Art Pepper アート・ペッパー おすすめCDレビュー  後期(1964~1982)

アート・ペッパー リーダー作④1964~1975

このページは、ペッパーが収監、入院を繰り返していた半引退状態の時期から「リビング・レジェンド」で復活するまでの盤を紹介します。獄中でジョン・コルトレーンに感銘を受け、出所、退院時の録音でかなりコルトレーン・ライクなプレイを見せています。



過去の評論家さん達は、薬物による逮捕、収監、措置入院を経て、蘇った後期のペッパーを評価する人とそうでない人に分かれていた。今は前期はもちろんいいが、後期も好きだという人が増えた気がする。私hand自身もそんな感じだが、後期を編年的に近い形で全ては聞いていなかった。今回、かなりの枚数を改めて聞いて見えてきたのは、言われているほどコルトレーンの影響は大きくないのでは、ということだ。75年の復活から亡くなる82年までたった7年間しかないのだが、大雑把に前半約3年がコンテンポラリー、後半約4年がギャラクシーであり、コルトレーンの影響が濃かったのは後期前半だけで、ペッパー作曲のトリップなどはリズム隊も含めてコルトレーン的だが、それ以外の曲では基本的にバッパーのままで、時折、コルトレーン的なソロも入れるという程度だった。後期後半にはレーベルの意向もあったのかもしれないがコルトレーン色は薄れ、海賊ライブでエンディングの味付けに使う程度となっていたと思う。音色は、前期の明るく艶やか、しかも憂いもあったのに対し、後期は憂いは濃くなり翳りや深みが追加されやや太い感じになったと思う。わかりやすく言うと昼向きの音楽から夜向きの音楽に変わったということではないだろうか。前期が素晴らしいのは間違いないが前期を聞いただけで終わるのは本当にもったいないので、後期を食わず嫌いにするのではなく、とりあえずカジってみることをおススメしたい。後期は新ジ談としてはとりあえず評価対象としていないので、私hand個人の後期評価になるが、「ザ・トリップ」「サースデイ・ナイト・アット・ザ・バンガード」、「ソー・イン・ラブ」、「ウインター・ムーン」、「ロードゲーム」あたりを聞いてみて欲しいと思う。(hand)


QUARTET'64/Art Pepper

1964.5.8,

1964.6

Fresh Sound

hand      ★★★☆

Art Pepper(as),Frank Strazzeri(p),Hersh Hamel(b),Bill Goodwin(ds)

 

半引退状態の最もコルトレーンに傾倒した時期の海賊録音

ペッパーが最もコルトレーンに傾倒した時期を記録した発掘海賊盤。服役中に聞いたのか、数年で全く違うスタイルになった。ペッパーというよりもアルトのコルトレーンとしか聞こえないソロの吹き方で、音色もアルトなのにソプラノに聞こえる瞬間もある。そこまで心酔したようだ。特に自作の①トリップ、③Dセクションと④グルーピンは、その後きらびやかなスタイルになるフランク・ストラゼリもモーダルでマッコイ・タイナー風だ。ドラムもベースもコルトレーンのカルテットのように演奏している。その域には達していないが「コルトレーン・ライブ・アット・ザ・バンガード」の路線を目指していた感じがある。⑥ソニームーンはロリンズ曲をコルトレーン風に演奏しようとしているが、ロリンズの個性に引っ張られている。曲間のインタビューが長いのは少しかったるい。 (hand)



Unreleased Art Vol.4:The Art History Project/Art Pepper

Disc 1:1951- 1960

Disc 2:①-⑥:1964.5,

⑦:1968

Disc 3:①1978.3.14

②:1977

③⑥:1982.4,

④⑤:1980,

⑦:1981.5.19

Widow's Taste

hand      ★★★☆

Disc 2:Art Pepper(as),Frank Strazzeri(p),Hersh Hamel(b),Bill Goodwin(ds) etc

ローリー・ペッパーの発掘音源シリーズ。Disc 2と3は貴重音源を含む。

「アンリリースド・アート」シリーズは、ペッパーが亡くなった後、最後の妻、ローリーが私家録音した音源を中心にウィドーズ・テイストなどのレーベルから20215月現在Vol.11までが発売しているもの。一部はJVCから日本盤も出ている。

この盤は、初期から晩年までのペッパーのレア音源をまとめてた盤。Disc 1は「ピュア・アート(1951-1960)」となっているが、1950年5月18日のスタン・ケントン時代から始まる初期の既出音源で名演揃い。Disc 2 「ハード・アート(1960-1968)」は出入獄、入退院を繰り返し、コルトレーンに傾倒した時期。64年5月の「カルテット’64」ライブのリハ時の録音と思われる未発音源がほとんどで、ラストのバディ・リッチの音源が既発。Disc 3「コンサメイト・アート(1972-1982)」は、77年1月のハーフムーンベイ、78年3月の山形と80年2月のジャック・シェルドンが既発。未発は、81年5月19日パリのザッツラブ、82年4月ファットチューズデーの2曲ランドスケープとマンボコヤマが貴重。既発が多いが、全体的に音がいいので、楽しめる。(hand)



Live at Donte’s/Art Pepper

1968.11.24

Fresh Sound

hand      ★★★☆

Art Pepper(as),Joe Romano(ts),Frank Strazzeri(p),Chuck Berghofer(b),Nick Ceroli(ds)

テナーのジョー・ロマーノとの2管で復活に向けた兆候の見えるライブ演奏

64年にはペッパーらしさがかなり消えてコルトレーン風になっていたが、68年になりコルトレーンが風味くらいに弱まり後期の自らのスタイルとしてほぼ確立している。テナーのジョー・ロマーノ(ジョー・ロヴァーノとは別人)を迎えた2管。ウォーン・マーシュやテッド・ブラウンとのトリスターノ的あるいはウエスト・コースト的な2管ではなく、ハードバップ的な演奏だ。2③プルースロックは、ペッパーとしては珍しいジャズ・ロック演奏だが、フレッシュサウンドからのオメガ盤「アート・オブ・ペッパー」のおまけに入っていた曲だ。(hand)



Unreleased Art Vol.9/Art Pepper & Warne Marsh At Donte's

1974.4.26

Widow's Taste

hand      ★★★☆

Art Pepper(as,ss),Warne Marsh(ts),Mark Levine(p),John Heard(b),Lew Malin(ds),Bill Mays(p:Disc3④only)

ウォーン・マーシュとのドンテでの発掘ライブ3枚組

「リビング・レジェンド」で復帰する1年前のウォーン・マーシュとのドンテでの発掘ライブ3枚組。マーシュとは56年の「ペッパー・ウィズ・マーシュ」(旧「ザ・ウェイ・イット・ワズ」)以来の録音。56年のマーシュはバリバリのクール派だったが、多少解凍され、温かみが出て、コンビの温度感は近づき、バップ演奏もあり、ハモりもキレイだ。ペッパーは時折コルトレーン的なソロも入るが、全体としては協調され、楽しめるライブになっている。音もそれほど悪くない。(hand)



I’ll Remember April/Art Pepper

1975.2.14

Trio

hand      ★☆

Art Pepper(as),Tommy Gumina(syn),Fred Atwood(b),Jimmie Smith(ds)

復活直前の海賊ライブ

フットヒル・カレッジでのライブ。ペッパーが復活した75年の最初の音源(2月14日)だが、無用なエコーが全体にかかってしまったような音色が少し残念な発掘盤。ピアノがポリコードというシンセでかなりエレクトリックな音色なのもつらい。ペッパーは好調そうだ。(hand)



Pepper Jam/Art Pepper

1975.3

Jazzbank

hand      ★★★

Art Pepper(as),Butch Lacy(el-p),Jeff Littleton(b),Jim Plank(ds),

①③:Blue Mitchell(tp),Buddy Collette(ts),Harold Land(ts)

ブルー・ミッチェル、ハロルド・ランド、ジミー・ジュフリーらとの海賊ジャムセッション

ペッパー、ブルー・ミッチェル、ハロルド・ランド、ジミー・ジュフリーをフロントにしたジャムセッションのライブ録音。海賊盤で音は悪い。エレピだがジャジーではある。まさか、ペッパーの①マイルストーンズがあるとは、という感じで聞くと、ライブなのでソロもコルトレーン的な要素が強い。ランドとジュフリーはもっとコルトレーン的にモロになっている。②虹の彼方は過去からの愛奏曲をワンホーンで。エレピとテンポ設定からポップな仕上がりではあるが、なかなかいい。(hand)