの曲。ザッツライトは「ウインター・ムーン」収録のザッツ・ラブと同じ曲で表示間違いだと思う。オフェリアは「リビング・レジェンド」の冒頭曲で後期に度々演奏している復活の象徴のような曲だ。(hand)
Bill Watrus(tb),Art Pepper(as),Bob Cooper(ts),Pete Jolly(p),Monty Budwig(b),Shelly Manne(ds)
アトラス第6作はドラムのシェリー・マンがリーダー。第1作のトロンボーンのワトラスにテナーのボブ・クーパーも加わった3管編成。第3作のピート・ジョリーのピアノと、ベースはモンティ・バドウィック。ジョリーは自名義のときよりもノッている感じがする。3管なのでペッパーの目立ち度はやや下がる。「アート・ペッパー・プレゼンツ・ウエスト・コースト・セッションズVol.6」として再発されている。(hand)
Art Pepper(as),Milcho Leviev(p),Bob Magnusson(b),Carl Burnett(ds)
1981年5月の大ロンドン南部のクロイドンでの発掘ライブ2枚組。オーネット・コールマンの同タイトルの「クロイドン・コンサート」(1965)でジャズファンに知られる場所だ。リズム隊はレビエフ、マグヌセン、バーネット。「ロンドン・ライヴ 1980」、「フィッシャーマン」に続く翌年のイギリス公演で、好調さは維持されている。2①チェロキーのような超高速曲を難なく演奏できるのは好調な証拠だと思う。音はまずまずいい。(hand)
Art Pepper(as),Milcho Leviev(p),Bob Magnusson(b),Carl Burnett(ds)
ローリー・ペッパーの発掘シリーズ第5集。81年5月25日、独シュトゥットガルトでのライブ2枚組。それにしてもひどいジャケで、公式発掘盤には見えない。ペッパーは好調そうで内容は悪くない。ヨーロッパ出身のレビエフのピアノは、意外にもケイブルスよりもアグレッシブだと思う。ボブ・マグヌセンのエレベに聞こえるアコベの録音だけは好きになれない。(hand)
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