Anita O’Day アニタ・オディ リーダー作⑤最後期

生涯歌い続けたアニタの最後期にあたる時期です。ヴァーブ後の後期は衰えたと日本では言われ続けてきましたが、本当に声質に衰えが見られたのは最後の数年だったと思います。(しげどん)

日本では「アニタはヴァーブだけ聞いていればいい。それ以後は声が衰えてダメ」と言われてきたが、本当に声が衰えたのは最後の数年であることが分かった。70年代前半のヤク中毒からの回復期の多少の衰えが過大に捉えられたのだと思う。この時期も、前半はほぼ衰えを見せず、快調なアニタを聞くことができる。(hand)

・新宿ジャズ談義の会 :アニタ オディ  CDレビュー 目次

・Anita O'Day  おすすめBest5

・Anita O'Day CDリーダー作① バンドシンガー時代(1941-1959)

・Anita O'Day CDリーダー作 黄金のヴァーブ期(1955-1962)

・Anita O'Day CDリーダー作 麻薬禍からの復活期(1963-1972)

・Anita O'Day CDリーダー作 第二の黄金期(1975-1979)

・Anita O'Day CDリーダー作 晩年を迎えるアニタ(1981-2005)・・・このページ


MISTY / Anita O'Day

1981.12

Lobster

エンジェルアイズ+ミスティ

 

アローン・トゥゲザー

 

おすすめ度

hand      ★★★★

しげどん  ★★★☆

ショーン  ★★★★

Anita O'Day(vo), Don Abney(p)

現在は1枚で全編を聞くことができないアニタ唯一のピアノデュオ盤

ドン・アブニーのピアノとのデュオ盤。全10曲。来日時は、日本側のアドバイスがあるのか、オーディエンスが喜ぶような選曲をしているようだ。このタイトル曲①ミスティもその中の1曲だ。アニタの声にも合い、アニタ自身も気に入り、その後、持ち歌化していくような曲であれば好ましい。ミスティは好ましい例の一つだ。ピアノとのデュオなので、バラードが多く、改めてアニタの歌のうまさが再確認できる。82年にロブスター企画からアニメジャケでLP発売され、翌年エミリーから「The Night Has A Thousand Eyes」としてアニタの顔ジャケで出ている。現行のCDは変則で、「エンジェル・アイズ」の全8曲にこの「ミスティ」の前半5曲を組み合わせ、「エンジェル・アイズ+ミスティ」(ウルトラ・ヴァイブ)として、先のアニメジャケで出ているのだ。CDによる長時間収録が誤用されたとしか言えない。ダイレクト・カッティングで音が良く、内容が悪くない「ミスティ」が半分カットされて、LPと同ジャケで売られているという信じられない事態だ。後半は、何とクリス・コナーの「アローン・トゥゲザー」(アブソード・ミュージック)にオマケとして収録されている。各自で1枚にして楽しむ他ない。(hand)

ピアノを伴奏にしたデュオ作品で、アニタとして珍しい作品だ。ピアノだけの伴奏でもジャズ的なやりとりは感じられるし、なによりもボーカリストとしてのアニタを最大限感じられる作品。(しげどん)

Don Abneyのピアノだけというシルプルなスタイルだが、アニタは丁寧に歌い込んで、美しいメロディを紡ぎ、とても綺麗な曲たちに仕上がっている。欲を言えばアルバム全体としては、単調な印象か?(ショーン)



AO VIVO NO 150 NIGHT CLUB(LP) / Anita O'Day

1984.8.21 & 22

Estúdio Eldorado

おすすめ度

hand      ★★★☆

Anita O'Day(vo), Roger Neumann(ss,ts,fl), Harold Danko(p), Rick Laird(b), John Poole(ds)

ブラジル、サンパウロのクラブでのライブ録音

未CD化。ブラジル、サンパウロのクラブでのライブ録音盤。ブラジルではボサ・ブームは60年代に終わっているが、世界の音楽として、特にジャズ系のミュージシャンは取り上げ続けている。アニタもそんな1人で、後期はウェイブを中心に度々ボサを歌っている。ただ、この盤は、アメリカからのメンバーによるブラジルでの録音というだけで、残念ながらボサ集ではない。Ao Vivoとはポルトガル語でライブの意味で、多分、店の名がNo 150のようだ。近年も初期のバンドシンガー時代の音源は発掘されCD化されるが、後期のこのような好盤をCD化をしてほしい。Anita O’Day live in Brazil unusual set listというYouTubeが多分、同内容だと思う。(hand)



BIG BAND AT CARNEGIE HALL / Anita O'Day

1985.5.25

Emily Productions

おすすめ度

hand      ★★★☆

Anita O'Day, Roy Eldridge(vo), Richie Cole(as), Hank Jones(p), Jay Leonhart(b), John Poole(ds), 

Joe Wilder, John Frosk, Randy Brecker, Virgil Jones(tp),

Alan Raph, Birch Johnson, Jim Pugh, Urbie Green(tb),

Alex Foster, Frank West, Jerry Dodgion, Larry Charles, Lawrence Feldman(sax)

ビッグバンドとのカーネギーホール・ライブ。リッチー・コールらもゲスト参加

ビッグバンドをバックにカーネギーホールで歌うという、バンドシンガー出身のアニタの血が騒ぐ企画だと思う。ビッグバンドのメンバーは錚々たる面々で、フランク・ウエスらが参加している。ピアノはハンク・ジョーンズだ。全曲ではないが、当時人気のリッチー・コールもソロイストとしてゲスト参加している。私の好みではないがジーン・クルーパ時代のヒット曲⑧レット・ミー・オフ・アップタウンにはボーカルで当時と同じロイ・エルドリッジも参加している。ただ、この時、アニタは65歳、声質がより低くなり始め、第ニの黄金期も終わろうかとする時期なのが少し残念なところ。もう少しだけ早くこの企画があれば、もっと素晴らしい盤になったと思う。85年のアナログは「スス・ワンダフル・ビッグバンド・コンサート1985」で2009年CD化で「ビッグバンド・アット・カーネギーホール1985」にタイトルが変わり、ジャケも変わっている。いずれもエミリー盤。(hand)



WAVE : LIVE AT THE RONNIE SCOTT'S / Anita O'Day

1986.3.7

Essential

おすすめ度

hand      ★★★★

しげどん  ★★★☆

ショーン  ★★★☆

Anita O'Day(vo), Tommy Whittle(sax,fl), Merrill Hoover(p), Lennie Bush(b), John Poole(ds)

DVDにもなっているロンドン、ロニー・スコッツでのライブ

ピアノトリオ+テナーのロンドンでのライブ。ピアノとドラムはアメリカから同行し、テナーとベースはイギリスのメンバー。DVD「ライブ・アット・ロニー・スコッツ」も同内容だ。初出CDとDVDのタイトルにウェイブはついていない。タイトル曲①のウェイブは、いつもイントロに使うウェイブがやや長めになっている程度。(13)もエンディング用だ。66歳になっても、アニタの歌は健在で、後期の衰えを書くコメントは多いが、私自身は、それほど衰えたようには感じない。この盤もあまり年齢を感じさせない、なかなか勢いのあるライブだと思う。この盤より後年の盤を聞き比べて思ったのは、ここまでがアニタの第二の黄金期だったのではないか、ということだ。この後、少しずつ声の老化が気になってくる。(hand)

ロンドンの有名なロニー・スッコツでのライブ録音。ピアノトリオだけでなく、テナーとフルートのトミー・ウィツトルが参加。私は知らなかったがリーダー作も多いベテランらしい。オーソドックスなスタイルで、リラックスした雰囲気を出している。サイドメンバーは厚みがあるがジャズ的なスリルというよりもリラックスしたこの時期のアニタにはふさわしいくつろぎのライブ作品だ。(しげどん)

ゆったりとした雰囲気のライブだ。あまり録音状態が良くなく、マイクや演奏の音を時に大きく拾い過ぎて、少し聞きづらい。バックの演奏はそれなりだが、my funny valetineのフルートは情感もあって素晴らしい。またfor brothersのハーモニーとサックスはgood、いい盛り上がりだ。(ショーン)



IN A MELLOW TONE / Anita O'Day

1989.3.13-15

DRG

おすすめ度

hand      ★★★

Anita O'Day(vo), Gordon Briske(sax,fl,syn), Corky Hale(harp), Pete Jolly(p), Brian Bromberg(b), Frank Capp(ds), Dave Black(perc)

70歳間近のアニタ盤はやや甘口の雰囲気

70歳間近の録音。DRGという聞いたことのないレーベルからの盤。調べてみるとカタログには他レーベルの再発も含め700枚近い作品があり、所有している盤も数枚あった。アニタの次作「アット・ヴァイン」はDRGの傍系のディスクスイング盤であった。ピアノにピート・ジョリーが入っている。テナーとフルートのゴードン・ブリスカーという聞いたことない人がアレンジとシンセも担当していて、このシンセとコーキー・ヘイルという人のハープが盤の甘口の雰囲気を作り上げてしまっている。アニタ自身はスインギーにしたい感じもあるが、シンセとハープの入った曲がかなりあり、フルートも含めてジャズ度を下げる結果となっている。70歳まであと半年となったアニタの声は、多少、エネルギーが落ちて、いがらっぽくなった感じがするが、よく持っていると思う。60年代後半にヘロインからは脱したそうだが、大量の酒と煙草は、ずっと続いていたようなのだ。それでも一定の水準が維持できているのは、やはり、歌手としての何かを持って生まれた人なのだろう。(hand)



AT VINE ST. LIVE / Anita O'Day

1991.8.2 & 3

Disques Swing→DRG

おすすめ度

hand      ★★★

Anita O'Day(vo), Gordon Briske(ts,fl), Steve Homan(gr), Pete Jolly(p), Bob Maize(b), Dan D'Imperio(ds) 

72歳になるアニタ。声のツヤが失われ始めたが、得意曲で水準を維持

DRG傍系レーベル、ディスクスイングからのライブ盤(CDはDRG)。あと1か月で72歳になるアニタ。声のツヤはさすがに失われてきているが、得意曲を中心に、それなりの水準はキープしている。さすがに高速曲のフォア・ブラザーズは歌っていないが、ギターやピアノのクオリティの高いソロを入れることで、客も楽しめてはいるようだ。(hand)



RULES OF THE ROAD / Anita O'Day

1993.3.29 & 30

Pablo

おすすめ度

hand      ★★★

Anita O'Day(vo),

The Jack Sheldon Orchestra, Buddy Bregman(arr,cond),

Jack Sheldon, Ron King, Ron Stout, Stan Martin, Wayne Bergeron(tp), Alex Iles, Andy Martin, Bob Enevoldsen, Bob McChesney, Bob Sanders, Stan Martin(tb), Brian Williams, Jerry Pinter, Pete Christlieb(sax,cl), Danny House, Sal Lozano(sax,fl cl), Christian Jacob(p), Trey Henry(b), Ray Brinker(ds)

往年のヴァ―ヴ的企画のパブロ盤だが、73歳のアニタの声は変質してしまった。

73歳となり、後期で唯一のメジャーレーベル、パブロからの盤。パブロは、往年のアニタが活躍したレーベル、ヴァーブの後継とも言えるレーベルだ。ノーマン・グランツという意味では、新生ヴァーブよりもパブロのほうが関係が濃いとも言える。演奏はジャック・シェルドンのオーケストラで、50年代に何枚も名盤を一緒に作ったバディ・ブレグマンがプロデュースし、アレンジと指揮も担当している。とはいえ、70代になり、さすがのアニタも声質が変化してしまっている。パブロが動くのが10年早ければ晩年の名盤が生まれた可能性はあったと思う。(hand)



SWING TIME IN HAWAII / Anita O'Day & Herb Ohta

1996

M&H Hawaii

夜景

(ジャケは2種類)

フラダンス

おすすめ度

hand      ★★★

①③⑤⑦⑨:Anita O'Day(vo), Tom Artwick(ts), Bob Albanese(p), Bruce Hamada(b), Jess Gopen(ds)

ラスマイはハワイのオータサンとのウクレレ・ジャズ

晩年近く(77 歳?)に、ハワイアンのハーブ・オータ(1934生、オータサンが愛称らしい。)との現地録音。この時期、アニタはハワイ諸島をコンサート・ツアーで、ウクレレのオータサン・バンドと一緒に回っていたようだ。そして共演盤が作られたが、実は共演曲はなく、それぞれの曲が交互に収録されているが、リズム隊が共通なので違和感はない。ハワイアンなフラ姿のアニタとウクレレを持つオータサンのジャケ盤とハワイの夜景をバックに2人が乾杯の盤があるが、どちらが先かは不明だ。収録曲にハワイアンはなく、全曲ジャズだ。気候の良いハワイに気を良くしたのか、アニタは気持ち良さそうに歌っているが、やや声は枯れている。オータサンのウクレレ・ジャズもなかなかいい。(hand)



INDESTRUCTIBLE! / Anita O'Day

2004.2-2005

Kayo Stereophonic

おすすめ度

hand      ★★☆

Anita O'Day(vo),

①②④⑥⑧-⑪:Joe Wilder(tp,flh), Tommy Marimoto(sax), Lafayette Harris Jr.(p), Chip Jackson(b), Eddie Locke(ds)

③⑤⑦:Steve Fishwick(tp), Roswell Rudd(tb), John Coliani(p), Sean Smith(b), Matt Fishwick(b), 

生涯ボーカリストだったアニタが87歳で亡くなる1年前まで録音したラスト盤

2006年11月に87歳で亡くなったアニタのラスト盤で、84歳から死の1年前までの2年間のスタジオ録音で、86歳の誕生日(2005.10.18)直後にマスタリングが完了したようだ。最後の最後まで歌い続けた、超高齢化社会の草分けのような人だ。ただ、一聴、誰か分からない高齢女性の声になってしまっている。バンドもスイングと言うよりもニューオルリンズに近い雰囲気で、アニタ以上にいがらっぽいジョー・ワイルダー(83歳)のトランペットがいて、勘弁してほしい感じだ。ビリーの「レディ・イン・サテン」のようにストリングス入りで物悲しいメロの曲でも歌えば悲壮感が漂ったと思うが、ニューオルリンズ的な明るい雰囲気なのだ。悲惨な生涯ではあったが、それを明るく生き抜いたのがアニタであり、アニタらしいことはらしいのかもしれない。(hand)



アニタの後期のCDは、入手困難なものが多く、Amazon、TowerやHMV、そして日本が世界に誇るDiskUnionやレアな盤を多く扱う米Discogs でもあまり売っていなかった。最後にたどり着いたのがエミリー(Emily Production)の直販サイト(https://emilyprod.com)だった。後期の盤を調べているとよく出てくるレーベルなので、アニタの自主レーベルではないかと想像していた。サイトには、アワ・ストーリーのページがあり、1970年にアニタ(1919生)とドラマーでロード・マネージャーのジョン・プール(1925生)の奥さんのドロシー・プールの3人が” アニタ・オデイ”レーベルを立ち上げ、84年にはエミリー・プロダクションに改変し、99年にジョンが亡くなり、2006年にアニタも亡くなり、今はドロシーが1人で経営しているとのこと。エミリーとは、アニタの飼っていたヨークシャーテリア犬の名前らしい。この説明で、アニタ・レーベルとエミリー・レーベルの関係はわかったが、もう一つ、時々出てくるカヨ(Kayo Stereophonic)については未だに不明だが、日本録音が多く、日本のカヨさんという人が立ち上げた、ロブスター企画等と関係があるレーベルかもしれない。

この新ジ談で、アニタのディスコグラフィーが後期も含めて、ある程度、整理できたと考える(初期のビッグバンド時代は編集物が多く完全に音源が重複する数枚はあえてカットした。)。このホームページをきっかけに、後期も含めたアニタが、もう少し聞かれるようになり、アニタという貴重なボーカリストの全生涯の記録が永遠に失われることがないように祈りたい。(hand)


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