「リビング・レジェンド」で復活をとげたペッパー。復活後の後期前半ともいえるのが78年までの主にコンテンポラリーに所属していたこの時期です。コルトレーンの影響を感じさせる演奏が特徴の時期で、正規盤として「リビング・レジェンド」のほか、「ザ・トリップ」、「ノー・リミット」、「アット・ザ・ヴィレッジ・バンガード」を残しています。
アート・ペッパーのCD ディスク レビュー 目次
→アート・ペッパーのCDリーダー作① 初期作品1951年~54年へ
→アート・ペッパーのCDリーダー作② 復帰後1956年~57年へ
→アート・ペッパーのCDリーダー作③ 復帰後後期 1958年~60年
→アート・ペッパーのCDリーダー作④ 後期 本格復活直前まで ~1975年
→アート・ペッパーのCDリーダー作⑤ 本格復帰 1975年~1977年 ・・・このページ
→アート・ペッパーのCDリーダー作⑥ ギャラクシーへの移籍 1978年~1980年
→アート・ペッパーのCDリーダー作⑦ 1980年~1981年
Art Pepper(as),Hampton Hawes(p,el-p),Charlie Haden(b),Shelly Manne(ds)
1975年8月9日録音のコンテンポラリーからの正規復活盤。正規盤としては60年の「インテンシティ」以来15年ぶり。ハンプトン・ホーズ、チャーリー・ヘイデン、シェリー・マンという豪華リズム隊だ。ヘイデン以外は、初期の共演仲間だ。この盤では、新たに加わったヘイデンの深い音色のベースが盤のカラーをかなり作っている。ペッパーのソロにコルトレーン的なフリーキーな要素が加わったとされるが、海賊盤「カルテット'64」で行くところまで行った感があり、程よい要素としてブレンドされたペッパー独自のスタイルになっていると思う。音色はややダークで太い感じに変わったと思う。③ホワット・ローリー・ライクスはホーズがエレピを弾く8ビート曲で、70年代感がある。④ミスター・ヨヘもエレピ併用だがこちらは4ビート。⑥サンバ・モン・モンが3曲目のエレピ。エレピでサンバをやるとホーズなのにデイブ・グルーシンに聞こえてしまう。エレピをうまく使ったジャズ盤もあるが、ペッパーには合わないと思う。ホーズは私のお気に入りのピアニストの1人だが、この盤ではエレピの多用がマイナスに感じてしまい復活を手放しで喜べない。(hand)
Art Pepper(as),Ed Kelly(p),Kenny Jenkins(b),Brad Bilhorn(ds)
1975年9月28日のハーフムーンベイでのライブ。2000年の発掘盤だがギャラクシーからで音がいい。エド・ケリー、ケニー・ジェンキン、ブラッド・ディホーンという知らないリズム隊との演奏。エド・ケリーは78年にファラオ・サンダースと録音している人のようだ。タッド・ダメロンの①グッドベイトから始まる。コルトレーンが初期盤「ソウル・トレーン」で演奏した曲だ。ペッパーの演奏も名演だ。「リビング・レジェンド」の録音直後で2曲はかぶっているが、メンバーの違いとエレピがないので、こちらのほうが盤としての個性は弱いが、聞きやすい。(hand)
Art Pepper(as),Sahib Shihab(bs),Joe Albany(p),Harry Babasin(b),Roy Porter(ds)
「リビング・レジェンド」の3か月後ののパーカー・トリビュート・ライブの海賊盤。音はかなり悪く、アルトの音色がバイオリンのように聞こえるときがある。サヒブ・シハブがバリで参加。ジョー・オバーニー、ハリー・ババシン、ロイ・ポーターとメンバーはビバップ向きだ。ペッパーは、コルトレーン的要素を加えるようになったが時期だが、パーカー・トリビュートのせいか、または曲のせいか、基本的に、パーカーの流れを汲むバッパー的な演奏をしている。ペッパーはパーカーに似ないよう努力していたらしく、ソロはパーカーに比べるとよりメロディアスだと思う。「1975 ガーデン・ステート・ジャム・セッション」という2枚組は、「ペッパー・ジャム」とこの盤を収録したもの。(hand)
Art Pepper(as),Smith Dobson(p),Jim Nichols(b),Brad Bilhorn(ds)
ペッパーがピアノのスミス・ドブソンと共演した1976年の発掘ライブ。カリフォルニアのザ・ワイナリーで行われたジャズ・フェスでの発掘音源 。既発翌年の「チュニジア」と同メンバーのライブだ。ペッパーは元気で張り切っている。会場のせいか録音のせいかピアノの音がチープな感じがする。フェイドアウトがあるのも残念。(hand)
Art Pepper(as),George Cables(p),David Williams(b),Elvin Jones(ds)
ペッパー初のエルビン・ジョーンズとの共演盤。長い付き合いとなるジョージ・ケイブルス、デビッド・ウィリアムスも参加。ケイブルスは、トミフラ、シダー・ウォルトンに続くサイドもリーダーもOKの逸材だと思う。①トリップはペッパー作だが、コルトレーンに最も影響を受けていた獄中での63年に作ったと思われる曲なので、曲調がモロにコルトレーンっぽい。ペッパーのソロにはコルトレーンを感じるが、表現の幅が広がったくらいに聞ける範囲だと思う。 海賊盤「カルテット'64」での同曲のほうがもっとコルトレーン的だったので、こなれて自分のものになったのだと思う。この後も何度も演奏する曲となる。ジョー・ゴードン作の②ソングフォーリチャードは隠れたる名曲の名演だ。③スイートラブオブマインはマクリーンの「デモンズ・ダンス」で知られるウディ・ショーの曲。マクリーンとの違いが楽しめる。⑤想い出の夏は、フィル・ウッズではひたすら美しいが、ペッパーは憂いや翳りが濃い。(hand)
Art Pepper(as),Smith Dobson(p),Jim Nichols(b),Brad Bilhorn(ds)
77年1月23日、カリフォルニアのバッハ・ダイナマイト&ダンシング・ソサエティでのライブ。奥さんローリーの持っていた海賊音源で音はいい。発売は83年日本のトリオからで、今はストーリービルに移っている。スミス・ドブソン、ジム・ニコルス、ブラッド・ビルホーンというリズム隊。悪いリズム隊ではないのだが、多少小粒な感じがする。ドブソンは後年「スミソニアン」(1986)というなかなかいい盤を出している。(hand)
Art Pepper(as),Clare Fischer(el-p),Rob Fisher(b),Peter Riso(ds),
Poncho Sanchez(perc),Cal Tjader(vib),Bob Redfield(gr)
ペッパーの初来日ライブは、ヴァイブのカル・ジェイダーのバンドのゲストとしてだった。第二部からペッパーが登場し、その拍手と人気にジェイダーもプロモーターも、そしてペッパー本人も驚いたらしい。MCに続く冒頭②チェロキーから従来のプレイにコルトレーン的要素も加えた絶好調のソロが聞かれる。前半はビバップ中心、後半はジェイダー得意のラテン中心の内容だ。ペッパーはもちろんラテンも得意だ。クレア・フィッシャーがエレピなのが唯一残念な点。当初は、ポリドールから「ファースト・ライブ・イン・ジャパン」というタイトルで出ていたが、ギャラクシーから「トーキョー・デビュー」にタイトル変更して世界発売された。(hand)
Art Pepper(as),George Cables(p),Tony Dumas(b),Carl Burnett(ds)
正規復活盤3作目。ケイブルス、トニー・デュマス、カール・バーネットのリズム隊。復帰して2年が経ち、新生ペッパーが自然になってきた。②バラード・オブ・サッド・ヤングメンが人気があるようだ。④マンボ・デ・ラ・ピンタはスタジオ録音としてはかなり長尺の12分半超で、ペッパーの好調の証拠だと思う。(hand)
Art Pepper(as),Bernie Senensky(p),Dave Piltch(b:1①-④,3②),Gene Perla(b:1⑤,2,3①),Terry Clarke(ds)
1977年6月16日、カナダのバーニー・セネンスキー(1944生)のトリオとのトロントでの未発ライブ。セネンスキーはエバンスも認めた実力派。既発の翌17日録音の「イン・トロント」(Interplay)があまり音が良くないのにこちらは音がいい。名盤「バンガード」の1か月前の演奏で、ペッパーは絶好調だと思う。「バンガード」が重量級のリズム隊で、ペッパーも大物感のある演奏なのに対し、カナダの若手リズム隊との組合せはこれはこれで素晴らしい。重量感はないが、スピード感や身軽な爽やかさのようなものがある。ベースが2人クレジットされているがデイブ・ピルチは当時17歳でファーストセットとスターアイズを担当し、ジーン・パーラはセカンドセットを担当している。ドラムのテリー・クラークはジム・ホール御用達の名人だ。CDは3枚と膨大だが、3枚目の30分超のロングインタビューを鑑賞時はカットするといい。(hand)
Art Pepper(as),Bernie Senensky(p), Dave Piltch(b),Terry Clarke(ds)
2005年「ミーツ・ザ・カナディアン・リズム・セクション」として発売された77年6月12日トロントでのライブ。レーベル、タイトル、ジャケを変更してデジパックにしてVol.1と2に分売、さらに統一してジャケ変更して再発。初心者にはタチが悪い。私自身も誤購入した。海賊録音で音は悪いが内容は悪くない。ペッパーのサックスの音色にはさらに深みが出て、この1か月後の「バンガード」に近い雰囲気になってきている。(hand)
Art Pepper(as),Willie Pickens(p),Steve Rodby(b),Wilbur Campbell(ds)
「バンガード」の2週間前の若手メンバーとのシカゴでの発掘音源。音はいい。メンバーの珍しいのもさることながら、選曲として前期的な②ペッパーポット、⑤イマジネーションが聞かれるのも珍しい。④マイファニーは唯一かもしれない。名盤「バンガード」の直前なので、好調なペッパーの素晴らしいプレイが聞かれる。(hand)
Art Pepper(as),George Cables(p),George Mraz(b),Elvin Jones(ds)
後期のペッパーの素晴らしさを感じさせてくれる名盤。77年7月28〜30日の木金土曜の3日間のライブ記録。当初LP3枚組で出され、CD化で別テイク入りで分売され、9枚組コンプリート盤、3日間の残りテイクからさらに1枚「モア・フォー・レス」も出された。それだけ内容が素晴らしいということだ。西海岸を根拠地とするペッパーが東の有名店にジョージ・ケイブルス、ジョージ・ムラーツ、エルビン・ジョーンズというベストメンバーで出演し、しかもベストパフォーマンスを行ったのだ。特にこの木曜日の冒頭①ヴァルストリステは何とも表現しがたい素晴らしさで、後期ペッパーの象徴のような名曲の名演だ。4人のコンビネーションも感動できる。コンプリート盤だとこの曲が冒頭にないので、この盤を聞いてしまう。やはり選曲、曲順の影響は大きいと思う。②グッドバイもいい。(hand)
Art Pepper(as,ts),George Cables(p),George Mraz(b),Elvin Jones(ds)
金曜日はバラード②バットビューティフルが格別に素晴らしい。前期も高音が得意だったペッパーだが、この時期、高音がとてもよく出ていて、高音が痩せた音色になっていない。③キャラバンは、テナーに持ち替え、フリーキーなトーンも混ぜてコルトレーン曲のように演奏している。(hand)
Art Pepper(as,ts),George Cables(p),George Mraz(b),Elvin Jones(ds)
3日目土曜日に入っても絶好調なペッパー。①ユーゴートゥーマイヘッドはゆったりしたバラードながらソロが高速で駆け巡る。高音域の強さは、楽器、マウスピースやリードが昔とは違うのかな?と思わせる強さと太さだ。ベースのジョージ・ムラーツとの録音は初めてと思うが、素晴らしい協調だ。③チェロキーはアルトで始まり後半2度目のソロからテナーに持ち替えてフリーキーなソロを吹いている。④フォーフレディもコルトレーン風の曲で、ケイブルスがマッコイ・タイナーっぽい。②トリップも含めると、木金土曜で土曜が一番コルトレーン的な盤になっている。(hand)
Art Pepper(as,ts,cl),George Cables(p),George Mraz(b),Elvin Jones(ds)
CD時代となった85年に、コンプリート9枚からさらに切り出された4枚目にあたる盤。この盤のみ3日間から収録されている。②ノーリミットはオリジナルのスタジオ録音より滑らかでこちらがいい感じがする。③ジーズフーリッシュシングスではテナーを、タイトル曲⑤モアフォーレスではクラに持ち替えている。⑥虹の彼方は得意曲だがソロ演奏は珍しい。ラスト追加曲⑦スクラップルフロムジアップルは途中のクラのソロが効果的だ。(hand)
Art Pepper(as,ts,cl),George Cables(p),George Mraz(b),Elvin Jones(ds)
9枚組CD。4枚の既発盤に収録されていない曲がまだ26曲もある。私自身聞いたことはあるが、あまりに膨大なので、流し聞きだ。ただ、各演奏は熱く、最高のメンバーに囲まれ、絶好調のペッパーがそこにいる。(hand)
Art Pepper(as),George Cables(p),Michael Formanek(b),Eddie Marshall(ds)
コンテンポラリーで正規録音されたが未発だったライブ。サンフランシスコのキーストンコーナーのライブはオーナー録音が多いがこの録音はコンテンポラリー側で録っている。バンガード直後の録音というのが未発原因と思われるが、この盤はまた別の魅力がある。ペッパーがやたら元気なのだ。特に①ブルーボサは翌年「再会」でスタジオ録音されて有名だが、この演奏は16分超の長尺をペッパーが吹きまくる。メンバーの豪華さはないが、ペッパーがワンマンにやりたい放題感があり、ノリノリの激しいライブ好きの私向きの内容だ。(hand)
アート・ペッパーのCD ディスク レビュー 目次
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