Anita O’Day アニタ・オディ リーダー作①バンドシンガー時代

この時期のアニタは、ジーン・クルーパ楽団などのビッグバンドのバンドシンガーとしてデビューした時期にあたります。特にこの時期のアニタに関しては、リーダー録音でないものもアニタ名義で発売されているものも多いので、バンドシンガーとして参加した盤も含めて全作をリーダー作として整理していきます。(しげどん)

・新宿ジャズ談義の会 :アニタ オディ  CDレビュー 目次

・Anita O'Day  おすすめBest5

・Anita O'Day CDリーダー作① バンドシンガー時代(1941-1959)・・・このページ

・Anita O'Day CDリーダー作 黄金のヴァーブ期(1955-1962)

・Anita O'Day CDリーダー作 麻薬禍からの復活期(1963-1972)

・Anita O'Day CDリーダー作 第二の黄金期(1975-1979)

・Anita O'Day CDリーダー作 晩年を迎えるアニタ(1981-2005)

バンドシンガー時代のアニタは、語られてはいるがこれといった定盤もなく、音質的にもヴァーブ時代よりも劣ることから、何を聞いていいかわからない状態ではないかと思う。残された音源を可能な範囲で入手して聞いたところ、アニタ自身はデビュー時点からほぼ確立した歌い手であったということが確認できた。スタン・ケントンの3大ボーカルとして語られることが多いが、ケントンは短期間で、ジーン・クルーパとの録音が大半であることが分かった。ケントンと並んで語られるウディ・ハーマンは1曲しか入手できず、ゲスト的に参加したのみではないかと思う。(hand)


ANITA O'DAY SINGS WITH GENE KRUPA

1941.4.11, 6.5, 8.18, 11.25 & 12.29

1942.2.26, 4.2 & 7.13

1945.8.21 & 10.23 or 24

Columbia

おすすめ度

hand      ★★★☆

米コロンビア編集盤

Anita O'Day(vo) , Gene Krupa(ds,ldr) etc

ジーン・クルーパ時代のアニタの録音だけを集めた日本編集盤

ジーン・クルーパ楽団の歌姫・バンドシンガーとして名を成し、活躍していた時期のアニタ入りの録音だけを集めた日本編集盤。アニタは、クルーパ、スタン・ケントン、再度ジーン・クルーパとビッグバンドを渡り歩いていて、この盤は12曲が前期クルーパ、ラスト4曲が後期クルーパとなっている。古いものだが公式録音なので音はまずまず。後年、自らのライブでも演奏するようになる曲、ロイ・エルドリッジのボーカルとの掛け合いで知られる③レット・ミー・オフ・アップタウンなどが入っている。若さのせいか、録音のせいか、黄金期とも言えるヴァーブの録音にある声のツヤのようなものはまだあまり感じない。11曲がかぶる米コロンビア編集盤の「レット・ミー・オフ・アップタウン」も入手しやすい。(hand)



GENE KRUPA(LP)

1940.3.8

1941.1.17, 3.19, 5.8 &  6.5

1942.2.26, 4.2 & 7.13

1945.1.22 & 8.21

1947.1.22

Columbia

おすすめ度

hand      ★★★☆

しげどん ★★★★

Gene Krupa(ds,ldr), Anita O'Day(vo:A2,4,B1-4) etc

ジーン・クルーパ時代のアニタを聞くLPの定盤

未CD化。LPでクルーパ時代のアニタを聞く定番の盤がこの盤だったようだ。デビュー時代からアニタが実力派であったことがわかる一枚。1940〜45年の録音のメジャー、コロンビアのコンピ盤でアニタは全12曲中6曲に登場する。やはり同バンドの花形であったことがわかる。「ザ・ジーン・クルーパ・ストーリー」(プロパー)のCD4枚組に全曲収録され、アニタ曲だけであれば、次の「ヤング・アニタ」(プロパー)でも聞くことができる。上記「シングズ・ウィズ」とも3曲がかぶる。(hand)

昔から所有していたLP時代の思い出盤だ。Let Me Off Uptownを聴いたことがないファンはぜひほかのCD音源でも聴いてみて、なるほど!カッコイイ!と納得してほしい。ロイ・エルドリッジも聴く機会はあまりないと思うが、そもそもクルーパさんのスターぶりは素晴らしいので、このような作品をもとに、グッドマンやシカゴジャズのエディ・コンドンといったジャズの歴史的な演奏にも興味をもってくれたらうれしい。(しげどん)



YOUNG ANITA / Anita O'Day

1941-1950

Proper

おすすめ度

hand      ★★★☆

Anita O'Day(vo), Gene Krupa Orchestra etc

初期アニタの総集編的な4枚組

ヴァーブより前の初期アニタを可能な限りコレクションするには、「ウィズ・ジーン・クルーパ」、「ミーツ・ザ・ビッグ・バンズ」、「コンプリート・シグナチュア&ロンドン」の3盤計4枚よりも、この「ヤング・アニタ」(PROPER)という4枚組ボックスのほうが多少優れているかもしれない。ただ、このセットも上記3盤の全てをカバーしている訳ではなく、ベイシーとの共演も1曲(マラゲーニャ)しか収録されていない。とはいえ、ここには、ナット・コールのセッション5曲が含まれていることが大きい。コールのピアノ、ギター、ベースからなるトリオをバックに、小編成での多分、初録音だ。コールはピアノのみで、まだ歌っていないので、若きアニタの可憐な歌声が聞かれる。ただ、選曲としてはコールの歌に向いている曲が多いように思う。この4枚は、クルーパ、ケントンで約半分を占め、他盤に収録されていない両楽団曲が多数あり、スイング期のアニタを楽しむことはできる。この時期には、ウディ・ハーマン楽団にも短期間、在籍したとされているがここには入っていない。(hand)



ANITA O'DAY MEETS THE BIG BANDS

1941-1948

Moon

おすすめ度

hand      ★★★☆

Anita O'Day(vo),

①-⑨:Gene Krupa And His Orchestra

⑩-⑭:Stan Kenton And His Orchestra

⑮⑯:Tadd Dameron And His Orchestra

⑰⑱:Count Basie And His Orchestra

⑲-㉒:Tadd Dameron Trio

ビッグバンドをバックにバンドシンガーの本領発揮

「ウィズ・ジーン・クルーパ」、「シグナチュア&ロンドン」と同様に、スイングのビッグバンドをバックにアニタがバンドシンガーの本領を発揮する。カウント・ベイシー(⑰ブート・ホイップ、⑱ザッツ・ザット)など有名バンドが演奏しているためか、この盤のほうがグルーヴを感じる演奏が多いように感じた。ラスト3曲⑳〜㉒のピアノがタッド・ダメロンで、ベースがカーリー・ラッセル、ドラムがケニー・クラークという1948年のビバップのトリオなのが珍しい。(hand)



COMPLETE SIGNATURE & LONDON RECORDINGS / Anita O'Day

1942-1950

The Jazz Factory

おすすめ度

hand      ★★★☆

Anita O'Day(vo),

Gene Krupa Orchestra, Stan Kenton Orchestra etc

バンドシンガー時代のアニタを網羅した盤

1942〜1950年のバンドシンガー時代のアニタがかなり網羅されている録音で、全44曲CD2枚組、2時間超の長さだ。Disc1の①〜⑦の7曲がスタン・ケントンでアニタがスターシンガーだったことがわかる。①に入っているベン・ウェブスターのようなテナーソロがスタン・ゲッツかと思ったが、もう1人のデイブ・マシューズのようだ。⑧〜⑪のアニタ・ウィズ・ロウェル・マーチンの4曲はアニタの初リーダーかもしれない。音も内容もいい。⑫〜㉑の10曲は「シンギン&スインギン/若き日のアニタ」(Coral)、「ハイ・ホー・トライラス・ブート・ホイップ」とも同内容で、これがシグナチュア・レーベルへの録音と思われる。リーダーは、アルビィ・ウエスト、ウィル・ブラッドレイなど知らない人ばかりで、最後の4曲(ハウ・ハイ・ザ・ムーンなど)がアニタの2度目?のリーダー録音のようだ。Disc2の①〜⑮の15曲がロンドン・レーベルの録音のようで聞いたことのない4人のリーダー(アビー・ブラウン、ポール・ジョーダン、ジャック・プレイス、ベン・ホーマー)との録音だ。Disc2のおまけとして入っている⑯〜㉓の8曲は一番古い42年の前期ジーン・クルーパ録音で「シングズ・ウィズ・ジーン・クルーパ」と3曲がタブっている。女声ボーカル入りスイング・ジャズの好きな人には、なかなかいい内容かもしれないと思う。録音にはもちろん時代を感じる。(hand)



HEARD WITH FRIENDS / Woody Herman

1943 Summer

Jazz Band

おすすめ度

hand      ★★★

⑬Anita O'Day(vo),

Woody Herman Orchestra

ウディ・ハーマン時代のアニタのレア音源1曲

1998年に英ジャズ・バンド・レコーズから出たコンピ盤。やっと発見したウディ・ハーマン時代のアニタの音源。ケントンやハーマンで活躍したアニタと紹介はされるが、ハーマン音源はなかなか見つからなかった。この盤でも全17曲のうち⑬レット・ミー・オフ・アップタウン1曲のみの貴重さだ。記録では43年夏のバンドワゴン・ショーとなっており、大型車の上での演奏?なのかテレビ番組?あろうか。曲自体はクルーパ時代のヒット曲なので、ゲスト的な扱いなのかもしれない。コンピなのでミルドレッド・ベイリーなどの歌物もあり盤としては楽しめるが、残念ながら盤全体に海賊的な音質で、アニタは特に音が悪い。それだけレアな音源なのだと想像する。

※その後、「アニタ・オデイVol.3 1941-1943」(マスターズ・オブ・ジャズ)を入手。上記1曲のほかにもう1曲スレンダー、テンダー・アンド・トールが入っている。こちらも限りなく音は悪いが、聞いたことのないアニタの音源に耳が喜ぶ。多分、上記と同日の録音だと思う。調べたところ、サッチモ、ナット・キング・コールも歌っている曲だった。(hand)



COUNT BASIE FEATURING ANITA O'DAY 1945/1948 未所有

⑥⑦⑩⑪⑬⑭⑮:1948.9.25

Jazz Archives

おすすめ度

Anita O'Day(vo⑥⑦⑩⑪⑬⑭⑮),

Count Basie Orchestra etc

名門ベイシー楽団がアニタをフィーチャー

元はアナログ海賊盤Altoの「カウント・ベイシー/アニタ・オデイ」。全15曲でベイシーが13曲、タッド・ダメロンが2曲。ベイシーの13曲中アニタをフィーチャーしたのは48年9月25日、ロイヤル・ルーストでの10曲中の5曲。この5曲⑥ハウ・ハイ・ザ・ムーン、⑦マラゲーニャ、⑩ブート・ホイップ、⑪ザッツ・ザット、⑬マラゲーニャ(別テイク)、がまとまって聞かれるのはこの盤のみ。ダメロン3にアニタをフィーチャーした同日の⑭⑮は「ミーツ・ビッグ・バンド」にはさらに2曲多い4曲が入っている。(hand)



THE LADY IS A TRAMP / Anita O'Day

①-④:1952.1.22

⑤⑥⑪⑫:1952.7

⑦-⑩:1952.12

Clef→Norgran→Verve

おすすめ度

hand      ★★★

Anita O'Day(vo),

①-④:Roy Eldridge(tp), Bill Harris(tb), Bud Johnson(ts), Cecil Payne(bs), Ralph Burns(p,arr), Al McKibbon(b), Don Lamond(ds)

⑤⑥⑪⑫:Roy Kral(p), Earl Backus(g), Johnny Frigo(b), Red Lionberg(ds)

⑦-⑩:with Larry Russell's Orchestra and Strings

黄金時代を迎えるヴァーブの初盤

ヴァーブの前身レーベルであるクレフ、ノーグラン時代に10インチの「コレイツ」等として出ていた52年の2回の録音8曲を3回12曲の完全版にした12インチ盤をCD化したもの。ノーマン・グランツと組むことで1950年代(30歳代)に黄金時代を迎えるアニタの最初の盤となる。クルーパやケントンのバンドシンガーから独立したアニタだが、スタイルは引き続きバンドシンガー的だ。したがって、この盤はまだスイング時代の雰囲気を残す結果となっている。録音もまだ古い感じが残っている(元々はシングル盤らしく、多分、マスターがなくアナログ起こし)。「コレイツ」の名称のまま12曲化したCDもあり紛らわしい。「シングズ・ジャズ」としても出ている。(hand)



AN EVENING WITH ANITA O'DAY

①-④:1954.4.15

⑤⑥⑪⑫:1954.6.28

⑦-⑩:1955.8.11

Norgran→Verve

おすすめ度

hand      ★★★☆

しげどん ★★★★

Anita O'Day(vo),

①-④:Arnold Ross(p), Barney Kessel(g), Monty Budwig(b), Jackie Mills(ds)

⑤⑥⑪⑫:Bud Lavin(p), Monty Budwig(b), John Pool(ds)

⑦-⑩:Jimmy Rowles(p), Tal Farlow(g), Leroy Vinnegar(b), Larry Bunker(ds)

黄金時代ヴァ―ヴ第2作は、絶頂期の直前の盤

クレフ、ノーグラン時代の12インチ2作目。ライブのようなタイトルだがそうではなく、前作同様3回のスタジオ録音 (54.55年)を集めたものだが、こちらは54年録音だけが10インチで出て、55年の録音を加えて12インチとなったようだ。前盤から2年の経過により、録音が良くなっただけでなく、アニタの声にもツヤのようなものが出始めている。最盛期の直前の盤と言える。(hand)

アルバム一枚単位で聴くならば、まとまった作品としては最初の名盤。彼女の全盛期の第一章だ。ピアノトリオまたはギターを加えたカルテット(ハーブ・エリス、タル・ファーロウ)と小編成で、彼女のボーカルの魅力が堪能できる。3セットの寄せ集めで当初は最初の2セットの10インチ盤がオリジナル。奔放なアドリブは萌芽期だが、彼女オリジナルのブルース曲などもあり、とても楽しめる一枚だ。(しげどん)



LET ME OFF UPTOWN / Anita O'Day 未所有(一部所有)

1955-1959

Mr. Music

おすすめ度

Anita O'Day(vo),

黄金期アニタの非正規録音集

55年から59年という黄金のヴァーブ期と重なる音源。この盤の全20曲のうち11曲が2012年にカヨ・レーベルから出された未発表ライブ音源集「マイ・ファニー・バレンタイン・ライブ1955-59」(KAYO)として出ていることが同盤を購入してから分かった。11曲程度のほうが盤として楽しむには適してはいるが、そういう問題ではない。なので、こういう切り売りはやめてほしい。アニタは、当然のように絶好調で、バンドとのチェイスもある楽しめる盤だ。仕方ないとは思うが、音質は正規録音に比べると少し悪い。(hand)



DRUMMER MAN / Gene Krupa featuring Anita O'Day・Roy Eldridge

1956.2

Verve

おすすめ度

hand      ★★★☆

Gene Krupa Orchestra, 

Anita O'Day(vo:①③⑤⑦⑨⑪)

クルーパ、アニタ、ロイの再会セッション

ジーン・クルーパは、ベニー・グッドマンのコンボとビッグバンドで注目され、独立して自らのビッグバンドを持ち、そこでのスターがアニタとトランペットのロイ・エルドリッジ。クルーパのドラムは、日本でもジョージ川口や白木秀雄がモデルとしたくらい素晴らしいものだが、ビッグバンドの日本での評価はあまり高くないように感じる。白人系では、グッドマンとグレン・ミラー、少し新しいところでは、スタン・ケントンとウディ・ハーマンが高く評価されているように思う。アニタは、実際には、クルーパ楽団での活躍により頭角を現しているが、ケントンやハーマンに在籍したことがプロフに記載されることが多い。特にケントンは、ジューン・クリスティ、クリス・コナーとともに3大シンガーとして紹介されている。だが、実際には在籍期間は短かったようで、ハーマンに至っては私が発見したのは2録音のみだった(1録音のみ入手)。このうちの1曲はレット・ミー・オフで、クルーパのヒット曲だ。この録音は、50年代のクルーパ、アニタ、ロイの再会セッション。音も良く、アニタも絶頂期にあたり、いい仕事をしている。(hand)



BIG BANDS LIVE / Benny Goodman Orchestra featuring Anita O'Day

1959.10.15

SWR

おすすめ度

hand      ★★★☆

Benny Goodman Orchestra, 

Anita O'Day(vo:④-⑦⑩)

グッドマンの欧州ツアーに参加したアニタ

1959年のベニー・グッドマン楽団の欧州ツアーに参加したアニタの独フライブルクでのライブ記録。アニタが名を成したのはジーン・クルーパ楽団だが、クルーパ自身はグッドマン楽団で名を成しており、親楽団とも言えるバンドで、音楽に親和性はある。クルーパ楽団のヒット曲⑥レット・ミー・オフ・アップタウンをロイ・エルドリッジに代わりアニタと歌っているのはジャック・シェルドンと思われる。全15曲中5曲(3メドレーを1曲とカウント。)の参加で、タイトルから想像するほどは、フィーチャーされないのが残念なところ。(hand)



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